デロイト トーマツでは、Z世代と他の世代のライフスタイルや消費志向、購買行動の違いを把握することを目的に、2025年4月に国内15歳~79歳の男女を対象にWEBアンケート「国内Z世代意識・購買行動調査」を実施した。本稿ではその調査結果の一部を紹介し、考察する。
本調査では「消費意向・ライフスタイル」「購買行動」「サステナビリティ」に関する調査を実施しており、以下の4つの世代に分類した分析を行った。
【本調査における世代の定義】
Z世代:15~29歳
ミレニアル世代:30~44歳
X世代:45~59歳
ベビーブーマー世代:60~79歳
Z世代は、他の世代に比べて節約や貯蓄を重視する一方、昨年に引き続き「趣味」「娯楽」「ご褒美」など自らの欲求や満足感を重視する傾向にある。また、安いものやコストパフォーマンスを求める一方で、高品質な商品に対する関心も非常に強い。しかし、価格が高いものは高品質であるという意識が根強く、商品選択の際に価格が品質の指標として重要視される傾向が継続して高い。
デジタルネイティブであるZ世代はデジタルデバイスへの依存度が高く、商品購入においてはオンライン上の情報やSNSの口コミ、信頼するインフルエンサーの意見が購買行動を左右する重要な要素となっている。
さらに、Z世代は日常の中で一定の効率を求めており、冷凍食品やReady to Cook型商品、コンビニエンスストアの商品などを積極的に活用する食生活スタイルを持つ。また、他の世代に比べてEC利用割合も高いほか、QRコード決済などデジタル決済を好む傾向が顕著である。
Z世代の中でも若年層では、サステナビリティへの意識が非常に高い傾向にある。特に企業の環境責任を重視しており、昨年に比べ具体的な行動に基づく取り組みの明確さを求める姿勢が一層強まっている。彼らは、単なる「環境に配慮した」という表現ではなく、透明性のある情報や具体的な取り組み内容を重視しており、企業が掲げる環境保護や社会的責任の取り組みが、Z世代の購買意識やブランド選択に強く影響を与えていることが示された。
【この数年で変化した価値観】
この数年で変化した価値観については、「節約と贅沢のメリハリをつけるようになった」と回答した層が昨年に引き続き最も多く、Z世代が消費においてバランスを重視していることがうかがえる。「コストパフォーマンスを重視するようになった」「節約志向が高まり、より低価格なものを購入・予約するようになった」という価値観も、昨年よりも増加しており、他の世代と同様に、Z世代が経済的意識への高まりと、実用性や価格に見合った価値を重視している傾向が示された。
一方、他の世代に比べて「ご褒美消費」への意欲が高いことも、Z世代の特徴的な価値観である。Z世代は節約志向を持ちながらも、自分自身への投資や満足感を得るための消費を大切にしている様子がうかがえる。
【消費意向】
Z世代における「今後消費を増やしたいもの」として、他の世代と比べ「推し活」が高い割合を占めていることが特徴であり、ミレニアル世代以降では「推し活」は上位には入っていない。Z世代では、各年代で昨年よりも割合が増加した。このような趣味や娯楽に対する消費意識は、昨年に引き続き若年層に集中している傾向が示された。
Z世代を含むすべての世代で「貯蓄・投資」への関心は高いことは継続しているが、各世代で昨年よりも割合は減少している。
中でも、ミレニアル世代においては、「国内旅行」「外食」「食料品」といった項目以上に「貯蓄・投資」が今後の消費意向という点で高い割合を占めていることは継続しており、日常生活における消費以上に、生活基盤の安定や将来の資産形成への関心が高い傾向が続いている。
【食生活】
Z世代は「自炊」の頻度が他の世代と比較して低いものの、6割以上が週に3日以上自炊を行っており、若年層でも自炊が一定の習慣として定着している。また、ミールキットなどの「Ready to Cook」や「フードデリバリー」の利用も他の世代より高く、Z世代の中でも特に20代前半の利用率が高くなっている。「冷凍食品」を利用する割合は、他の世代と大きな差はないが、Z世代の中でも10代後半では4割以上が週3日以上利用すると回答している。
Z世代の自炊時の食品購入の場は「スーパーマーケット」が主であるが、他の世代に比べて「コンビニエンスストア」の利用割合が高い傾向にある。手軽さや利便性、少量ニーズに対応できる手軽さが支持され、重要な購買チャネルとなっている。
Z世代は、食材・食品の購入においても、効率性や利便性を重視した選択をしていることがうかがえる結果となった。
【情報収集】
商品・サービス購入・予約時に参考にしている情報源については、商品カテゴリや世代を問わず「テレビ番組・CM」が上位に挙げられており、媒体としてテレビが幅広い世代に影響力を持っていることが示された。
Z世代は「テレビ番組・CM」とともに、「SNS」が主要な情報収集手段となっており、他の世代以上にSNS・口コミ等のオンライン上の他者評価も重要な情報と捉えていることがうかがえる。特に「化粧品」「旅行」では、情報収集の最上位が「SNS」であるほか、「ラグジュアリー」「旅行」ではZ世代のすべての年代で昨年よりも割合が増加しており、Z世代の情報収集におけるSNSの存在感が増している。
一方、ミレニアル世代やX世代は「店頭のディスプレイ」を重要な情報収集媒体として捉え、特に女性はECでの購入であっても「店頭のディスプレイ」から情報収集をしていると回答しており、商品を直接目で見て確かめることや実物に触れる体験を重視している傾向が高い。また、ベビーブーマー世代では「店頭のディスプレイ」のほか、生活必需品において「折込チラシ」が上位となっており、折込チラシを通じて地域密着型の情報を得ることが重要視され、紙媒体が根強い存在感を維持していることがうかがえる。
本調査結果からは、世代ごとの情報収集手段の違いが顕著に示されており、コンシューマー企業は各世代のニーズに応じて、最適な情報発信方法を戦略的に活用することが求められる。
【購買チャネル】
購買チャネルにおいて、Z世代は店舗との併用含めたEC利用率が高く、商品カテゴリごとに全世代平均を上回る傾向にある。「食料品(生鮮など)」においては、特に10代後半男性や20代前半女性では併用含めたEC利用率が2割を超えるなど、オンラインを活用する傾向が他の世代よりも高い。「衣料品」や「ラグジュアリー」では、Z世代の4割以上が併用含めてECを利用しており、高価格帯の商品においてもオンラインでの購入を積極的に行っていることがうかがえる。
EC利用率は、全体的に各商品カテゴリで昨年に比べて上昇しているが、特にZ世代の伸びが大きく、「食料品(生鮮など)」では4.8pt増加した。
Z世代の中でも特に若年層において、サステナビリティへの意識が非常に高い傾向にある。ただ昨年と比べると、サステナビリティに関して「興味・関心がある」と回答した層は全体的に減少しており、他の世代と比べて興味関心が高いZ世代やベビーブーマー世代でもサステナビリティに関する意識の低下がうかがえる結果となった。
世代別に細分化してみると、昨年に引き続き10代後半~20代前半男性のサステナビリティへの興味関心が高く、今年度調査ではベビーブーマー世代女性を上回った。
また、10代後半~20代前半男性は、商品購入時のサステナビリティ意識も高く、「日用品」や「化粧品」では半数、「食料品・飲料」では約4割が商品購入時に「サステナビリティに準拠した商品を選んでいる」と回答している。ベビーブーマー世代女性の回答割合と10pt以上差があり、若年男性のサステナビリティに対する実践的な意識の高さと消費への積極性がうかがえる。
Z世代の中でも、年代や性別によって意識の高低やテーマが異なりZ世代をひとくくりにして捉えるのではなく、属性ごとの多様な価値観や意識の違いを考慮することが重要である。
Z世代はサステナブルな取り組みを推進している企業を応援したいと考える割合がベビーブーマー世代に次いで高い一方で、商品購入やサービス利用まで至らない層が4割を超える。Z世代は他の世代に比べて積極的に行動に移す割合が高い一方で、応援の意識を持ちながらも行動に結びつかない層も一定数存在することがわかる。
企業に対して、「応援したいと思わない」「興味がない」と回答した理由として、Z世代男性では「役に立つとは思わない」、女性では「情報開示されていない」「理解できない」という理由が上位である。具体的な情報提示や消費者への理解促進が不足している可能性が示された。
また、企業のサステナビリティに関する取り組みを評価する際に、Z世代では昨年に引き続き「テレビCM」や「食品ロス低減に向けた値下げ」が上位項目である。しかし、「環境負荷低減を目的とした認証ラベル」や「環境負荷低減」などの商品パッケージに注目する割合が増加しており、Z世代がより具体的な取り組みや実態に基づいた情報を重視する方向に変化していることがうかがえる結果となった。
サステナビリティに関して、Z世代では、若年層ほど行動に移す割合が高いものの、全体的な関心度が減少していることが課題である。コンシューマー企業においては、サステナビリティの重要性を若年層に向けて分かりやすく伝えるとともに、具体的な行動や選択につながる、透明性のある明確な情報提供を行うことが求められる。
調査概要
調査日:2025年4月下旬
調査方法:インターネットを利用したパネル調査(47都道府県)
※統計局2025年4月発行の人口データを元にウエイトバック値を反映