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【Corporate as a Serviceプロフェッショナルに訊く Vol.4】多彩な専門人材が前橋に結集。プロフェッショナルたちが語る、チームワークと実行力で挑むコーポレート業務改革

プロジェクトに見る前橋オペレートセンターの真価とは

Corporate as a Serviceの「実働部隊」として活躍する「前橋オペレートセンター」のプロフェッショナルへのインタビュー後編。

インタビュイー


デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社 CaaSオペレートセンター

鈴木/佐藤/小野/岩崎/芝田

―― 前編では皆さんの多様なキャリアパスと自己研鑽の取り組み、前橋オペレートセンターのチーム体制等を伺いました。後編では、より実務的な側面に焦点を当てたいと思います。
前編の最後で、東京(丸の内二重橋ビルディング)で勤務するプロフェッショナルとの連携について触れられましたが、前橋オペレートセンターとの連携体制について詳しく教えていただけますか。

鈴木:
私たちが担う業務の多くは、クライアント内で属人化が進み「特定の担当者でなければ遂行できない」状態になっている業務です。クライアントはこうした業務を、外部リソースを活用して解決したいと考えていらっしゃいます。前橋オペレートセンターではそうしたクライアントの業務を整理し、体系化した上で実行するという流れで支援しています。この過程では、東京との連携が非常に重要になってきます。

具体的に説明しましょう。案件の複雑さや専門性のレベルを評価し、前橋オペレートセンターで完結できる業務と東京の専門家のサポートが必要な業務を切り分けます。例えば固定資産管理のように業種によって大きく仕分け方法が異なる専門性の高い業務は、東京のプロフェッショナルが最初に整理します。彼らはその業界や特定の課題に対する深い知見を持っているので、複雑な業務プロセスを体系化できます。その後、整理された業務プロセスを私たちが引き継ぎ、佐藤のような会計の専門家が、標準化された手順に落とし込むのです。

また、業務の標準化において重要なマニュアル作成も、業務の複雑さによって対応が変わります。比較的シンプルな業務であれば私たちで独自にマニュアルを作成することもありますが、高度な専門知識が必要な場合は東京のチームのフォローを受けながら進めます。この「専門家による高度な分析と整理」から「現場での実行可能な形への変換」という流れが、デロイト トーマツの強みであり、前橋と東京の連携の核心部分です。

デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社 CaaSオペレートセンター 鈴木

 

可視化と標準化で築く経理基盤―前橋から支える経理プロセス改善


――同センターで実際に手掛けている具体的な業務やプロジェクト事例について教えてください。

鈴木:
前橋オペレートセンターは主に、経理業務の代行と業務プロセスの整備を担っています。まずクライアントへの業務ヒアリングを通じてブラックボックス化した領域を可視化し、詳細な業務一覧を作成します。具体的には業務のサイクル、作業量、必要書類、使用システム、業務間の依存関係等を明確にし、標準化された業務プロセスを設計します。前編で紹介した通り、この段階で案件の規模や複雑性に応じて、東京で勤務する公認会計士をはじめとするプロフェッショナルと連携し、高度な専門知識や特定業界のプロトコル理解が求められる場合には、協力を仰ぎます。

そして安定稼働のフェーズに移行した後は、二つの展開パターンがあります。一つは前橋オペレートセンターが継続的に業務を代行するモデル、もう一つのパターンはマニュアルとプロセスをクライアントに移管し、内製化を支援するモデルです。いずれの場合も「人材リソースの制約を解消し、業務の持続可能性を確保したい」というクライアントニーズに応える形で、価値提供を行っています。

 

―― 経理業務のサポートと標準化が重要な役割なのですね。実際に担当されたプロジェクトの中で、特徴的な事例や印象に残っているケースを教えてください。

鈴木:
特に印象深いのは、現在担当している製造業の経理統合業務です。このクライアントには10社以上の関連会社があり、各社が独自の経理プロセスで運用していました。

こうした課題に対し、前橋オペレートセンターは経理業務の標準化によるガバナンス強化を通じて、経理担当者が付加価値の高い経営分析業務へシフトできるように支援しました。具体的には全社の業務フローを可視化するところから着手し、各社の経理担当者への綿密なヒアリングを実施しました。そして共通点と相違点を洗い出して標準プロセスを設計しました。

現在、本センターでは3・4名のチームでこれらの業務を引き継ぎ、運用を行っています。プロセスを整理して可視化したことで、前橋のオペレーターも一定の品質で業務を遂行できるようになりました。さらに次のステップとして業務効率化に取り組んでおり、「無駄なプロセスの排除」「デジタル化の推進」「業務の自動化」といった改善活動を進めています。

岩崎:
私が担当した案件は、クライアントの組織内に正式な経理部門がなく、別の管理部門が経理業務を兼務している状況でした。業務引継ぎの過程で作業の棚卸しを行った際、「以前の経理担当から指示されたから」という理由だけで毎月数時間をかけて実施されていた作業が見つかりました。そして私たちがこの業務プロセスを精査したところ、不要な作業であることが判明しました。これをクライアントの財務責任者に報告し、過去データによる検証を経て、作業の省略が正式に承認されました。

このケースは、単なる業務代行ではなく、プロセスの最適化によって付加価値を提供できた好例だと自負しています。現在は他の業務プロセスも同様の視点で見直しを進め、さらなる効率化の機会を特定しています。クライアントからも「長年当たり前と思っていた業務の見直しができた」と高い評価をいただいています。

デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社 CaaSオペレートセンター 岩崎

 

芝田:
私たちのチームが特に注力しているのは、「業務プロセスにおけるボトルネックの特定と改善」です。単にクライアント業務を請け負うだけでは、本センターの人材が不足してしまいます。ですから業務を自動化し、少ないリソースでも対応できるよう、東京のプロフェッショナルと連携しながらシステム化に取り組んでいます。

具体的には、複雑な会計処理を自動化する表計算ソフトのテンプレート開発や反復作業を効率化するマクロの実装、クライアントの会計システム設定の最適化提案等です。現在、本稼働から約1年が経過しましたが、クライアントからも「安定して業務が回っている」と高い評価をいただいています。今後はこうした改善手法を体系化し、センター内の他チームにも横展開していきたいですね。

 

クライアントに寄り添いながら正確性と迅速性を追求―経理業務に求められるコミュニケーションの本質
 

―― 業務を円滑に進めるためにはクライアントとの関係構築も重要です。皆さんはクライアントとのコミュニケーションで、どのようなことを大切にしていますか。

鈴木:
業務移管の際にはクライアントの負担を減らすため、一回の会議でいかに必要な情報を聞き出せるかを意識しています。また、クライアントとの信頼関係を築くために、一つひとつのやり取りを丁寧にすることも心掛けています。

業務移管の初期段階では主に東京のチームがクライアントとやり取りしますが、実際に稼働が始まると、前橋チームが直接やり取りするようになります。その際、既に築かれている信頼関係が崩れないように引き継ぐことを重視しています。

佐藤:
私はスピードと正確性を重要視したコミュニケーションが重要だと考えています。特に決算期には1分1秒を争うような状況になるので、迅速かつ正確に対応することが求められます。実際、経理業務では仕訳方法の指示や勘定科目の選択、計上時期の判断等、コミュニケーションの一つひとつが財務数値に直結します。

例えば、資産計上すべきものを経費として処理してしまえば、利益が過少に表示されたり、税務上の問題が生じたりする可能性があります。また、売上の計上時期や引当金の処理方法に関する指示を誤れば、数千万円、場合によっては数億円単位の誤差が発生することもあります。

もちろん、全ての業務において「高品質」を心掛けていますが、一つの誤った指示が、経営判断に影響するような重大な財務数値の誤りにつながる可能性もあります。ですから正確性は何よりも大切です。

デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社 CaaSオペレートセンター 佐藤

 

小野:
あとは、お互いの意図が正確に伝わることも重要だと考えています。特に業務移管のような複雑なプロセスでは、自分の言いたいことが上手く伝わらなかったり、クライアントの要望を誤解したりすることがないよう、会話のキャッチボールがスムーズにできるように気を付けています。

コミュニケーションは単なる情報交換ではなく、相互理解を深めるプロセスだと考えています。ですからメールでのやり取りでは丁寧な言葉遣いを心掛けると同時に、専門用語の使い方に配慮し、クライアント側の作業者目線で理解しやすい表現を心掛けてもいます。

もう1つ、佐藤と同様に、問い合わせへの応答速度も重要な要素だと考えています。一つの疑問点が解消されないことで業務移管全体のスケジュールに影響を及ぼすことがあっては、クライアントはもちろん、チームメンバーの業務にも支障を来してしまいます。

岩崎:
クライアントとのコミュニケーションでは、相手が大切にしていることを尊重する「共感的理解」を重視しています。例えば業務改善の提案をする際も、単に効率化の観点だけでなく、クライアントがその業務に込めている意図や達成したい成果を深く理解した上で、相手に寄り添ったアプローチを心掛けています。

特に経理業務は組織文化を強く反映する領域です。表面的には数値という客観的要素を扱いますが、その背後には企業の意思決定プロセスや価値観が存在しています。私たちはクライアントの業務構造や組織文化を十分に汲み取った上で、「なぜこの作業が必要とされているのか」という本質的な問いを常に意識し、クライアントとの対話に活かしています。

もちろん「クライアントの価値観を尊重しながら最適な解決策を提案する」ことは容易ではありません。しかしこの難しさを克服することこそが、私たちの専門性を発揮できる領域だと考えています。そうした積み重ねによってクライアントの信頼を獲得できることに、日々のやりがいを感じています。

 

―― 芝田さんが担当される自治体系組織では「業務の一部を外部委託する」という行為にあまり慣れていないと拝察します。コミュニケーションにも独自の難しさがあるのではないでしょうか。

芝田:
そうですね。「業務を外部に出す」ことに不安を感じるクライアントは多いと思います。その距離感を抱かせないよう、迅速なレスポンスを行うようにしています。即座に解決策を提示できない場合でも、「受領確認と対応の見通し」はすぐに伝えるようにしています。

また、細かいことですがオンライン会議の場合は、意識的に意思表示を多めにするよう心掛けています。カメラをオンにしてうなずいたり、適切な相槌を打ったりして、対面環境と遜色ないような反応をするよう努めています。同時にクライアントの反応を見逃さないよう、最大限の注意力と観察力を持って臨み、あたかも「隣で仕事をしているかのように」感じてもらえるようなコミュニケーションを目指しています。

デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社 CaaSオペレートセンター 芝田

 

AIとの共存時代を見据え、「考えて動く」組織作りを


―― 最後に、これからのビジネス環境やテクノロジーの進化を見据えて、皆さんが描く前橋オペレートセンターの将来像や、ご自身の目指すべき姿について展望をお聞かせください。

鈴木:
経理業務の未来を考えると、定型的な処理業務は積極的に外部化され、人工知能(AI)やデジタル技術による自動化が進むことは間違いありません。そうした中では前橋オペレートセンターの役割も進化していくべきだと考えています。

その中でも特に私が注目しているのは、中長期的な視点での価値提供です。本センターでは経理業務の効率化や標準化を中心にクライアントを支援していますが、将来的には意思決定プロセスに関わるような戦略的領域にも貢献できる存在になりたいと考えています。最初は小規模な業務委託からスタートし、徐々に信頼関係を構築しながら、クライアントの経営に実質的なインパクトをもたらす領域まで関与できるチームへと成長していきたいです。

佐藤:
デロイト トーマツが提供するCorporate as a Service(CaaS)の発展には「難易度の高い業務領域への展開」が不可欠だと考えています。経理やコーポレート業務の外部化が進む中でも、特に複雑な会計処理や高度な判断を要する業務は、企業内部に留まる傾向があります。そうした専門性の高い領域もCaaSで受け入れられるように積極的に挑戦していきたいです。これらのノウハウを体系化していくことで、CaaSの価値領域を拡大できます。私個人の目標は、クライアントと前橋オペレートセンターの「翻訳者」として、高度な専門知識と実務運用の「架け橋」のような存在になりたいです。

小野:
私は、クライアントがより戦略的な業務に集中できるよう支援することがCaaSの価値だと捉えています。今後は経理業務未経験で飛び込んだ自分の経験を活かし、経理未経験者でも専門業務を効率的に習得できるような教育プログラムの開発にも積極的に参加したいです。そして将来的には、自分自身がチームリーダーとして、多様なバックグラウンドを持つメンバーの強みを最大化できるような体制作りに貢献していきたいと考えています。

デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社 CaaSオペレートセンター 小野

 

岩崎:
前橋オペレートセンターの強みの一つは、多様なバックグラウンドを持つメンバーが集結していることであり、今後もこの強みをさらに発展させていくべきだと考えています。CaaSの発展には、会計の専門知識だけでなく、各業界の事業特性を理解した上での業務設計が不可欠です。今後は自らの異業種経験を活かしながら、クライアントの業界に特化した業務改善の手法を追求していきたいです。

具体的には、佐藤が担当しているような「属人化した業務の紐解きと可視化」の手法に業界特有の視点を組み合わせるアプローチの幅を広げ、横展開を広げていくことが目標です。

芝田:
経理業務は今後、確実にAIへの移行が進んでいく分野だと思います。私たちがCaaSプロフェッショナルとして提供すべき価値は、定型業務の知識を兼ね備えた上で、予期せぬ状況変化への対応や、クライアントの暗黙知を形式知に変換する能力等、人間にしかできないことを見極め、それを実践していくことだと考えています。

公的な業務に携わった経験から、業務が形骸化していくプロセスを目の当たりにしてきました。そうした経験を活かして、私たちが提供すべき価値は「考えて動く力」だと思います。言われたことをそのままやるのではなく、時に改善を提案し、よりよいアクションを作り上げていく。そんな思考力と行動力を備えた集団として、前橋オペレートセンターを引っ張っていけるようになりたいです。AIが進化する時代だからこそ、人間ならではの判断力と行動力が一層重要になると確信しています。

 

――前橋オペレートセンターが、専門性と創意工夫で真の付加価値を生み出しているプロフェッショナル集団であることがよく分かりました。本日は貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

Our thinking