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2026年度「国内消費者意識・購買行動調査」

物価高の長期化でメリハリ消費が定着、AIが購買行動に新たな変化をもたらす

物価高の長期化、実質購買力への下押し圧力、将来不安の高まりを背景に、日本の消費者は一段と選択的な支出行動へ移行している。同時に、生成AIの普及は、情報収集、比較検討、購買意思決定のプロセスに新たな接点を生み出しつつある。デロイト トーマツでは消費者の価値観、支出意向、購買意思決定の変化を継続的に把握するため、2022年から毎年「国内消費者意識・購買行動調査」を実施している。2026年4月には、全国20歳~79歳までの男女5,000人を対象に、WEBアンケート形式で調査を実施した。本稿では、結果の一部を紹介し、同調査の結果からみえる消費者の志向や購買動向と、企業が今後の需要創出や顧客接点設計において捉えるべき論点を考察する。

節約一辺倒から価値選別型消費へ

「この数年で変化した価値観」では、「節約と贅沢のメリハリをつけるようになった」が最も高く、消費者の間でメリハリ消費が定着していることが確認された。また、「コストパフォーマンスを重視するようになった」や、「節約志向が高まり、より低価格なものを購入するようになった」は前年からわずかに低下しており、価格重視の傾向は継続しつつも、単純な低価格志向の強まりには一定の落ち着きがみられる。

その一方で、「自分へのご褒美消費が増えた」は前年からわずかに上昇しており、節約を意識しつつも、自身の満足度や生活の豊かさにつながる支出には前向きに支出する傾向が示された。

近年、節約・コスパ重視が強く、高くても良い物を選ぶ志向もある。

年代別に異なる将来不安と消費マインド

今年度調査では、自身の「財務状況」や「消費意向」の見通しについて、新たに質問した。いずれも、現在より半年後、さらに1年後になるほど慎重な見方が強まっており、消費者の先行きに対する警戒感が広がっていることが確認された。

財務状況についてみると、20・30代では比較的楽観的な見方が維持されている一方、40・50代では将来の家計に対する不安が相対的に高い。特に50代では、1年後の財務状況を悲観的にみる割合が50.4%と半数を超えており、40代でも45.8%に達している。働き盛り世代を中心に、複合的な家計負担が影響している可能性がある。

消費意向については、60・70代で低迷を見込む割合が高く、1年後にはそれぞれ48.6%、53.7%に達している。また、40・50代でも同様の傾向があり、物価上昇や経済環境への不安を背景に、年齢が高い層ほど消費に慎重な姿勢を強めている。

将来への警戒感は幅広い年代で共通しているものの、その背景と消費行動への影響は年代ごとに違いがみられ、現役世代では家計負担や将来所得への不安が、高齢層では生活防衛的な支出抑制が消費マインドに影響している可能性がある。

財務状況と消費意欲の先行きは、年代別に差があり、全体に慎重姿勢が目立つ。

物価高が促す支出の選択と集中

商品カテゴリごとの消費金額の変化をみると、物価高の長期化は、単なる支出抑制ではなく、生活必需品と嗜好性カテゴリの間で支出配分を見直す動きとして表れている。

食料品では「消費金額が増えた/大幅に増えた」と回答した割合が引き続き2割を超え、他カテゴリと比較して高い水準となった。一方で、「消費金額が減った/大幅に減った」と回答した割合も前年から増加しており、支出増加と支出抑制の二極化が進んでいる。消費金額の増減理由では、ともに「物価高」が最上位となっており、価格上昇が家計に大きな影響を及ぼしている。

一方、外食や旅行では、前年までみられた回復傾向がやや鈍化した。「物価高」に加え、「贅沢機会が減った」や「節約」が消費減少の主な理由として挙げられており、選択的に支出を抑える姿勢がみられる。

また、衣料品やラグジュアリー商品では「消費金額が減った/大幅に減った」と回答した割合がそれぞれ3割を超え、特にラグジュアリー商品では約4割に達した。減少理由としては「物価高」に加え、「贅沢機会が減った」や「物欲や興味関心が減った」ことが上位となっており、生活必需品の負担増を背景に、嗜好性の高い商品から支出を見直す動きが示された。

各商品カテゴリで前年より支出が減る人が増え、節約傾向が強まっている。

慎重な消費意識のなかで高まる「価値ある支出」
「ご褒美」「体験」「生活の質向上」に向かう消費意欲

「今後、消費額を増やしたいもの」については、「増やしたいものはない」が43%と引き続き最も高く、将来の支出拡大に対する慎重な姿勢は根強い。一方で、前年の47%からは低下しており、消費意欲の悪化傾向にはやや落ち着きがみられる。

増やしたい項目では、「国内旅行」が23%で最も高く、次いで「貯蓄/投資」、「食料品(生鮮など)」が続いた。ただ、「国内旅行」への消費意向はコロナ禍終息後の回復局面で高い水準を維持していたものの、2024年以降は伸び悩んでおり、旅行費用の上昇が消費意欲を抑制している可能性がある。一方、「食料品」は前年から上昇し、調査開始以降で最も高い割合となった。物価高が続く中で、節約志向が根強い一方、日々の生活の質に直結する支出への関心は高まっていることがうかがえる。

年代別にみると、「増やしたいものはない」と回答した割合は20代で34%、30代で40%と比較的低く、若年層ほど消費に対して前向きな姿勢がみられる。

特に20代では、「国内旅行」や「貯蓄/投資」の意向が低下する一方、「食料品」への消費意向が高まっている。将来への備えや非日常的な体験への支出よりも、日々の暮らしに直結する身近な消費を充実させたいという意識が高まっている可能性がある。

消費を増やしたい人は少なく、今後消費をふやしたいものはないという回答が最多。次いで国内旅行や貯蓄。

今年度調査では、「今後消費額を増やしたいもの」の「理由」について新たに質問している。消費額を増やしたい理由をみると、「衣料品」「化粧品」「外食」といった嗜好性の高いカテゴリでは、「自分へのご褒美」が最も多く挙げられた。加えて、「自分へのご褒美」は嗜好品だけでなく、「食料品」「飲料(アルコール含む)」においても上位の理由となっている。特別な贅沢だけでなく、日常生活の質を高めるための支出にもご褒美需要が広がっている。

また、「国内旅行」や「海外旅行」、「イベント・コンサート」では「思い出に残る体験」や「趣味・余暇の充実」が上位となっている。

これらの結果は、消費者が一律に支出を削減しているのではなく、自身の満足度、幸福感、生活の質、体験を通じた充足感や自己実現につながる支出を選別していることを示している。

企業にとっては、機能・価格・体験を組み合わせた価値提案の設計が、今後の需要創出における重要な論点となる。

消費を増やしたい理由は、自分へのご褒美や生活の質向上が中心。

AIは検索ツールから相談相手へ 20代の4人に1人がAIと対話

今年度調査で新たに質問した、AIの利用状況では、「商品やサービスの情報収集」、「自分に合った商品・サービスの提案」、「日常生活の疑問解決」など、いずれの用途においても若年層ほど利用率が高い傾向がみられた。特に20代では、「日常生活の中での疑問点の解決」にAIを利用している割合が40.2%、「商品やサービスの情報収集」が35.0%に達しており、AIが生活に身近なツールとして浸透しているほか、「日常生活の中での疑問点の解決」については、60・70代の約4人に1人がAIを利用していると回答しており、シニア層への浸透もうかがえる。

中でも特徴的なのは、「日常の会話・相談相手」としての利用である。全体では利用率が10.4%にとどまる一方、20代では24.1%と約4人に1人が利用しており、他の年代を大きく上回った。若年層を中心にAIは、従来の検索や情報収集ツールにとどまらず、対話を通じて意思決定や日常生活を支援する存在へと役割を広げつつある。

一方で、購買行動に関するAI活用には課題もみえる。「商品やサービスの情報収集」や、「自分に合った商品・サービスの検索・提案」について利用しない理由をみると、「自分には必要ではないから」が最も高いものの、「信用できないから」が上位理由として挙げられている。特に「信用できないから」は全世代で上位に入っている。

AIは日常の疑問解決での利用が最多で、若年層ほど活用が進んでいる。

購買の主導権を維持しながらAIに支援を期待する消費者

今年度調査では、商品購入時の選択と意思決定について新たに質問している。その結果、すべての商品カテゴリにおいて「自分で選びたい × 自分の直感で購入を決める」が最も高く、購買の主導権を自ら持ちたいと考える消費者が多数派であることが示された。

また、「自分で選びたい × 他人の提案やAIのお勧めを参考にして購入を決める」も一定割合存在し、特に家電(27.5%)や旅行(21.7%)、化粧品(17.9%)ではその傾向が強くみられた。AIには、最終判断を委ねる存在ではなく、商品検索や比較検討など意思決定を支援する存在としての役割が期待されている。特に20代はAIや他者の提案を受け入れる割合が相対的に高く、ラグジュアリー商品では28.2%、化粧品では23.1%、家電では22.7%が「自分で選びたくない × 他人の提案やAIのお勧めを参考にして購入を決める」と回答しており、AIを意思決定のパートナーとして受け入れる土壌が形成されつつある。

一方で、AIに購入そのものを任せたいと考える層は、現時点では限定的である。「自分で選びたくない × 他人の提案やAIのお勧めを参考にして購入を決める」と回答した層のうち、「AIの提案を参考にして購入も任せたい」と回答した割合は、最も高いラグジュアリー商品でも2.7%、化粧品で2.3%、旅行で1.7%、家電で1.6%にとどまった。AIによるレコメンドや比較検討への期待はみられるものの、購買の最終判断や実行まで委ねる段階には至っておらず、現時点では「購買の代行者」よりも「アドバイザー」としての役割が求められていると考えられる。

今後エージェンティック・コマースの普及が予想される中で、企業がAIを顧客接点や購買支援に活用するうえでは、情報の信頼性、提案根拠の透明性、消費者による最終コントロールの確保を備えることが重要となるだろう。

商品購入は自分で選びたい人が多く、若年層ほど他者やAIも参考にする。

調査概要

調査日:2026年4月下旬
調査方法:インターネットを利用したパネル調査(47都道府県)

※統計局2026年4月発行の人口データを元にウエイトバック値を反映 

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