経営環境が目まぐるしく変化するなか、企業のファイナンスを司る経理・財務・税務の重要性はかつてないほど高まっている。だが、多くの企業の経理・財務・税務部門は「AI活用への対応不足」や「人材不足」に悩み、環境変化への適応に苦しんでいるようだ。解決のための処方箋は何か? デロイト トーマツが2025年3月末に実施した日本企業の経理・財務・税務部門への経営課題に関する調査結果から紐解いていく。
新たなテクノロジーを武器とする競争相手の台頭や、環境対応への要求の高まり、過熱する関税戦争など、企業を取り巻く環境の変化は、ますます目まぐるしくなっている。
不確実性が高く、次に何が起きるかわからない状況の中で、柔軟かつ機敏に経営の舵を取っていくためには、経理・財務・税務部門を十分に機能させなければならない。その意味で業務は増えている。
だが、上場・非上場や、事業規模を問わず、企業の経理・財務・税務部門は様々な課題を抱えており、経営を支える役割を十分に果たし切れていない実情が明らかになった。
2025年度版「経理・財務・税務部門の課題調査」では、「経理・財務・税務部門全体における重要な経営課題」として、「DX・AI活用」が38.8%。「人材育成・人材確保」が35.7%であった。
経営を取り巻く環境の激変とともに、経理・財務・税務部門がやるべき仕事は増えているのに、テクノロジーへの対応不足や人材不足がボトルネックとなり、業務をこなし切れなくなっている実情が浮き彫りになった。
人材不足の理由としては「スキル人材の採用ができない」(45.5%)、「専門人材が少ない」(37.4%)が挙がった。単純な人不足ではなく、専門人材が不足していることが背景にある。
また、「退職者が多い」(40.3%)も、人材の流動性の高まりによる退職者の増加が問題をより深刻化させていることを表している。これに対する解決方法としては、「ポテンシャル層を採用し育成する」(41.6%)、「経験者採用を強化する」(40.1%)が多く選ばれた。
一方で、「自社で行っている業務の外部委託」(10.9%)、「同業他社との協力」(8.7%)は少数にとどまった。
以上の結果から、日本では専門人材不足への解決策として、人材育成・採用を強化しているものの、外部委託や外部連携にはいまだ積極的に取り組めていないことがわかった。
業種・企業規模を問わず、経理・財務・税務部門における重要な課題は「DX・AI活用」、「人材育成・人材確保」となっていることが明らかとなりました。経理・財務・税務部門は分野ごとに高度な専門性を必要とするため、人材派遣など、単純な労働力による補完には限界があります。
また、本調査で『社内人材が不足している役職クラス』について尋ねたところ、『中堅スタッフが不足している』との回答が60.9%を占めました。中堅スタッフは、将来の課長・部長クラス候補となるため、これらの人材の不足は、将来、組織を率いる経理・財務・税務人材の枯渇にも繋がりかねないと考えます。優秀な人材の奪い合いが繰り広げられる中で、魅力的な教育制度を整えるかということは、人材採用や定着を促すための重要なポイントになっています。他社といかに差別化を図れるかが肝心です。
組織再編、新会社設立といったイベントの発生、新規制への対応などで、経理・財務・税務部門の業務量は増大し、人材が不足しています。業務量は増えているものの、コストは現状維持、または削減が求められる一方、業務を処理できる人材が確保できないと、経理・財務・税務部門が企業の成長を妨げるボトルネックとなる可能性があります。そのような環境下では、AIをはじめとするデジタルテクノロジーを積極的に活用して仕事量を減らすとともに、外部委託のさらなる活用や他社と組んで人材を採用・育成するといった、さらに踏み込んだ取り組みが必要と考えます。
「Corporate as a Service」は、コーポレート部門の課題解決のため、デロイト トーマツ グループが有する会計やリスクマネジメントの専門性、デジタルアセットの活用やオペレートセンター『Deloitte Tohmatsu Corporate as a Service Operate Center MAEBASHI』でのオペレーションを投入し、課題収束、コーポレート機能の安定化、変革および運用(オペレーション)を一体でサポートするサービスです。企業の経理部門や情報システム部門など、特に専門性の高い業務が求められる部門を中心にサービスを提供しています。