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量子スタートアップ資金調達額ランキング-2026年6月

デロイト トーマツでは、量子コンピューティングの実用化を見据え、スタートアップの資金調達状況を定点観測しており、量子技術分野の専門家がグローバルな視点でその動向を解説します。

スタートアップランキングの最新動向

量子コンピューティングスタートアップ資金調達額ランキングTop50

投資熱は拡大、覇権は未決

この1年で、量子コンピュータ領域の資金調達は大きく伸びました。注目すべきは、その裾野がハードウェアからソフトウェアへと広がっている点です。投資家は、計算機そのものの開発競争だけでなく、その上で価値を生むレイヤーにも注目しています。

Exit事案が次々に

この1年で投資熱が一段と高まった背景には、量子スタートアップが「リターンを見込める段階」へと入りつつあることが挙げられます。IPOやM&Aといった出口戦略が現実味を帯び始め、投資家は将来性だけでなく、10年以内のリターンを視野に入れて資金を投じ始めていると考えられます。

IPOを狙う企業が増えるだけでなく、巨額資本を手にした上位の量子スタートアップが、下位プレイヤーをM&Aで取り込む動きも広がっています。こうしたExit事案が増えるほど、投資家にとっての魅力は一段と高まります。つまり、量子業界は技術競争に加え、再編を伴う資本競争の局面に入りつつあると言えます。

量子スタートアップ投資は2024年から2025年の1年で北米中心に大きく拡大。スタートアップのExitによるリターンを見据えられるフェースに入ったことが要因と思われる

(出典:内閣府 第2回 日本成長戦略会議:量子ワーキンググループ「投資動向からみた我が国への示唆」, P2, https://www8.cao.go.jp/cstp/ryoshigijutsu/ryoshi_wg/2kai/siryo1.pdf)

グローバルの投資動向

資本も企業も米国へ集まる

投資額全体は2026年は2025年に比べて減少しているが、地域別にみると1位の北米に2,409百万USドルと偏って集まっている

地域別(スタートアップの所在地)に見ると、量子スタートアップへの投資は依然として北米、なかでも米国に圧倒的に集中しています。近年は、資本や顧客へのアクセスを求めて米国へ拠点を移す動きも強まっています。米国政府も巨額の支援を続けており、D-Wave(カナダ発)やDiraq(オーストラリア発)のような米国外発でも支援対象に含めている点は特徴的です

米国政府による支援を呼び水として、民間投資も加速しています。例えばIBMは、量子コンピューティング分野に今後5年間で100億ドル超を投資する計画を公表しており、併せて米国初となる量子チップ専用製造工場を担う新会社「アンデロン」の設立も予定しています

ハードウェア投資の様相は1年で様変わり

ハードウェア方式別資金調達額(国別)では米国が多くの割合を占めている

1年前のデータでは、「光」方式が資金調達額で首位でしたが、現在は「イオントラップ」方式が僅差で上回っています。また、各ハードウェア方式に適した誤り訂正符号の採用など、単なる方式の違いだけでなく各社の技術的な個性も見え始めています。

もっとも、覇者が一気に決まる局面はまだ先です。当面は、開発段階や用途に応じて主流となるハードウェアが段階的に入れ替わっていくと考えられます。

日本政府は量子を重点分野に位置付け

17の戦略分野の1つに「量子」

高市内閣の成長戦略では、官民連携による危機管理投資・成長投資を促進する17の戦略分野の1つに「量子」が位置付けられました。政府は、量子コンピューティングなどを対象とする官民投資ロードマップの策定を進めており、官民一体での投資拡大を後押しする姿勢を示しています。

また、自由民主党の量子産業創出プロジェクトチームでも、官民投資の加速に向けた議論が進められています。そこでは、「2030年までに官民で2兆円以上、2040年までに12兆円以上」という投資目標が掲げられ、日本発の技術で世界をけん引するための提言が取りまとめられています

海外市場との接続を強める日本の量子スタートアップ

日本はこれまで、量子分野における資金調達額やスタートアップ数で、欧米勢に後れを取ってきました。今後の焦点は、国内で技術を磨くだけではなく、海外資本を呼び込み、海外市場とつながりながらスタートアップを成長させるエコシステムを築けるかにあります。

その意味で、日本の量子スタートアップにも注目すべき動きが出てきました。株式会社Yaqumoは、世界最大級の量子技術特化型ベンチャーキャピタル「Quantonation Ventures」からの資金調達を実現し、海外投資家との接点を確保しています。さらに、日本政府が国際連携を強化するシンガポールやインドの現地プレイヤーとの連携も進めており、資本と市場の両面でグローバル展開を志向しています。

株式会社Jijもまた、欧州での動きを活発化させており、日EU間で初となる共同量子技術プロジェクト「Q-Neko(The Nippon-Europe Quantum Koraborēshon)」に参画しています。量子技術は最初から世界市場を前提に戦うべき領域であり、こうした姿勢は今後ますます重要になります。日本勢がここから存在感を高めていけるか——その勝負は、むしろこれから始まります。

補足)
文中、量子力学の原理を利用したハードウェアを指す場合は「量子コンピュータ」、ソフトウェアや理論など、量子コンピュータを使った計算手法や技術全般を含む場合は「量子コンピューティング」、更に量子暗号通信や量子センシングなども含む場合は総称して「量子技術」と記載しています。

執筆者

寺部 雅能/Terabe Masayoshi
デロイト トーマツ グループ 量子技術統括
自動車系メーカー、総合商社の量子プロジェクトリーダーを経て現職。量子分野において数々の世界初実証や日本で最多件数となる海外スタートアップ投資支援を行い、広いグローバル人脈を保有。国際会議の基調講演やTV等メディア発信も行い量子業界の振興にも貢献。著書「量子コンピュータが変える未来」。ほか、経済産業省・NEDO 量子・古典ハイブリッド技術のサイバ-・フィジカル開発事業の技術推進委員長など複数の委員、文科省・JSTの量子人材育成プログラムQ-Quest講師、海外量子スタートアップ顧問も務める。過去に、カナダ大使館 来日量子ミッション・スペシャルアドバイザー、ベンチャーキャピタル顧問、東北大学客員准教授も務める。

志波 大輝/Shiwa Daiki
合同会社デロイト トーマツ
コンサルティング / マネジャー
中央省庁にて、行政分野におけるデータ利活用の促進や規制改革などの担当を経て現職。量子コンピュータをはじめとする先端技術やイノベーション創出に関する調査・政策立案プロジェクトを多数経験。近年は、量子産業の発展に向けた幅広い支援に注力している。
 

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