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量子スタートアップ資金調達額ランキング-2026年1月

デロイト トーマツでは、量子コンピューティングの実用化を見据え、スタートアップの資金調達状況を定点観測しており、量子技術分野の専門家がグローバルな視点でその動向を解説します。

スタートアップランキングの最新動向

2026年1月5日時点の量子コンピューティング スタートアップ調達額ランキング Top50。Deloitte TechHarborで調査している。

 

最上位の調達額が大幅に増加

前回ランキング(2025年7月)と比べて、上位10社の顔ぶれに大きな変化はないものの、その調達額は一気に跳ね上がりました。2025年後半には、PsiQuantumの10億ドル調達や、IQM Quantum Computersの3億2千万ドル調達など、これまで例を見ない規模の資金がこの領域に流れ込みました。

日本勢も躍進

ランキングに掲載されているのは2020年以前に設立されたスタートアップが大半です。これは、スタートアップの成長には一定の時間が必要であり、設立から数年を経てようやく注目を集めるケースが多いことを示しています。

日本においてもこの流れに新しい風が吹き込まれ始めています。例えば、OptQC株式会社は2024年に設立されたばかりですが、すでに総額15億円の資金調達を完了しています。また、株式会社Yaqumoも2025年設立と非常に新しい企業でありながら、7億円もの資金調達を実施しました。両社ともに、NEDO(国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)の大型補助金事業に採択されるなど、政府からの支援も受けている点が注目されます。

グローバルの投資動向

米国一強の時代へ突入か

国別でみたグローバル地域別投資額は、2025年時点で北米が欧州を大きく引き離し、110億USドルを超える勢いである

地域別(スタートアップの所在地)で見ると、2024年以前は北米・欧州が大きな存在感を示していました。しかし、2025年には北米、特に米国への投資が他地域を圧倒し、群を抜いています。欧州の約8倍もの投資が北米に集中し、その差は決定的となりました。

ハードウェア投資は「イオントラップ方式」が一歩リード

ハードウェア投資額はイオントラップ方式(約49億4600万ドル)、光方式(約44億4600万ドル)、超電導方式(約30億5100万ドル)の順で大きく、国別でみると米国がほとんどを占めている。

現在、ハードウェア開発への投資が集中し、超伝導、イオントラップ、中性原子、シリコン、光など、多様な方式が入り乱れる“群雄割拠”の様相を呈しています。どの方式が覇権を握るかまだ明確ではないものの、資金調達額の視点で見ると、「イオントラップ方式」が頭一つ抜け出しているのが現状です。

その原動力となっているのが、IonQやQuantinuumといった米国勢です。彼らが市場をリードし、巨額の資金を集める背景には、イオントラップ方式ならではの量子ビットの均一性や圧倒的な安定性といった技術的な強みが、投資家から高く評価されていることが挙げられます。

量子イノベーション・エコシステム構築へ、いま日本が動き出す

産総研「G-QuAT」拡充で量子技術拠点の施設整備へ

2026年――日本の量子産業は、いよいよ本格的な“成長加速フェーズ”へと突入します。令和7年度補正予算では、産総研の量子技術拠点「G-QuAT」の拡充が盛り込まれ、量子スタートアップや関連企業の成長を支えるための施設整備が計画されています。 

量子コンピュータの産業化に向けた開発の加速及び環境整備に、令和7年度補正予算で1004億円が計上されている。

出典:経済産業省「経済産業省関係令和7年度補正予算の事業概要(PR資料)」, P24,
https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2025/hosei/pdf/r7_pr.pdf

この政策の背景には、グローバルな量子産業の競争激化に対する強い危機感と挑戦意識があります。経済産業省の検討会議では、デロイト トーマツの協業先である世界最大級の量子技術特化型ベンチャーキャピタル「Quantonation Ventures」が、カナダで展開するインキュベーションプログラムが紹介されました。グローバルではすでに、資金・研究環境・ビジネス支援を一気通貫で提供する体制を築き、量子スタートアップを加速度的に成長させています。

量子特化ベンチャーキャピタルによるエコシステムの例として、フランスのQuantontation社によるカナダでの産官学連携の取り組みが紹介されている。

出典:経済産業省「第12回 半導体・デジタル産業戦略検討会議」, P188,
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/semicon_digital/0012/handeji12-3rrrr.pdf

日本でも、産官学それぞれの強みを活かした独自のプログラム構築が急務です。従来の枠組みを超え、資金だけでなく技術インフラの提供、そしてビジネス開発の壁打ちまで一括して支援する――そんな“量子イノベーション・エコシステム”の確立こそが、次世代ユニコーン誕生の鍵となります。

補足)
文中、量子力学の原理を利用したハードウェアを指す場合は「量子コンピュータ」、ソフトウェアや理論など、量子コンピュータを使った計算手法や技術全般を含む場合は「量子コンピューティング」、更に量子暗号通信や量子センシングなども含む場合は総称して「量子技術」と記載しています。
 

執筆者

寺部 雅能/Terabe Masayoshi
デロイト トーマツ グループ 量子技術統括
自動車系メーカー、総合商社の量子プロジェクトリーダーを経て現職。量子分野において数々の世界初実証や日本で最多件数となる海外スタートアップ投資支援を行い、広いグローバル人脈を保有。国際会議の基調講演やTV等メディア発信も行い量子業界の振興にも貢献。著書「量子コンピュータが変える未来」。ほか、経済産業省・NEDO 量子・古典ハイブリッド技術のサイバ-・フィジカル開発事業の技術推進委員長など複数の委員、文科省・JSTの量子人材育成プログラムQ-Quest講師、海外量子スタートアップ顧問も務める。過去に、カナダ大使館 来日量子ミッション・スペシャルアドバイザー、ベンチャーキャピタル顧問、東北大学客員准教授も務める。

志波 大輝/Shiwa Daiki
合同会社デロイト トーマツ
コンサルティング / CGO office / シニアコンサルタント
中央省庁にて、行政分野におけるデータ利活用の促進や規制改革などの担当を経て現職。量子コンピュータをはじめとする先端技術やイノベーション創出に関する調査・政策立案プロジェクトを多数経験。近年は、量子産業の発展に向けた幅広い支援に注力している。

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