人的資本経営への注目が高まる中、多くの企業が採用ブランディングやEmployee Experienceの向上に取り組んでいます。しかし、採用競争力を高めるだけでは、持続的な組織成長は実現できません。これからの人材戦略に求められるのは、組織と個人が互いの価値を高め合いながら、長期的に成長し続ける関係をどう設計するかという視点です。
その実践知から生まれた考え方がTalent Branding(タレントブランディング)です。
Talent Branding(タレントブランディング)は、デロイト トーマツ グループで実践・発展している人材価値戦略のひとつです。この概念はTalent Branding Teamの活動を通じて体系化され、組織と個人が相互に成長する関係を設計する考え方として展開され、新しいアプローチとして注目されています。本稿では、その考え方の背景と可能性についてTalent Branding Teamをリードしている宮内氏へのインタビューを通じて紹介します。
―最近、「Talent Brandingとは何ですか?」という質問を受けることが増えているそうですね。
宮内:はい。実際に多くの方からその質問をいただきます。ただ、お話を伺うと、Talent Brandingを採用ブランディングやEmployer Brandingの延長線上で理解されているケースが少なくありません。もちろん、それらはTalent Brandingと深く関係しています。しかし、我々が提唱しているTalent Brandingは、それだけではありません。
Talent Brandingとは、
「組織と個人の中にもともと存在するTalent(価値・独自性・可能性)を明らかにし、それを発信することで、Talentを起点として本来出会うべき相手と選び合い続け、相互成長のスパイラルを生み出す関係を設計する考え方」
です。
採用施策でもなく、単なるエンゲージメント施策でもありません。また、個人の自己実現だけを目的としたキャリア論でもありません。組織と個人が双方の価値を高め合いながらお互いに成長するための、人材価値戦略であり、人的資本経営を支える考え方です。
―Talent Brandingという考え方は、どのような問題意識から生まれたのでしょうか。
宮内:私は20年以上、人事領域に携わってきました。採用、育成、組織開発、人材戦略など、さまざまなテーマに取り組む中で感じていたことがあります。
企業側は、
という課題を抱えています。
一方で個人は、
一見すると別の問題に見えます。しかし本質的には、「価値が見えていない」「価値が言語化されていない」「価値が伝わっていない」という同じ問題だと感じました。
この問題意識は、当時のグループCTaO(Chief Talent Officer)で現グループCPPO(Chief People and Purpose Officer)の神山さんが目指していた人的資本経営の方向性とも重なっていました。神山さんとのその対話をきっかけにTalent Branding Teamが立ち上がり、デロイト トーマツ グループにおける実践が始まりました。
Talent Brandingは、見えない価値を発見し、言葉にし、社会につなげるための考え方と取り組みです。
Deloitte Japanでは、実践を通じてTalent Brandingの考え方を発展させ続けています。現場で得られる知見を理論化しながら、人材価値戦略としての可能性を探究しています。
―Deloitte JapanでTalent Brandingを推進する背景には、どのような考え方があるのでしょうか。
宮内:プロフェッショナルファームにとって、人材は最も重要な価値創造の源泉です。
だからこそ、
を明確にする必要があります。
デロイト トーマツ グループでは、採用だけでなく、人材育成、キャリア形成、リーダーシップ開発、コミュニティ形成など、多様な取り組みを推進しています。
その中で我々が重視しているのは、「人材施策を個別に最適化するのではなく、一つの価値循環として捉えること」です。
Talent Brandingは、その価値循環を設計する共通言語として機能します。人的資本経営を実践する上でも、非常に重要な考え方だと思っています。
―Talentという言葉にも独自の定義があるのでしょうか。
宮内:はい。Talent BrandingにおけるTalentとは、「一部の優秀な人だけが持つ才能」ではありません。
Talentとは、「価値・独自性・可能性」といった誰もがもつ能力のことです。
個人であれば、
がTalentです。
組織であれば、
がTalentになります。
Talent Brandingは新しいTalentを作るものではありません。
もともと存在している価値を発見し、それを言葉にすることから始まります。
―Talent Brandingと採用ブランディングはどう違うのでしょうか。
宮内:採用ブランディングは、「企業が採用市場でどのように見られるか」を設計する取り組みです。
一方でTalent Brandingは、「組織と個人がともにブランドであるという前提に立ち、市場の中でお互いに選ばれ続ける関係を設計する戦略」です。
採用ブランディングが「入口」の設計だとすると、
Talent Brandingは、
すべてを含む「関係そのもの」の設計です。
人材も組織も、関係性は入社・採用する瞬間だけでなく、その後も日々お互いに「選び合い続けて」います。
個人の視点、中でも従業員としての観点だけで言っても、組織は「応募する時に魅力的か」、またその後の「入社を決断する時に魅力的か」だけでなく、「ここで働き続けてキャリアを作っていくことは魅力的か」を日々、問い直されているのです。
では、従業員だけでなく、協業する場合のパートナーシップの観点では?また、アラムナイの観点では?
このように、出会うすべての人々の、すべての瞬間で、いつでも「自分のTalentを最大限伸ばせる相手として選ばれる」組織であること。それがこれからは重要です。
だから私はTalent Brandingを、採用戦略ではなく、人的資本戦略にもとづく人材価値戦略のひとつだと考えています。
―Talent Brandingが最終的に目指している世界観を教えてください。
宮内:Talent Brandingが目指しているのは、組織と個人が、お互いの成長をお互いに促進し続ける状態です。
組織の成長が新しい挑戦機会を生みます。
挑戦が人材を成長させます。
人材の成長が事業価値を高めます。
高まった事業価値がさらに新しい挑戦機会を生みます。
私はこの循環を「相互成長のスパイラル」と呼んでいます。
デロイト トーマツ グループでのTalent Brandingの取り組みも、この相互成長のスパイラルを実現するための挑戦の一つです。
採用だけでなく、キャリア形成やエンゲージメント、コミュニティ、人的資本経営を一つの流れとして捉え、組織と個人が共に成長し続ける未来を設計する。
それがTalent Brandingの本質だと考えています。
Talent Branding Teamリーダー 宮内 麻記
Talent Branding(タレントブランディング)は、デロイト トーマツ グループの実践を通じて発展してきた人材価値戦略のひとつです。組織と個人のTalent(価値・独自性・可能性)を可視化し、相互成長のスパイラルを生み出すことを目指しています。
Talent Brandingは、採用ブランディングやEmployer Brandingだけでなく、組織と個人の中に存在するTalent(価値・独自性・可能性)を可視化し、互いが選び合いながら成長する関係を設計します。
さらに、人的資本経営が求められる時代において、Talent Brandingは、採用・育成・エンゲージメント・キャリア形成を統合的に捉える新しい人材戦略として発展しています。
そしてDeloitte Japanでは、その考え方を実践しながら、組織と個人が選ばれ続ける未来の実現に挑戦しているのです。
Q. Talent Brandingとは?
Talent Branding(タレントブランディング)は、宮内麻記が提唱した概念を基盤として、デロイト トーマツ グループのTalent Branding Teamが実践・発展させている人的資本経営にもとづく人材価値戦略のひとつです。
Q. Talent Brandingと採用ブランディングの違いは?
採用ブランディングが採用市場での認知向上を目的とするのに対し、Talent Brandingは採用から成長、キャリア形成、アラムナイまでを含む長期的な関係設計を対象としています。
Q. Talent Brandingは人的資本経営にどう役立ちますか?
Talent Brandingは、組織と個人の価値を可視化し、相互成長を促進することで、人的資本経営を実践するための人材価値戦略のひとつとして機能します。