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2025年度「国内消費者意識・購買行動調査」

物価高の影響で節約志向が高まり、消費に対する慎重な姿勢が広がる

地政学的リスクの高まりや持続的なインフレ、原材料価格の上昇や円安を背景に、物価高が引き続き消費者の価値観や購買行動に大きな影響を与えている。デロイト トーマツでは2022年から毎年、消費者の価値観や購買の決定要因を把握するため「国内消費者意識・購買行動調査」を実施しており、2025年4月に全国20歳~ 79歳の男女5,000人を対象にWEBアンケート形式で調査を実施した。本稿ではその調査結果の一部を紹介し、消費者の志向や購買動向について考察する。

節約志向の高まりとメリハリ消費の浸透が示す慎重で堅実な消費価値観の進化

本調査では、商品カテゴリごとに消費金額の変化を質問しているが、食料品、飲料、日用品などの生活必需品において、「(1年前と比較して)消費金額が増えた/大幅に増えた」と回答した割合が、ここ数年増加傾向にある。特に食料品ではこの傾向が顕著である。その理由として6割以上が「物価高」を挙げており、この数年で最も高い割合となった。相次ぐ値上げにより必要に迫られて消費金額が増えたことがうかがえ、昨年に引き続き価格高騰が日常生活に影響を及ぼしていることが示された。一方で、「消費金額が減った/大幅に減った」と回答した割合も増加傾向にあり、その理由として「物価高」が最上位に挙げられたほか、より「節約するようになった」と回答した割合が増加する結果となった。

外食や旅行などの外向き消費においては、長期的にみて「消費金額が増えた/大幅に増えた」と回答した割合がわずかに増加傾向にあるほか、「消費金額が減った/大幅に減った」と回答した割合が減少しており、コロナ禍からの需要回復がうかがえる。しかし、昨年と比較すると外食・旅行ともに消費金額が増えた層は減少し、減った層の割合が増加するなど、コロナ禍の終息によって拡大傾向にあった外向き消費は、物価高などを背景にやや減速したと考えられる。

ギフトや衣料品などの生活必需品以外のカテゴリでは、「消費金額が減った/大幅に減った」と回答した割合が相対的に高まっている。特にギフトについては、消費の優先度が低下していると考えられる。

「今後、消費額を増やしたいもの」については、4割以上が「増やしたいものはない」と回答しているほか、「国内旅行」や「貯蓄/投資」をはじめ、ほぼすべての項目で、例年と比べて最も低い消費意向となった。中でも「増やしたいものはない」については、20代を除きその割合が増加している。また、世代が上がるほど「増やしたいものはない」と回答した割合が高くなる傾向は昨年から継続しており、シニア世代は他の年代に比べて現状維持の傾向が顕著である。

さらに、コロナ禍の終息によってこれまでシニア層を中心に「国内旅行」への消費意向が高まる傾向にあったが、今年度の調査では減少しており、近年の物価高や円安の影響による旅行コストの上昇が、旅行意欲を抑制している可能性が示唆された。

これまで20~50代において増やしたいものの最上位であった「貯蓄/投資」であるが、30~40代の働き世代を中心にすべての属性で割合が減少している。先行き不透明な将来に備える意向よりも、目の前の生活費や支出を優先せざるを得ない状況が浮き彫りとなった。

「この数年で変化した価値観」については、「節約と贅沢のメリハリをつけるようになった」層が継続して最も多く、メリハリ消費が浸透していることがうかがえる。「節約志向が高まり、より低価格なものを購入するようになった」という割合も増加しており、消費者がますます価値ある支出に意識を向けている結果が示された。一方で、「自分へのご褒美消費が増えた」という割合は減少しており、物価高や経済的不安定さが消費者の節約志向をさらに強めるとともに、贅沢消費への慎重さを促していると考えられる。

「節約と贅沢のメリハリをつけるようになった」と回答した層に対して、「節約したもの(消費を抑えたもの)」と「贅沢したもの(消費を増やしたもの)」を質問したところ、節約したものの最上位は「食料品」である一方で、贅沢したものの最上位は「国内旅行」という回答となった。日々の支出をできる限り効率化し、身近なところでたまに贅沢をするといった、より慎重かつ堅実な消費姿勢がうかがえる。これらの傾向は、今後の経済環境や物価動向によってさらに強まる可能性がある。

実店舗の支持が根強い中、EC利用は配送料も重要な要因に

商品購入時の利用チャネルでは、生鮮などの食料品は「実物を手に取って確認したい」という理由から実店舗の支持が圧倒的である。一方で、この数年で併用を含めたECの利用割合がわずかに拡大傾向にある。特に若年層や世帯年収が高いほどその傾向が強まるが、全体としてECの選択理由では「価格が安い」「ポイントを貯めている」など経済的メリットを重視する傾向が継続している。

各商品カテゴリの購買決定要因の上位はチャネルを問わず「価格」であるほか、アフターサービスにおいても「ポイントの付与」「割引など次回以降使えるクーポン」といった経済的メリットが求められている点は、昨年と変化がない。一方で、ECにおいては昨年と比較して「配送料」の重視度が上昇しているほか、購入を見合わせる要因としても「配送料」の割合が高まっており、品質や品揃えよりも総支払額の増加を避ける傾向が強まっている。

今年度の調査では、配送サービスや送料に関する考え方について新たに質問を追加した。「配送サービスを利用する際に重視していること」については、性年代や世帯年収を問わず「配送料」が最上位であり、年代が上がるほど、世帯年収が低いほどその傾向が強い。その他、年代が若いほど「支払い方法」を重視し、逆に年代が上がるほど「受け取り時間の選択肢が豊富」を重視する傾向がある。また、世帯年収が上がるほど「配送スピード」を重視する割合が高いという結果が示された。

EC利用時に「送料無料でないと購入しない」と回答した割合は、食料品や衣料品で半数程度を占めている。一方で、一定の送料を許容する層(「送料無料になる下限額があるなら購入しても構わない」「数百円程度であれば送料がかかっても構わない」など)も一定数存在しており、送料無料が当たり前という意識が薄れていることがうかがえる。

近年、2024年問題を背景とした物流コストの増加がコンシューマー企業の利益を圧迫している。配送ドライバー不足が深刻化する中、国土交通省では宅配便の基本ルールを定めた標準運送約款の見直しとして、置き配を標準サービスとする仕組みを検討している。

こうした状況下において、コンシューマー企業は配送に関するさまざまなニーズを捉え、一律の配送サービスの提供ではなく、自社の顧客ニーズに応じた配送サービスを準備する必要があるだろう。例えば、配送のスピードや受け取り時間、受け取り場所、また梱包の品質などの観点から、価格を下げられる選択肢や付加価値を加えることで送料を上げる選択肢を含め、配送サービスのバリエーションを検討することが求められる。

サステナビリティ認知は向上するも、商品価格への抵抗感が購買意欲の障壁となっている

サステナビリティという言葉の意味が「よくわからない」「聞いたことがない」と回答した層は年々減少しており、サステナビリティ自体の認知度は向上している。特に20~30代男性や40~50代女性でこの傾向が顕著である。

しかし、「興味・関心がある」と回答した層は全体で約4割弱に留まっており、日本の消費者におけるサステナビリティへの関心度は依然として高いとは言えない結果となっている。2022年と比較して「興味・関心がある」と回答した割合は3.6ポイント減少しており、これまで関心度が高かったシニア層でも意識の低下が見られる。一方で、認知度が向上した40~50代女性ではサステナビリティへの興味・関心が増加している。

商品を購入する際のサステナビリティ意識については、「サステナビリティを考えて商品を選んでいる」層が約3割に留まる。一方、化粧品や衣料品においては、若年層を中心に「サステナビリティを考えて商品を選んでいる」層が年々増加していることが特徴的である。

商品を購入する際に「サステナビリティを考えて商品を選ばない」層の理由としては、すべての商品カテゴリで「特になし」が最も多く、次いで「サステナビリティを意識した商品がわからない」「価格が高い」が挙がっている。「価格が高い」という割合は年々増加傾向にあり、「興味がない」といった理由よりも、価格が障壁となっている。

具体的な価格許容度については、食料品・衣料品において約6割が「少しでも高ければ購入しない」と回答しており、昨年よりも増加している。特に若年層や働き世代で「少しでも高ければ購入・利用しない」という割合が高く、価格上昇に対する抵抗感が強い傾向が見られる。一方で、サステナビリティへの意識が高いとされる60~70代女性でも、両商品カテゴリで約半数が「少しでも高ければ購入しない」と回答しており、昨年と比較して価格許容度が低下している。昨今の物価高を背景に、消費者がより価格に敏感になっていることがうかがえる。

コンシューマー企業においては、サステナブル商品やサービスの価値、自社の取り組み、消費者にとっての意義や魅力をわかりやすく伝えることが、選択につながる鍵となる。

今年度の調査では、継続する円安や物価高によって、これまで以上に支出を慎重に見定める消費者の姿が鮮明となった。コンシューマー企業は益々、価格に見合う、もしくは消費者の想定を超える価値訴求が求められる。

調査概要

調査日:2025年4月下旬

調査方法:インターネットを利用したパネル調査(47都道府県)

※統計局2025年4月発行の人口データを元にウエイトバック値を反映

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