この記事の要約
・デロイト トーマツと東和薬品株式会社(以下、東和薬品)は、経理・財務機能の高度化を目的に「Corporate as a Service」のソリューションを活用した包括的なパートナーシップを締結。
・パートナーシップでは、東和薬品の人材不足や急成長による業務負荷に対し、デロイト トーマツによる経理業務の標準化、採用・人材育成支援を組み合わせ、組織力の強化と競争力の向上を目指す。
・デロイト トーマツはCorporate as a Service の提供を通じて、業界全体または産業横断で活用できる「経理・財務の共通基盤インフラ」を構築し、企業の成長を後押ししていく。
2025年8月、デロイト トーマツ グループと東和薬品グループは、経理・財務領域の高度化に向けた包括的なパートナーシップを締結した。その中核を担うのが、従来型BPOの枠を超え、経理・財務機能を経営インフラとして再構築する新たなソリューション「Corporate as a Service」である。深刻化する専門人材不足、急成長に伴う業務の複雑化、DXやAI導入への対応――。こうした構造的課題に対し、Corporate as a Service はどのようなアプローチで経理・財務部門を支援するのか。20年以上にわたり外資系コンサルティングファーム等で先進的アウトソーシングサービスによる業務改革を支援、現在はデロイト トーマツ グループでCorporate as a Service を推進しマネージングディレクターを務める杉浦英夫と、会計・ファイナンスのアドバイザリー部門責任者としてCorporate as a Service を率いる松本淳に話を聞いた。
インタビュイー
松本 淳
合同会社デロイト トーマツ
リスクアドバイザリー ファイナンスアドバイザリー&オペレーション
パートナー
杉浦 英夫
合同会社デロイト トーマツ
リスクアドバイザリー ファイナンスアドバイザリー&オペレーション
マネージングディレクター
―― 2025年8月、デロイト トーマツ グループ(以下、デロイト トーマツ)は東和薬品様と経理・財務領域でのパートナーシップ締結を発表しました。その内容を教えてください。
松本:
今回のパートナーシップは、デロイト トーマツが展開する「Corporate as a Service」の枠組みを基盤に、東和薬品様の経理・財務機能を総合的に支援するものです。具体的にはデロイト トーマツが擁するノウハウと専門人材を駆使し、東和薬品様の経理体制の改革と機能強化を支援します。
松本 淳
合同会社デロイト トーマツ
リスクアドバイザリー ファイナンスアドバイザリー&オペレーション
パートナー
―― 今回のパートナーシップに至った背景について伺います。東和薬品様では、コーポレート部門にどのような課題を抱えていたのでしょうか。
杉浦:
まずジェネリック医薬品業界全体の状況からお話しします。政府は2017年の基本方針で「2020年9月までにジェネリック医薬品の使用割合80%」を目標に掲げました。実際に数量シェアは2013年の52.3%から2024年には89.0%へ拡大しています(※1)。
しかし、この急成長の裏側で急務になったのが、経理・財務などコーポレート部門の体制整備の強化です。企業規模は急拡大する中で、それを支える仕組みや人材の成熟が追いつかず、"歪み"が生まれていました。
東和薬品様も例外ではありませんでした。売上は2010年頃の約460億円程度から現在は約2,600億円規模へ拡大しました(※2)。さらに2022年4月のプライム市場移行に伴い、英文開示や高度なガバナンス対応が求められましたが、コーポレート体制の整備が追いついていませんでした。
※1 日本ジェネリック製薬協会「ジェネリック医薬品数量シェアの推移(H25 ~R7年度四半期毎)」
https://jga.gr.jp/assets/pdf/media/share.pdf
※2 東和薬品「企業情報 沿革」
https://www.towayakuhin.co.jp/company/overview/history.php
―― 課題の根本要因は何でしょうか。
杉浦:
最大の要因は人材不足です。経理・財務人材は全国的に採用が難しく、大阪を拠点とする東和薬品様も、専門人材の確保と定着に苦労されていました。製薬会社においては、一般的に本業である薬業領域以外の専門人材である「経理や人事」といった管理系部門はノンコア業務と位置づけられ、人材育成や仕組みづくりがやや後回しにされる傾向にあります。また、日常業務は回せても仕組みを再設計し継続的に改善できる高度人材が不足しており、DXやAI導入の前提となる標準化・可視化が進まない状況にあります。
杉浦 英夫
合同会社デロイト トーマツ
リスクアドバイザリー ファイナンスアドバイザリー&オペレーション
マネージングディレクター
松本:
ジェネリック医薬品業界は「成長期から安定期」へ移行するなか、薬価改定で利益率維持が難しくなっています。ですから、モノづくり中心の体制から、経理・財務などコーポレート部門の強化へ舵を切る必要があります。こうした課題に個社で対応するのは限界があり、外部の専門知見を取り入れ、業界全体で信頼性を底上げする発想が求められています。
―― では課題解決の手段として、なぜCorporate as a Service が有効なのでしょうか。
松本:
最大の理由は、社内人材を付加価値の高い業務に集中させられる点です。経理・財務の現場では制度対応やシステム刷新など負荷が増え続けており、すべてを自社で担うのは現実的ではありません。
従来型のBPOは業務の一部を外部に委ねる発想です。一方、Corporate as a Service は経理・財務を経営インフラとして再構築するモデルです。デロイト トーマツの専門家が担当者と一体となり、組織を「共創」によって進化させていく点が大きく異なります。
もう一つの価値は“信頼”です。会計監査業務を行い、会計・ファイナンス知見が豊富な国内大手のグループが経理・財務を支援しているという事実は、経営層や監査人、投資家に大きな安心感を与えます。
Corporate as a Serviceのサービス概要
―― 製薬会社や中堅企業がCorporate as a Service を導入するメリットを教えてください。
杉浦:
Corporate as a Service の真価は、業務設計やプロセス改善のノウハウをクライアント企業内に蓄積できる点にあります。一般的なBPOでは知識が社内に残りにくいのに対し、Corporate as a Service は標準化や効率化の手法を、専門家との協働を通じて実務の中で吸収できます。東和薬品様でもプロセス改善や標準化の知見を定着させる取り組みを進めています。
さらに、専門人材の育成と定着にも寄与します。経理・財務の担当者には専門性を深めたい人が多いものの、一企業内では高度な知識に触れる機会が限られます。デロイト トーマツとのパートナーシップでは、専門家との協働や出向、実務研修等を通じて社内にいながら高度な知見を得られます。スペシャリスト志向の人材にとっては貴重な成長機会となり、採用や定着の強力な後押しになると期待しています。
―― 東和薬品様とのパートナーシップでは、どのようなプロジェクトが進行しているのでしょうか。
松本:
協業はいくつかのフェーズで段階的に進めており、現在は第1フェーズとして人材の採用・育成を行っています。不足するファイナンス人材の内容と人数を定義し、まず採用活動を行っています。また、育成としてデロイトトーマツが有する育成コンテンツも活用いただきます。
―― 東和薬品様とのパートナーシップは、Corporate as a Service の実装モデルの1つとなりますね。こうした取り組みを足がかりに、今後どのような展開を構想されていますか。
杉浦:
製薬業界では、今後ますます経営資源の最適配分が重要なテーマになると考えています。市場環境が厳しさを増す中で、各社が個別にコーポレート機能を抱えるのは非効率です。これからは、共通化・標準化された業務基盤を業界全体で共有する流れが加速していくと予想しています。
経理業務は、他社と競う領域ではなく、業界全体で連携して効率化を進めるべき「共創領域」です。Corporate as a Service はその考え方を具現化する仕組みであり、外部とも協働しながら社内の力を高めていく「アウトソーシング+α」のモデルとして、発展させていきたいと考えています。
―― 東和薬品様との協業は、そうした構想の先駆けになるということでしょうか。
松本:
私たちはCorporate as a Service を単なる企業支援にとどまらず、製薬・医療機器・ヘルスケアなど産業を横断して展開できる「経理・財務の共通基盤インフラ」へと発展させたいと考えています。
経理・財務の仕組みを標準化し、企業が本業に専念できる環境を整えることで、限られた人材をより戦略的に活用できるようになる。それがCorporate as a Service の本質的な価値です。
杉浦:
経理・財務は企業の“血流”のような存在です。ここが滞れば、どんなに優れた製品を持っていても企業は健全に成長できません。東和薬品様との取り組みは、単なる業務改革ではなく、産業全体の共創モデルを形にする第一歩だと捉えています。
※本記事は東和薬品株式会社様に許諾をいただき、デロイト トーマツ グループのウェブサイトに掲載しています。