メインコンテンツに移動する

量子スタートアップ資金調達額ランキング-2025年7月

デロイト トーマツでは、量子コンピューティングの実用化を見据え、スタートアップの資金調達状況を定点観測しており、量子技術分野の専門家がグローバルな視点でその動向を解説します。

スタートアップランキングの最新動向

 

ハードウェア系が上位にランクイン

グローバルでは、ハードウェア開発を手掛けるスタートアップが多額の資金を集めており、ユニコーンやIPO企業も続々と誕生しています。

ソフトウェア系も存在感を強める

近年は、ソフトウェア開発スタートアップの台頭も顕著です。先進的なアルゴリズム開発やクラウドサービス提供など、“ハードとソフトの融合”が進み、総合的な技術力を持つ企業に投資家の注目が集まっています。

 

グローバルの投資動向

中東が新たな成長エンジンに

地域別(スタートアップの所在地)で見ると、投資額は依然として北米・欧州が圧倒的ですが、中東も急速に存在感を高めており、欧州を追い抜く勢いを見せています。例えばカタールでは、米国との経済協定を背景に、Quantinuum社とカタールのAI企業が合弁会社を設立しました。こうした新興市場の活躍は、量子コンピューティングの研究や商用化を加速させ、今後の業界全体の発展を牽引する可能性を秘めています。

「光方式」がハードウェア投資を牽引

先述のとおり、現在はハードウェア開発への投資が集中し、超伝導、イオントラップ、中性原子、シリコン、光など、さまざまな開発方式が存在しますが、どれが主流となるかはまだ明確ではありません。しかし、資金調達額の切り口で見ると、以下のことが分かります。

  • いずれのハードウェア方式においても、北米が圧倒的な存在感を示しています。
  • 主要方式の中では、「光方式(フォトニック)」が最も資金調達額が大きく、高いスケーラビリティなどの特性が投資家に高く評価されていると考えられます。

 

日本発「量子ユニコーン」創出を目指し、デロイト トーマツはQuantonationと協業を開始

量子コンピューティング市場の活況

グローバルでは、大手IT企業に加え、高い技術力と専門性を持つスタートアップも多数参入し、量子コンピューティング分野が急成長しています。また、製造や金融、自動車、製薬など幅広い産業で量子技術活用への期待が高まっています。

日本の強みとエコシステム

日本には、先進的な量子技術を有する学術機関や、それを基盤としたスタートアップも多数存在しています。ハードウェアやソフトウェアに加え、部品や冷却装置など周辺技術の開発・商業化も活発です。

Quantonationとの取り組み

デロイト トーマツは、世界最大級の量子技術特化型VC「Quantonation Ventures」との協業も開始しました日本発の「量子ユニコーン」創出を目指して、量子スタートアップエコシステムの発展を支援していきます。これらの取り組みを通じて、日本における量子産業の未来を切り拓いていきます。

 

補足)
文中、量子力学の原理を利用したハードウェアを指す場合は「量子コンピュータ」、ソフトウェアや理論など、量子コンピュータを使った計算手法や技術全般を含む場合は「量子コンピューティング」、更に量子暗号通信や量子センシングなども含む場合は総称して「量子技術」と記載しています。

執筆者

寺部 雅能/Terabe Masayoshi
デロイト トーマツ グループ 量子技術統括
日本の量子プロジェクトを統括。
自動車系メーカー、総合商社の量子プロジェクトリーダーを経て現職。量子分野において数々の世界初実証や日本で最多件数となる海外スタートアップ投資支援を行い、広いグローバル人脈を保有。国際会議の基調講演やTV等メディア発信も行い量子業界の振興にも貢献。著書「量子コンピュータが変える未来」。ほか、経済産業省・NEDO 量子・古典ハイブリッド技術のサイバ-・フィジカル開発事業の技術推進委員長など複数の委員、文科省・JSTの量子人材育成プログラムQ-Quest講師、海外量子スタートアップ顧問も務める。過去に、カナダ大使館 来日量子ミッション・スペシャルアドバイザー、ベンチャーキャピタル顧問、東北大学客員准教授も務める。