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インバウンド 消費者意識・購買行動調査

デロイト トーマツでは、訪日外国人の消費行動・志向について、日本への期待・情報収集・購買・体験・帰国後ニーズまでの一連の行動全体を把握することを目的に、2026年4月に韓国・台湾・米国・タイ・シンガポール・オーストラリアにおける20歳~79歳の男女4,800人を対象に、WEBアンケート「インバウンド消費者意識・購買行動調査」を実施した。
本稿ではその調査結果の一部を紹介し、考察する。

本調査では国籍、世帯年収別(一般層/富裕層)、年代別の違いを整理し、セグメント間の差分を明らかにしている。

【本調査の対象者の設定】

  • 対象国に在住
  • 過去3年以内に訪日経験あり(2026~2023年)
  • 訪日時の日本国内消費額が、一人当たり10万円以上(移動・宿泊費除く)

【本調査における調査項目】

※本調査では以下の質問項目を設定しているが、本稿では一部の調査結果を紹介する

  1. 日本への関心・意識
  2. 日本旅行に関する情報収集と予約
  3. 日本における購買行動
  4. 日本での体験における重要要素
  5. 帰国後サービス

訪日旅行への意識:インバウンド旅行者が求めるのは、上質で安心できる本物体験

訪日旅行は「安く楽しむ」よりも、「納得できる体験価値」に支出する旅行として認識されていることが示された。訪日旅行に対する価値観を見ると、インバウンド旅行者は単なる価格の安さではなく、「上質さ」「本質的な体験」「独自性」「安心感」を重視していることが明確である。

特に、日本ならではの文化や自然、日本の伝統的な雰囲気に浸れる体験、ありきたりな観光ではなく他人と違うユニークな体験、利用者評価の確認、質の高い接客・サポート、ルールやマナーの遵守などへの関心が高い。訪日旅行を単なる観光ではなく、安心して選択できる高付加価値な体験消費として認識されている。

一方、高価格であること自体への信頼や、比較検討を省略したいという効率性への志向は相対的に低い。価格や知名度だけで選ばれにくく、体験価値への納得感をいかに形成するかが重要である。口コミや利用者評価への関心の高さは、価値を適切に伝える情報設計の重要性を示している。

また、富裕層はユニークな体験やカスタマイズ性の高い体験、口コミ確認への関心が相対的に高い。高額商品そのものではなく、自分に合い、支出に見合う価値を実感できる体験への選好が強いと考えられる。

日本ならではの文化性や独自性を備えた体験価値を創出し、その価値を安心して選択できる口コミやレビュー、公式情報を整備することが今後の需要獲得に向けてますます重要になるだろう。

情報収集:SNSは入口、口コミは背中押し、公式情報は安心材料

訪日前の情報収集について見ると、インバウンド旅行者は単一の情報源に依存せず、複数媒体を組み合わせながら意思決定していることが確認された。各媒体の役立ち度は総じて高く、情報収集の目的や検討対象に応じて情報源を使い分ける傾向がある。

移動手段や体験に関する情報収集では、SNSの利用割合が高い。実務的な情報だけでなく、現地でどのような体験ができるかを視覚的・直観的に把握する手段として、SNSが重要な役割を担っている。体験の中でも、買物ツアー・アテンドは、特にSNSの利用割合が高い。買物体験の具体的なイメージやおすすめスポット、ガイドサービスなどの情報を収集する入口として機能している。

旅行前の情報収集媒体を比較した棒グラフ。インフルエンサーSNSが全目的で最多水準(28~33%)。ガイドブックやコンシェルジュサービスは低水準。複数回答。

国別に見ると、タイでは公式情報、口コミ、SNSなど複数の情報源を幅広く活用する傾向がある。韓国では口コミや旅行体験談など第三者評価を重視する傾向が強く、米国では公的機関や企業による公式情報の利用が比較的多いなど、市場ごとに信頼する情報源が異なる。

年代別では、20~30代におけるSNS活用が際立つ。企業アカウントやインフルエンサー発信は、入口として有効であり、認知から比較検討への導線設計が重要となる。

特に体験や買物領域では、SNSによる認知獲得、口コミによる納得感の形成、公式サイトによる安心材料の提供を組み合わせたコミュニケーションが求められる。

予約行動・チャネル:予約は旅前で完結しない“旅中更新型”、現地接点が最後の一押しに

訪日旅行における予約行動を見ると、インバウンド旅行者は予約対象に応じてチャネルを使い分けている。また、予約は必ずしも出発前に完結するわけではなく、旅行中の発見や予定変更に応じて追加手配されるケースも少なくない。

日本国内の移動手段は旅前予約が中心であるのに対し、体験や買物ツアー・アテンドでは旅前予約と旅中予約が比較的拮抗している。旅行者は現地で得た情報や状況変化に応じて行動計画を柔軟に更新し、その都度予約・購買を判断している。

予約時期を示す棒グラフ。全項目で旅行前予約が旅行中予約を上回り、国内移動手段は旅行前65.3%で最も高い。買物・観光・体験予約も旅行前が4~5割台。

予約チャネルは、対象サービスによって主流が大きく異なる。国内移動の予約では、交通事業者の公式予約サイトの利用が中心である一方、訪日中は現地窓口の利用も増加する。企業は、事前のデジタル予約に加え、滞在中の変更や追加手配を支える現地対応力が求められている。

買物ツアー・アテンド予約では、グローバルに展開する予約サイトの利用が中心である一方、訪日中は宿泊先ホテルのコンシェルジュや百貨店のパーソナルショッパーなど、現地接点の活用が広がる。買物領域では、事前予約だけでなく、現地での提案や接客を通じて意思決定する行動も一定程度見られる。

観光ツアー・アテンド予約も特徴的である。訪日前はグローバルに展開する予約サイトの利用が中心となる一方、訪日中は日本国内の予約サービスの利用が高まる。滞在中に行動計画を柔軟に更新し、より適した体験を追加する需要が存在している。

体験予約では、日本国内の予約サイトが中心的な役割を担っている。加えて、グローバルで展開する予約サイト、専門施設への直接予約、SNS・メッセージアプリ経由の予約も一定程度利用されており、目的や商材に応じて複数のチャネルを使い分ける構造となっている。

予約時期別の予約チャネル比較グラフ。旅行前は公式予約サイト利用が多く、旅行中は現地窓口やDMOサイト利用が増加。観光・体験予約ではグローバル予約サイトの利用も高い。

国別に見ると、予約チャネルの選好には明確な違いがある。韓国では自国の予約サイトやグローバルで展開する予約サイトの利用割合が高く、日本の予約サービスへの直接流入は比較的限定的である。一方、台湾やタイでは交通事業者の公式予約サイトや日本の予約サイトの利用割合が高く、買物領域では百貨店コンシェルジュの活用も目立つ。米国ではクレジットカード付帯コンシェルジュの利用割合が高く、デジタル予約と有人サポートを組み合わせる傾向が見られる。

世帯年収別では、富裕層はホテルコンシェルジュ、クレジットカード付帯コンシェルジュ、専門施設への直接予約の利用割合がやや高い。特に体験予約では、一般層に比べて専門施設へ直接予約をする割合が高く、限定性や特別感のあるサービスとの親和性が高いことが示唆される。

今回の調査から、インバウンド旅行者の予約行動は単一チャネルへの集約ではなく、旅前・旅中、さらに予約対象ごとにチャネルを使い分ける構造であることが明らかとなった。自社サイトやOTAの最適化にとどまらず、ホテルコンシェルジュ、百貨店、現地窓口など旅行中の接点を含めた顧客導線全体を設計することが重要である。特に体験・観光分野では、訪日前の認知獲得から現地での最終予約までを一貫して支援できる体制の構築が、訪日需要のさらなる取り込みにつながるだろう。

購買行動:訪日購買は、コンビニからラグジュアリーまで広がる回遊型消費

インバウンド旅行者の購買行動を見ると、滞在中の必需品購入と、お土産・特別な買い物では、利用する店舗や消費の性質が大きく異なる。

必需品購入では、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、ドラッグストアといった生活密着型の業態が中心となる。一方で百貨店の利用も高く、インバウンド旅行者にとって百貨店は特別な買い物の場にとどまらず、食料品や日用品を含む幅広い購買接点となっていることがうかがえる。

お土産や特別な買い物では、利用業態がさらに広がる。観光地の土産物店に加え、商業施設、バラエティショップ、空港免税店など、旅行中のさまざまな接点で購買が発生している。お土産購入は特定の店舗で完結するもののではなく、移動・観光・滞在導線全体の中で分散的に生まれている。

家電量販店、ラグジュアリーブランド専門店、キャラクター専門店では、「立ち寄ったものの購入していない」と回答する割合が相対的に高い。これらの業態では、旅行者が店舗を回遊しながら比較検討や情報収集を行う傾向が強く、来店から購買までの意思決定プロセスが長いと考えられる。

利用店舗を示す棒グラフ。必需品はコンビニエンスストア(57%)、スーパー(48%)が高く、お土産購入は商業施設(49%)、観光地の土産物店(47%)が多い。

消費金額に着目すると、必需品購入では低~中額帯の支出が中心である一方、お土産や特別な買い物では高額消費の割合が高まる。特にラグジュアリー業態や家電量販店では高額購入が見られるほか、スーパーやドラッグストアなどの日常業態でも一定の高額消費が発生している。お土産需要は特定の高級業態に限定されず、まとめ買いや帰国前需要を通じて幅広い業態へ波及している。

購入金額50万円以上の割合を店舗別に示すグラフ。必需品・土産ともラグジュアリー専門店が最高で、必需品24.0%、土産・特別な買い物30.2%。家電量販店も比較的高い。

国別に見ると、タイやシンガポールでは利用業態の幅が広く、複数の店舗を回遊しながら購買する傾向が強い。一方、米国では百貨店やラグジュアリー業態の利用割合が高く、高額消費も比較的多い。市場ごとに購買の起点や回遊範囲が異なるため、ターゲット市場別の店舗導線・商品提案が必要である。

年代別では、20~30代の回遊行動が特に活発である。百貨店、バラエティショップ、家電量販店、キャラクター専門店、ラグジュアリーブランド専門店など幅広い業態を訪れており、買い物そのものを旅行体験として楽しむ傾向が見られる。一方で、富裕層と一般消費者で利用店舗に大きな差はなく、主な違いは購買金額に表れている。

インバウンド旅行者の購買行動は、旅行中のさまざまな接点で購買が発生する回遊型の構造である。また、高額消費も特定業態に集中せず、複数の業態にまたがって発生している。したがって、購買機会を特定店舗内に限定して捉えるのではなく、旅行中の行動全体の中で生まれていることを前提に施策を考えることが重要である。

商品購入時の重視点:必需品は便利に、お土産は“日本らしく”

商品購入時に重視する要素を見ると、インバウンド旅行者は購入目的に応じて判断基準を使い分けている。滞在中の必需品購入では利便性や効率性が重視される一方、お土産や特別な買い物では体験価値やブランドへの信頼、プレミアム性が重視される。

必需品購入では、コストパフォーマンスやアクセスの良さ、品揃えといった実用的な要素への関心が高い。限られた滞在時間の中で必要なものを効率的に購入したいというニーズが強く、利便性や安心して利用できる購買環境が重要な判断材料となっている。

一方、お土産や特別な買い物では重視するポイントが変化する。旅行者は単に商品を購入するのではなく、日本らしさやブランドへの信頼、プレミアムな価値を含めて購買を判断している。買い物そのものが旅行体験の一部となっており、「どこで買うか」よりも「どのような価値を感じながら購入するか」が重要になっている。

免税対応や口コミ・評価への関心の高さは、購入時の安心感と納得感が重要な要素であることを示している。前章で見られた家電量販店やラグジュアリーブランド専門店における比較検討行動からも、インバウンド旅行者は十分な情報収集を行ったうえで購買を判断していると考えられる。

日本旅行での買い物時の重視点を示すグラフ。必需品ではアクセスの良さ(24%)や低価格(25%)が重視され、お土産・特別な買い物では日本らしい体験(21%)や高価格帯商品(15%)への関心が高い。

世帯年収別では、富裕層は日本らしい体験やプレミアム性への関心が高い一方で、コストパフォーマンスも一定程度重視している。高価格であること自体ではなく、価格に見合う価値や体験を実感できることが購買判断の前提となっている。

年代別では、20~30代がSNSでの話題性やコンシェルジュサービスなど、新しい発見や体験につながる要素に高い関心を示している。

インバウンド旅行者に選ばれるためには、商品そのものの魅力に加え、その背景にあるストーリーや体験価値を分かりやすく伝え、納得感のある購買体験を提供することが重要になるだろう。

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