3月某日、国際女性デーに連動し、Toget-HER(以降「Toget-HER」)主催「女性リーダーズ・サミット」が開催されました。サテライト含め約200名の女性支援団体や企業、メディア関係者が集結。2030年までに日本の女性意思決定層を30%以上に引き上げる政府の目標に対し、本会場のDeloitte Tohmatsu Innovation Parkに集まった70人以上の代表メンバーによる熱い意志表明が繰り広げられました。
主催である一般社団法人Toget-HERは、女性同士が支え合い、経験や知識を共有しながら、自信を持ってキャリアを築ける環境を提供するコミュニティとして設立されました。このコミュニティでは、様々な垣根を越えてつながる女性リーダー同士のネットワークや連帯(シスターフッド)を育む活動に力を入れています。
同じ志をもって集まった会場は開始と同時に一体となり、来るべき2030年に向けた「次の一手」へと向かっていく熱気に満ちていました。
冒頭の基調メッセージには赤澤亮正経済産業大臣がかけつけ、女性参画の必要性をデータと共に裏づけました。
「昨年、ガラスの天井を打ち破って、女性の総理大臣が誕生しました。これは間違いなく象徴的な出来事であり、あらゆる分野で女性の参画が進む、大きなチャンスが来ていることを示しています。」とし、まさに日本が新しい時代を迎えたということを強調しました。
そして、日本の上場企業の女性役員比率は12.5%に達した一方、OECD加盟国平均は3割であり、その差は依然として高い壁として立ちはだかっているという厳しい現実にも言及。また、「政治家の何よりも重要な仕事は、平和を守ること」であると述べ、意思決定への女性参画は、企業の経済的な成果に留まらず、政治や社会、ひいては世界全体の平和にも大きくつながっていくと、データを用いてその重要性を訴えました。言葉の端々に滲むのは、「すべての意思決定において、女性をはじめとする多様な人々の参画や様々な視点の反映が不可欠である」という強い想いです。
「皆さんは、これからの世界を確実に動かしていく方々です。女性総理の誕生もあり、今、本当に大きなチャンスが来ています。私たちも皆さんと力を合わせ、世界を変えるという想いで頑張っていきたい。」と力強いメッセージを発信し、会場は神妙な面持ちから一転、笑顔と盛大な拍手とともに会をスタートさせました。
パネルディスカッションでは、合同会社デロイト トーマツ/ファイナンシャルアドバイザリー Growthリーダー 伊東真史氏と、モデレーターとしてサステナビリティアドバイザリー統括 大塚泰子氏、そして企業・投資・政治・メディアの各領域から4名が登壇し、現場のリアルが多角的に語られました。
【パネルディスカッション登壇者】写真左から
合同会社デロイト トーマツ サステナビリティアドバイザリー統括 大塚泰子氏
合同会社デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー Growthリーダー 伊東真史氏
ジャーナリスト 前Business Insider Japan 統括編集長 浜田敬子氏
一般社団法人NewScene 代表 能條桃子氏
一般社団法人Tokyo Woman in VC理事 松本美鈴氏
インベスコ・アセット・マネジメント株式会社 Head of ESG 古布薫氏
ディスカッションは、構造課題について大塚氏の問題提起からスタートしました。「2025年の共同通信の調査では、『2030年までに、プライム市場上場企業の女性役員比率30%』は達成できると思いますか?という問いに対して、女性役員の54%が『無理だと思う』と回答しています。あと5年もあるのに、半分以上の女性役員が『無理だ』と感じている。」その1つ目の理由は、伝統的な性別役割分業の影響で、71%の方がこれを挙げています。2つ目は、ワークライフバランスの問題であり、いずれも2026年になった今でも上位の理由です。この課題は非常に網羅的で重要ですが、評価や昇進に関する取り組みは進んでいても、問題の本質はそれだけではありません。教育の段階からも意識変革が重要で、例えば、女性の学びや挑戦に対する、周囲の懐疑的な価値観が根強く残っている現状を紹介しました。ビジネスシーンではとりわけ「ホットジョブ(難易度が高く責任のある仕事)」に女性はアサインされづらく、実務スキルの習得や高難度案件への挑戦機会を欠くことで成長が阻まれる点、長時間労働を評価する軸が時間制約のある人材を不利にする負の連鎖などが語られました。
伊東氏からは昇進の裏側に潜む無意識バイアスについて課題提起し、同じ意思決定の仲間として、普段から相互にフィードバックを行い、支援体制を作ることに取り組む「挑戦と同時に支援する仕組みづくり」について紹介されました。
「少し個人的な話ですが、私の母は一生懸命働き勉強もしていました。そんなとき母が『ごめんね』と言うことがありましたが、本当は謝る必要はないはずです。私は逆にそれを誇らしく思っていましたし、それが当たり前の感覚でした。」しかし、子どものことや家庭のことを気にしながら働く女性が多い中、昇進面接などで男性と女性で見られ方が違うのでは、と感じる場面も実際問題としてあるとのこと。
例えば男性は60歳まで働くと考えた場合、まだ先が長いから「挑戦してみよう」と当たり前に言えるのに、女性からするとそうは言えない場合もある。ここ数年で、こうした無意識の差を是正するための仕込みづくりを進め、与えられた時間の中で最大限の支援により挑戦を後押しする。このように、これまでのやり方自体を見直す必要があると痛感していると語りました。
これを受け登壇者からも、取締役会に関する基準(例えば「女性2名または20%」)が広がる一方で、「候補者がいない」という常套句に対してエンゲージメントの場で「本当に探しましたか?」と問い直す必要性が紹介されました。加えて、取締役会内で女性の発言が通りにくい文化的課題が残る現実を踏まえ、成功と失敗の両事例を業界横断で共有する重要性が指摘されました。
また、母集団とパイプラインの細さがボトルネックとして浮き彫りにされ、学生段階から若年層への働きかけと多様な昇進・独立のルート設計の両輪が求められていることが共有されました。一方で、制度・ルールの側面も避けて通れません。政治の現状として「衆議院議員の女性比率は15%未満、地方議会も2割未満が多い。」と共有され、政治と経済の相関を踏まえた連動策が論点となりました。ケア責任を前提にしない旧来の設計では限界があるため、労働時間の短縮、保育の公助拡充、資金配分の偏り是正、地方議会の兼業活用など、セクター横断の連携が提案されました。
ディスカッションは、公正な機会提供と後方支援を同時に実装し、各分野が連動して一歩を積み重ねつづけることの重要性が再確認されるかたちで「まずはとにかく行動」をキーワードに締めくくられました。
ディスカッションは、構造課題について大塚氏の問題提起からスタートしました。「2025年の共同通信の調査では、『2030年までに、プライム市場上場企業の女性役員比率30%』は達成できると思いますか?という問いに対して、女性役員の54%が『無理だと思う』と回答しています。あと5年もあるのに、半分以上の女性役員が『無理だ』と感じている。」その1つ目の理由は、伝統的な性別役割分業の影響で、71%の方がこれを挙げています。2つ目は、ワークライフバランスの問題であり、いずれも2026年になった今でも上位の理由です。この課題は非常に網羅的で重要ですが、評価や昇進に関する取り組みは進んでいても、問題の本質はそれだけではありません。教育の段階からも意識変革が重要で、例えば、女性の学びや挑戦に対する、周囲の懐疑的な価値観が根強く残っている現状を紹介しました。ビジネスシーンではとりわけ「ホットジョブ(難易度が高く責任のある仕事)」に女性はアサインされづらく、実務スキルの習得や高難度案件への挑戦機会を欠くことで成長が阻まれる点、長時間労働を評価する軸が時間制約のある人材を不利にする負の連鎖などが語られました。
伊東氏からは昇進の裏側に潜む無意識バイアスについて課題提起し、同じ意思決定の仲間として、普段から相互にフィードバックを行い、支援体制を作ることに取り組む「挑戦と同時に支援する仕組みづくり」について紹介されました。
「少し個人的な話ですが、私の母は一生懸命働き勉強もしていました。そんなとき母が『ごめんね』と言うことがありましたが、本当は謝る必要はないはずです。私は逆にそれを誇らしく思っていましたし、それが当たり前の感覚でした。」しかし、子どものことや家庭のことを気にしながら働く女性が多い中、昇進面接などで男性と女性で見られ方が違うのでは、と感じる場面も実際問題としてあるとのこと。
例えば男性は60歳まで働くと考えた場合、まだ先が長いから「挑戦してみよう」と当たり前に言えるのに、女性からするとそうは言えない場合もある。ここ数年で、こうした無意識の差を是正するための仕込みづくりを進め、与えられた時間の中で最大限の支援により挑戦を後押しする。このように、これまでのやり方自体を見直す必要があると痛感していると語りました。
これを受け登壇者からも、取締役会に関する基準(例えば「女性2名または20%」)が広がる一方で、「候補者がいない」という常套句に対してエンゲージメントの場で「本当に探しましたか?」と問い直す必要性が紹介されました。加えて、取締役会内で女性の発言が通りにくい文化的課題が残る現実を踏まえ、成功と失敗の両事例を業界横断で共有する重要性が指摘されました。
また、母集団とパイプラインの細さがボトルネックとして浮き彫りにされ、学生段階から若年層への働きかけと多様な昇進・独立のルート設計の両輪が求められていることが共有されました。一方で、制度・ルールの側面も避けて通れません。政治の現状として「衆議院議員の女性比率は15%未満、地方議会も2割未満が多い。」と共有され、政治と経済の相関を踏まえた連動策が論点となりました。ケア責任を前提にしない旧来の設計では限界があるため、労働時間の短縮、保育の公助拡充、資金配分の偏り是正、地方議会の兼業活用など、セクター横断の連携が提案されました。
ディスカッションは、公正な機会提供と後方支援を同時に実装し、各分野が連動して一歩を積み重ねつづけることの重要性が再確認されるかたちで「まずはとにかく行動」をキーワードに締めくくられました。
閉会の挨拶として、デロイト トーマツ グループCEOの木村研一氏がToget-HERの活動及びデロイト トーマツ グループの取り組みに対する想いを述べたのちに、「ぜひ、最後の登壇とメッセージを!」との会場の期待の声によって想定外の登壇となったのは、Toget-HERの立ち上げから現在までの取り組みを精力的にリードする大塚氏でした。大塚氏は「今日、私がToget-HERを立ち上げたときにやりたかったことが形になりました。こんなにたくさんの女性たちが同じ目標に向かって戦っている。」と会への想いを言葉にし、世代横断の連帯を「行動」に落とす決意を新たにしました。
続けて、キャリアの中核世代へ強く訴えます。「今日ここに集まってくださった皆さん、特に私をはじめとする40代は、私は『腰骨』だと思っています。先輩が力強く推進してくださった想いと、20代の『もう働きにくさに気づいている』世代の想いをつなげることが、私たちの役割かもしれない。」そして、2030年にはビジネスの中核として、企業文化や社会の流れを変えていかなければならない。その強い想いの背景には、今も現役で働いている大塚氏の母から渡されたバトンの存在がありました。「もっと大きくなって、次世代の女性たちのために頑張りなさいと背中を押してくれます。振り返れば、今の私の活動は、母から受け取ったバトンでもあります。」そして最後は、会場全体への呼びかけで締めくくりました。
「一緒に頑張らなければ変わりません。だから、あと4年でこの戦いを終わらせたい。ぜひみんなで力を合わせましょう。」
そこには、できればあと4年で次のステージへ進みたい、次世代には、これまでとは違う新しいバトンを渡したい ―そんな強い想いが込められていました。
Toget-HERが掲げる「みんなで一緒に、未来へ進もう」という合言葉のとおり、今の女性たちを次のステージへ押し出すのは、実はつながりの存在が大きいのかもしれません。
高い目標に向かうとき、ネットワークは単なる人脈ではなく、学びと挑戦を後押しする資産になります。先人たちが切り開いた道に、今の女性たちが新しい道筋を描き、次の世代へ渡す。そのリレーに世代や役職、業界の違いは関係ありません。コミュニティに関わり、仲間と経験や知恵を持ち寄ることで、視野は広がり、意思決定の質は確実に高まります。すると、これまで見えていなかった選択肢や思わぬ「ホットジョブ」への道が立ち上がり、キャリアは点から線へ、線から面へと拡張していきます。そう考えると、キャリアも独走ではなく、バトンを渡し合うリレーなのかもしれないと気づかされます。
過去の自分から、今の自分へ、そうしてつないできた自身のキャリアがネットワークに飛び込んだとき、他の誰かの未来への気づきや出発点になるのかもしれません。
デロイト グローバルの国際女性デー2026テーマ「Advice to my younger self」にちなんだイベントの一つ、参加者の皆さんが「10年前の自分へ」届けたいメッセージ