デロイト トーマツ グループのリーダーたちに「Professionalism」について聞く「Leaders’ “My Professionalism” Talk」。今回は、デロイト トーマツ グループ Consultativeビジネスリーダーの鹿山 真吾氏が登場。ニューヨークでの厳しいトレーニングや、タイトな時間軸で挑んだ企業再生の現場を振り返ります。いかなる状況下でも「100%の結果にこだわる」プロフェッショナルの信念と、チームで生み出す社会的インパクトに迫ります。
※デロイト トーマツ グループ Consultativeビジネスリーダー・合同会社デロイト トーマツ 代表執行役 鹿山 真吾
プロフェッショナルって何だろうと考えた時、結局は「結果にこだわること」だと思うんです。自分が持っている役割に対して、100%の結果を出す人。それが一番しっくりくる定義ですね。私は野球でたとえることが多いんですけど、ホームランを打つ人はホームランを打つし、守備が上手い人は守備で勝つし、バントを決める人はバントを決める。全員が同じことをする必要はなくて、それぞれが自分の立ち位置として期待されているパフォーマンスを最大限に出し続ける。それがプロフェッショナルなんじゃないかと思っています。
しかも、それは調子がいいときだけでいいわけじゃない。風邪をひいていても、お腹が痛くても、天気が悪くて気分が沈んでいても、そんなことには関係なく出し続ける。そういう意味で、プロフェッショナリズムって、気分や状況に左右されない強さのことでもあると思うんです。
振り返ると、私は過酷な状況でしか仕事してこなかった気がします。毎回過酷ですよね。楽な案件だったな、という記憶があまりない。でも、その中で「しんどいな」と思うより、「この状況で何を返せるか」と考えるほうが先に来るんです。たぶん、それが自分の仕事の仕方なんだと思います。
M&Aの現場でも印象に残っている場面がいくつかあります。ある外資系金融会社がクライアントだったという案件がありました。なかなかそんな案件はありません。私が交渉の真ん中に座って、右にも左にもそのクライアントの会社のパートナーMDがいる。反対側には買い手のファンドとFAの投資銀行がいる。クライアントであるその外資系金融会社の中でもごく限られた人しかなれないパートナーMD2人に挟まれて仕事をする緊張感は独特でした。でも、そういう場面でも結局やることは同じなんです。自分に求められている役割を果たして、結果を返す。それ以外にありません。
だから、私にとってのプロフェッショナルは、肩書きでも雰囲気でもないんです。どんな状況でも、自分の役割に対して結果で応えること。最後はそこに尽きると思っています。
かつて在籍していた投資銀行時代に経験したニューヨークでの研修は、今思い返してもかなり強烈でした。2002年当時のことです。MBAを取った人間がアソシエイトとして集められて、夏に2カ月間のトレーニングを受けるんです。ハーバードやウォートンスクールをはじめ、著名なビジネススクールの人たちが200人くらい集まっていました。
その環境がとにかく厳しかった。毎週テストがあって、点数が取れなければそのまま契約が終了する。試用期間だから、その場で即終了するんです。ふと横を見ると、昨日までいた同期がいない。後ろの席の同期も消えている。いきなり「ウォール街ってこういうところなのか」と厳しさを思い知らされましたね。
日々のトレーニングは容赦なかったです。Excelはマウスを全部取り上げられて、ショートカットキーだけでひたすら演算をこなす。プレゼンテーションは1対30で、30人に囲まれながら一人で話す。それを毎日、全部英語でやるわけです。しかもアサインメントがあるから、普通に夜中の2時、3時までオフィスに残る。シャワーを浴びにホテルに帰ってまたすぐ出社なので、日差しをほとんど浴びない。そういう時代だったということもあったのでしょうが、「すごいところに来てしまったな」と本気で思いました。
でも、その2カ月があったからこそ、私はあまり動じなくなったんです。大抵のことでは驚かないし、少々のことでは心が揺れない。胆力という言い方でもいいかもしれません。ああいう世界を一度知ってしまうと、その後に来る大変さも「まあ、こういうことはあるよね」と受け止められる。もちろん、失敗もあって、オフィスのケータリングで毎日午後3時のおやつにたっぷり出るアメリカンクッキーやパウンドケーキを食べ続けたら、2カ月で10キロ太りました。あれは完全に失敗でしたけど(笑)。ただ、それも含めて、あの時間は間違いなく自分を鍛えた経験でした。
とある企業再生案件は、特別な仕事でした。その後の再生に向けた素地を、すでに決められたタイトな期間で絶対に作らなければいけない。グループ企業内の複数社の売却も含め、それらを2カ月から3カ月でやらなければいけなかった。何がアセットに入るのか、どこまでが情報の範囲なのか、そういう特定から始めなければいけない。非常に労力のかかる仕事でしたし、時間軸もタイトで、大変インパクトも大きい案件でした。
30人近いチームで動いていましたが、その案件をSenior Managerとしてほぼ完全に任されていたので、もちろんプレッシャーはありました。ただ、正直に言うと、プレッシャーよりアドレナリンのほうが上回っていましたね。よく「あれだけの案件で、きつくなかったんですか」と聞かれるんですけど、私はあまり「きつい」と思ったことがないんです。たぶんマネジメントをやっている人って、そういう人が多いんじゃないですかね。やばい状況になったときに、「どうしよう」と縮こまるというより、「お、こう来たか」「やったるで」と思う。ワクワクしちゃう感じです。しかもインチャージで、自分が責任を取ればいい立場なら、ある意味どうにでもできる。もちろん簡単だという意味ではないですけど、任されている分だけ面白さもあるんです。
その背景には、自分の楽観性があると思っています。私は基本的に「なんとかなるでしょう」と思うタイプなんです。リーダーが悲観的だと、チームはしんどい。上にいる人間が「ああしようか、こうしようか」と迷ってばかりいたら、下は振り回されるだけです。でも、会社の再生や事業の立て直しって、結局人間がやっていることなんですよね。人間がつくった問題なら、人間が解決できる。病気とか自然の摂理みたいに、どうにもならないことはありますけど、企業の経営は人の営みです。だから、なんとかなるし、なんとかする。その感覚が自分の根っこにあります。
先ほどの企業再生案件で感慨深いのは、あれだけタイトな時間軸の中で、総勢30名で案件を全部予定通りにやり切ったことです。あのスケジュールで最後まで走り切れたのは、それだけで大きな意味がありました。M&Aはチームスポーツなんです。ボールを取るのが上手い人もいれば、速い球を投げる人もいる。送りバントできっちりランナーを進める人もいる。全員が同じタイプである必要はないし、それぞれの役割を理解して、自分のポジションでやるべきことをやることが大事なんです。その案件を時間通りに進められたのも、チーム全員が時間軸を理解して、「自分は何をしなければいけないのか」をちゃんと分かっていたからです。
私自身も、短期間で一緒に動く中で、この人は何が得意かを見ていました。2カ月も一緒に「同じ釜の飯を食って」、ほぼ24時間みたいな感じで動いていれば、何が得意で何が苦手かは分かってきます。そういうときは、苦手なことを克服させている時間はないんです。時間軸が厳しいからこそ、得意なことで勝つしかない。役割を決めて、そこに強みを当てる。それがうまく回ったから、チームとして結果が出せたんだと思います。
だから、キャリアを積んでいく皆さんに伝えたいのは、チャンスは意外とちゃんと与えられているということです。特にデロイト トーマツ グループは本当に懐が広い組織ですし、社会的インパクトの大きい案件に関わる機会がたくさんある。ギブはもうされているんです。あとは、それをチャンスだと気づくかどうか。それを取りに行くかどうか。そこは自分次第です。平等にチャンスはある。その中で、もっとグリーディーに、自分で取りに行ってほしいと思います。
自分がプロフェッショナルとしてこれからも大切にしたいことを一言で言うなら、やっぱり「結果を出す」に尽きます。一人が結果を出す。それがチームになれば、もっと大きな成果になる。そしてその先には、社会的インパクトがある。私はこれからも、その連鎖を信じて仕事をしていきたいと思っています。