Deloitte AI Institute が発表した「The AI Dossier」を基に翻訳した本レポートで、6つの主要業界における有力でビジネスに適用可能なユースケースを多数紹介しています。
※本レポートは2025年12月にGlobal Deloitte AI Instituteが公開したレポート『The AI Dossier: 80+ AI use cases』を翻訳したものです。和訳版と原文(英語)に差異が発生した場合には、原文を優先します。
これまで何十年もSFの夢物語とされてきた人工知能(AI)は実用的な技術として飛躍的に進化し、企業にとって競争上不可欠な要素となっています。しかし、AIの進歩と導入が過熱する一方で、企業のトップや意思決定を行う立場にある人々の多くは、AIが自社のビジネスに実際にはどのようなメリットをもたらすのか、そのリスクは何かについて、依然として大きな疑問を抱いています。
この業界別AI 活用のすゝめ ~The AI Dossier~では、主要6業界において最も有力かつビジネスに適用可能なAIユースケースを多数ご紹介します。ユースケースごとに主な事業課題とオポチュニティ、AIの活用例、および想定されるメリット、リスク管理をまとめています。また、将来的に大きなインパクトをもたらすことが予想される新たなAI ユースケースについて業界別に取り上げています。
もちろん、最善なAIの活用方法は組織によって異なるものであり、このレポートで紹介する事例以外にも数多くの有益なAIユースケースがあります。しかし、ここで取り上げる事例を通じて、現在、そして今後数年間のビジネスにおいてAIが実際に何ができるのかがより明確になり、自社でAI を導入するタイミングや適用する対象そしてその実行方法、また現時点でAI 導入にどの程度の時間と予算を充て、どの程度注力すべきかについて賢明な判断を下すことができるようになるでしょう。
AIは日常生活に不可欠な存在となり、見えない形で浸透しています。消費財分野ではユースケースが急増し、生成AIによる個別化コンテンツから、自律型エージェントによる製品設計・価格設定・サプライチェーン運用まで広がっています。その結果、消費者がブランドを発見・評価・関与するプロセスが根本的に変化しています。これらのツールは体験を向上させるだけでなく、検索・サービス・コマース・エンターテインメントにおける期待値そのものを引き上げています。企業には好機と同時に迅速な対応の緊急性が生じ、AIはリアルタイムの顧客接点、インテリジェントな自動化、適応し得る意思決定を推進します。大規模言語モデルやエージェント型AIは最小限の人手で高度な機能を担い、運用効率とイノベーションを拡大しています。大規模活用には統合されたデータ基盤、強固なガバナンス、コア業務の再設計への意欲が不可欠で、先進企業はコスト削減にとどまらず、新製品投入や顧客体験の再設計で競争力を高めています。
本レポートでご紹介している活用例とユースケース:
需給バランスの調整(消費者需要の計画、予測、マーケティング)、次世代の店舗オペレーション、自律型サプライチェーン運用 ほか多数
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AIはエネルギー・資源・産業分野で変革を牽引し、迅速に把握・予測・行動する力を提供し、最適化や予測、現場支援で効率・安全・持続可能性を高めます。エージェントは省人で資産管理やオペレーションを監督し、生成モデルはシミュレーションや設計・計画の最適化に活用されます。脱炭素化やデジタル化、レジリエンス強化という課題に対し、AIは資産価値の最大化と予測・処方的分析、リアルタイム統合による状況把握で支援します。効果最大化にはインフラ・人材・ガバナンス・規制対応が不可欠で、安全重要領域では一層重要です。規律と価値創出に焦点を当てる企業では停止時間・エネルギーの無駄の削減や革新が加速し、成熟に伴いAIは効率化を超えて競争力の礎となります。
本レポートでご紹介している活用例とユースケース:
AIによる予知保全、従業員の安全性向上、強靭なロジスティクスと計画 ほか多数
≫エネルギー・資源・生産財業界のユースケースを見る
AIは技術の成熟と規制の明確化により、実験段階から金融サービスの不可欠な基盤へ移行し、よりスマートで迅速かつ責任ある業務を推進します。リスクの早期検知、顧客対応力の強化、機動的競争力の発揮に貢献し、不正検知や個別化マーケティング、予測型トレーディング、保険金請求の自動化などで価値創出を加速します。知的業務では複雑なデータの高速・深層分析により効率と意思決定を高め、サイバー対応や開発・デバッグ、合成データ生成でも力を発揮します。自律型AIはアルゴリズム取引に対応しつつ人の監督を維持できます。旧来システム刷新、コスト削減、顧客ニーズの変化への対応に有効な一方、公平性・透明性・説明責任への要請が高まっており、モデル性能だけでなくガバナンス、データ品質、組織体制への投資が不可欠です。
本レポートでご紹介している活用例とユースケース:
徹底的にパーソナライズされた金融アドバイスと資産運用、アルゴリズム取引および市場、シミュレーションにおけるAIエージェント、バーチャル銀行サービス ほか多数
≫金融サービス業界のユースケを見る
行政・公共サービスではAIが現場から政策・インフラまでを変革し、制約下でも業務の近代化や応答性向上、効率化と洞察の創出を可能にします。政策文書作成、法令・政策の分析要約、都市計画のシミュレーション、教育の個別最適化、バーチャル公務員による住民対応などに活用されています。近年はエージェンティックAIが監督、許認可、給付、情報分析、医療記録を自律的に支援し、人の専門性を補完します。安全なデータ連携と職員の監督を組み合わせることで、事務負担の軽減、プロセス効率化、意思決定の精度と迅速性の向上を実現します。事例の成熟と規制変化に伴い、AIは柔軟でデータ駆動型の行政運営を促進する原動力となります。一方、透明性・公正性・説明責任、プライバシー、調達の複雑さ、デジタル成熟度の差が導入の障壁となるため、成功には組織横断の連携、住民との信頼構築、法的・倫理的枠組みとの整合が不可欠です。
本レポートでご紹介している活用例とユースケース:
規制審査・検査のAI支援、AIによる許認可業務の効率化、バーチャル公務員 ほか多数
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AIはライフサイエンスとヘルスケアの変革を加速し、研究から臨床まで早期発見や標的治療、効率的なケア提供を支えます。増大する臨床・ゲノム・実世界データから高速に洞察を引き出し、創薬では候補化合物の特定、治験設計の最適化、患者層の層別化に加え、規制対応の自動化や需給予測によるサプライチェーン改善に寄与します。医療現場では診断精度の向上と個別化治療、事務負担の軽減を実現し、エージェント型AIが意思決定やコーディング・請求など複雑な業務を自動化します。技術の成熟に伴い、科学的発見や健康管理、強靭で応答性の高い医療システム構築の中核となる一方、高リスク環境での活用には厳密な検証、説明責任、倫理遵守が不可欠で、プライバシーや公平性、アウトカムの信頼性を確保しつつ、進化する規制と整合する形で既存のケアと研究に統合する必要があります。
本レポートでご紹介している活用例とユースケース:
マルチモーダル診断と臨床意思決定支援、エンドツーエンドの自律型薬剤発見・開発、保険者、医療機関、および患者に対する更なる事務の迅速化 ほか多数
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AIはテクノロジー・メディア・通信の構造を刷新し、製品の革新と業務再設計を同時に推進します。コード生成やコンテンツ制作、ネットワーク最適化、オーディエンス分析により市場投入が加速し、エンゲージメントと新たな収益創出が進みます。メディアでは生成AIが高度なパーソナライズと編集自動化、データ洞察を実現し、エージェント型AIが自律的なワークフロー管理やテクニカルセールス、コンテンツ管理の最適化を担います。通信ではAIが技術者を支援し、保守と運用を効率化しつつ、5G時代の分散インフラ統合と自動運転や没入型メディアなどリアルタイムサービスを下支えします。一方で、主要プラットフォームへの組み込み拡大に伴い、ガバナンスや透明性・説明可能性、責任ある利用の重要性が高まり、知財、誤情報、バイアス、ディープフェイクへの対策が不可欠です。競争力と信頼を維持するには、迅速なイノベーションとセーフガードの両立が求められます。
本レポートでご紹介している活用例とユースケース:
AIによるコンテンツ制作の高度化、AIによる半導体チップ開発の高度化、AIを活用したアーカイブデータの高度活用・抽出基盤 ほか多数
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