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数年後のキャリアを左右する ―成長できる企業の条件とは

~デロイト トーマツ グループ News Pickup~

4月の入社式シーズンを過ぎ、各企業では連日受け入れ研修を進めているところも多いのではないでしょうか。人的資本経営が注目される中、「どれだけ人に投資しているか」は企業のスタンスを端的に表す指標となってきています。特に教育投資は、その企業が人材をコストと捉えているのか、それとも価値創出の源泉と捉えているのかを映し出す指標とも言えます。本稿では、日本と欧米の比較を踏まえながら、それらがキャリア形成にどのような影響を与えるのか考察します。

OJT中心の日本型雇用の特徴と教育費

まず、日本企業全体の水準としては、産労総合研究所の調査によると、日本企業の従業員1人あたり教育研修費は年間3〜4万円台となっています。この水準は長期的にも大きな変動がなく、国際的に見ても低い水準に位置し、その背景には、日本型雇用の特徴があるとされています。新卒一括採用と長期雇用を前提に、OJTを中心とした育成が機能してきたため、必ずしも多額の教育費を投じなくても人材は育つ、という前提がありました。

ただしこの構造は、現場依存の手法に偏りやすく、属人化や品質のばらつきといった課題が生じやすいという側面があります。実際、日本企業のOJTに関する意識調査では、新人育成を担う人員の不足や、限られた時間の中でいかに効率的に指導を行うかといった、指導現場における構造的な制約に加え、「指導内容にばらつきがある」などの組織的課題も指摘されています。その結果として、企業横断で体系的に設計された学習投資が十分に行われにくく、教育が戦略的投資として位置づけられにくい傾向があると考えられています。

しかし、このOJT中心の育成が持つ現場適応力や暗黙知の継承といった強みは、依然として欠かせません。そのため、どの教育手法が最良かという優劣ではなく、「どの要素を補完し、どう組み合わせるか」という視点が重要と考えられます。

教育は「資本」であるという発想 ―欧米企業の現状

一方、米国企業では年間1,000〜2,000ドル規模の投資が行われており、その差は数倍にのぼります。
前述の通り、日本ではOJTを中心とした育成文化が根強く、上司や先輩が日常業務の中で指導するスタイルが一般的であるのに対し、米国では流動性の高い労働市場を背景に、個人の持つスキルを直接評価する「スキルベース採用」への移行が加速しています。この変化に伴い、企業は従業員に対し「必要な能力をいかに短期間で獲得させるか」という点に重点を置き、外部研修や学習プログラムへの直接投資を明確に予算化し、人材育成を「コスト」ではなく「投資」として捉える傾向があります。

このように教育を資本として捉える考え方のもとでは、個別の研修施策にとどまらず、企業全体として一貫した学習体系を設計することが不可欠になります。つまり、「どの役割にどのスキルが必要か」を起点に、継続的に人材を育成するための仕組みづくりが求められるのです。

具体的には、オンライン講座などの外部プラットフォームも積極的に活用し、学位支援、プロジェクトアサインを含む実務機会の提供など、複数の手段を組み合わせた形で人材育成が設計されています。

人的資本経営の実践例 ―進化する人材育成

こうした中、グローバル化の進展やAI・デジタル技術の急速な発達を背景に、日本企業でも「人的資本経営」を体現する取り組みが広がっています。例えば、経営戦略と連動した人材ポートフォリオの構築、育成時間やエンゲージメント・スコアなど人的投資に関するKPIの可視化、さらにはキャリア自律を促す社内副業・兼務制度の推進などが挙げられます。また、全社的なリスキリングの機会を提供するなど、従来の慣行にとらわれない育成方針も活発になっています。

デロイト トーマツ グループでも、一人ひとりの経験やキャリアに応じて体系化された育成プログラムを提供し、単なる知識やスキルの習得にとどまらず、社会の健全な発展に貢献するという高い志を育むことを重視しています。具体的には、リーダーシップ研修をはじめとするグローバル研修を通じて、最先端の知見を学ぶ機会を提供するとともに、個人の専門性や意志を尊重した自律的な学びやキャリア選択を奨励。一方で、手厚い階層別プログラムや定期的なコーチ面談、現場の先輩が後輩を育てるOJT文化も根付いており、日本的な組織文化に根差したサポート体制と、実践的なスキルを着実に身につけられる環境が築かれています。この取り組みは、欧米式の合理性と日本式の丁寧な育成文化を融合させた「ハイブリッド型研修」ともいえます。

こうした複数の学習手段を組み合わせた「未来を見据えた教育投資」を前提とし、デロイト トーマツ グループのImpact report 2025では、人材育成関連投資額は年間163億円を投じたと発表しています。

さらに、未来への投資として「デロイト ユニバーシティ アジアパシフィック ノースイーストアジア」の建設計画が進められており、2029年の開校を目指して段階的な投資が始まっています。これは、AIの普及などによってプロフェッショナルの在り方が変化する中、クライアントに対してより大きな価値を提供できる人材を育成するためのものです。特に、リーダーシップやチームワークといったソフトスキルの強化を重視し、将来的には日本国内にとどまらず、グループ内外の様々な企業や学生が参加できるビジネスイベントの開催など、多様な人材が交流する場としての活用も視野に入れています。これを、単なる研修施設ではなく、グローバル連携を深めながら共に学び、世界規模で活躍する人材を育成するための「価値創出の基盤」として位置づけているのです。

どの環境で、どう成長するか

では、このような教育環境の違いは個人のキャリア形成にとってどのような意味を持つのでしょうか。

まず、「どの企業に入り、何をするか」だけではなく、「どの環境で、どれだけの学習投資を受けられるか」が将来的なキャリアの質を左右する可能性があるという点が挙げられます。同じ年数を働いたとしても、教育投資が年間3万円の環境と30万円の環境では、得られるスキルや経験に大きな差が生まれる可能性が出てくるのではないでしょうか。この差は数年単位で、転職市場における評価や選択肢の幅として表れていきます。
さらに重要なのは、その環境が今だけでなく、将来にわたって進化し続けるかどうかです。学習環境への継続的な投資は、個人の成長機会の上限となり、企業がどのような思想で教育に投資しているのかを見ることは、キャリアを選ぶうえでの一つの具体的な判断材料になるのかもしれません。

人的資本への投資が加速する今、自らの成長をどこに委ねるのか。その意思決定は、これまで以上に重要になってくるのではないでしょうか。

Career Platform

デロイト トーマツ グループのキャリアプラットフォーム 「Talent Cross」では、多様なバックグラウンドを持つ仲間との交流や最新情報、学びを通じて、ご自身の経験やスキルの活かし方を発見する機会を提供しています。