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クライアントのトップマネジメント目線で考え向き合う

~Leaders’ “My Professionalism” Talk~

デロイト トーマツ グループのリーダーたちに彼らの「Professionalism」について聞く「Leaders‘ “My Professionalism” Talk」。今回は、有限責任監査法人トーマツで代表執行役を務める大久保 孝一氏に話を聞きました。皆さんが「自分自身のProfessionalism」を考える際のヒントにぜひお役立てください。

有限責任監査法人トーマツ 代表執行役 大久保 孝一

「誠実でいること」――これは、私が監査という仕事を続ける上で、ずっと心に置いてきた言葉です。

数年前のある日、子供から「お父さん、なぜ監査の仕事を続けているの?」と聞かれた時、私は初めて自分の内面を真正面から見つめ直しました。

しばし考えた後、「自分に正直でいられる仕事だからだと思う。」と答えました。監査という仕事の本質は、世間の常識に照らし、誠実に、ウソをつかずに行うことにあると私は思っています。当初、資格を取ってこのキャリアを選ぼうとした時は、「スキルを身につけたい」「給料が良さそう」といった考えも確かにありました。しかし、様々なクライアントと向き合ううちに、考え方は少しずつ変わっていきました。

私にとっての「Professionalism」とは、資格や肩書きに縛られるものではなく、心に恥じない生き方を貫くこと。誠実に、ウソをつかない、自分に正直でいられる仕事をすること。そして、クライアントのトップマネジメントの視点―――企業の歴史、文化、DNAまでを理解し、「クライアントのために何が本当に大切か」を考え抜くことだと考えています。
 

監査の経験とトーマツのDNA

私の根底にあるのは、監査という仕事の経験です。長くこの仕事をしていると、クライアントが、株価を上げたい、同業他社に負けたくない、上司からのプレッシャー等様々な要因で、決算の数値を操作しようとしたり、契約や会計基準の解釈を都合良く行おうとする場面に何度も直面しました。無理筋なご相談を受けたことも何度もあります。

そのような中でも、監査は、そして会計士は、「正しいことを、正しく言う」ことができる仕事です。もちろん対応が難しい場面はたくさんありますが、何が正しいのかを徹底的に考え、それを貫けることができる仕事だと思います。そしてそれは、「資本市場の公正を守る」「クライアントの中長期で安定的な経営に貢献する」ことに結果として繋がります。これは、公認会計士法で監査を担う会計士に求められている役割の神髄であると同時に、創業者である等松農夫蔵先生が示された基本構想の底流に流れるトーマツのDNAそのものだと思っています。

会計監査は、公益のための仕事。資本市場の公正を守ることが、経済社会のためになる。株主、債権者、取引先、従業員はもちろん、中長期で見れば、クライアントのためになる―――私は、そう実感しています。
 

クライアントからの信頼のエピソード

「トップマネジメント目線」を体現したと強く感じたのは、あるプロジェクトで責任者を担当した時でした。営業畑出身の社長との初対面では、フレンドリーにもかかわらず、とても距離を置かれていると感じました。しかし、クライアントの歴史や文化、過去の数々の失敗まで徹底的に調べ、それらを自分自身がどう理解しているのか、だから監査人としての自分はどうあるべきだと考えるのかを伝え続けることで、少しずつ心の扉が開いていったのです。

「そんなに知っているのか。社内の人間よりも良く知っているなあ。我々の恥ずかしい部分も全部バレているなら、じゃあ正直に話すしかないなあ」と言われた時、一気に距離が縮まった気がしました。

私は「人に興味を持つ」ことが、クライアントに興味を持つことの出発点だと考えています。クライアントの対面する人の名前や家族構成、過去のキャリアまで、日々の会話で出てきた情報は記憶し、社内の人間関係、人事の背景まで自分なりの仮説をもって理解するように努めます。その上で、クライアントの経営戦略についても自分なりの仮説をもって理解し、「新年度方針の裏側にある問題意識をこのように理解しましたけど合っていますか」、「新たな注力領域の選定はこのような競合分析が理由ですか」、「今年のこの人事は、あの分野を強化していくためですか」などと問いかけ続けることで、クライアントは「自分たちのことを本当に理解している」と感じてくれます。そこから心が開き、仲間として受け入れてもらえるようになるのです。

一番大事なことは、そのクライアントの今よりも将来です。クライアントが、安定して存続し続けること、雇用を守ること、投資家にも還元できること。これらの観点から向き合い続けて、やがて「会社のために本当に価値があるのは、あなたのような視点だ」と認めてもらえたのです。

監査をしていると規制や基準が多いですから、どうしてもそこからの視点になりがちです。しかし、「それはあなたが対面するマーケット視点ではどうですか?」「ステークホルダー視点ではどうですか?」という発想で、それらをさらに専門用語を排除し、できるだけ相手が理解できる言葉で話すことで、相手からの見え方が変わり、信頼してもらえるようになるのです。

自分目線にならないように注意し、ウソをつかず、誠実に、正直に、逃げずに、目の前のクライアントにとって一番大事なことを考え抜く。その基軸こそが私の「Professionalism」で、その姿勢を常に保つことができれば、たとえ耳の痛い言葉を伝えることがあったとしても、心ある経営者には必ず理解してもらえると確信しています。
 

皆さんへのメッセージ

自分自身がプロフェッショナルであるために、ぜひ、常に問い続けてください。

「自分は正しいのか?」「自分だけの見方に偏っていないか?」「中長期の目線で物事を見ているか?」

謙虚さを忘れず、どんな人からも学ぶ意識を持ち続けてほしい。
トーマツの基本構想にも、まさにそれを言葉にした「努力研鑽を積むことは、生涯の努め」、また、「人間的信望を高めることが何よりも肝要」、というものがあります。

そして、クライアントをはじめとした、自分の仕事の相手と向き合う時には、必ず「自分目線」ではなく、「クライアント(受け取り相手)の目線」、できれば「クライアント(受け取り相手)のトップマネジメント目線」で、自分の判断や行動が世の中の常識や期待にかなうのかを考えてほしいと思います。

私は、プロフェッショナルである前に、「一社会人」として、正直に、誠実に、謙虚に、情熱を持って生きていきたい―――それが、トーマツのDNAでもあり、私自身の「My Professionalism」です。

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