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2025年度「国内富裕層意識・購買行動調査」

国内富裕層の価値観と消費意識

デロイト トーマツでは、昨年に引き続き国内の高所得者のライフスタイルや消費行動などを把握するため、2025年5月に世帯年収2,000万円以上の全国20歳~79歳の男女1,835人を対象に、WEBアンケート「国内富裕層意識・購買行動調査」を実施した。本稿ではその調査結果の一部を紹介するとともに、同時期に実施した「国内消費者意識・購買行動調査」の結果と比較し、消費者の志向や購買動向について考察する。以下では比較のため、国内消費者を「一般消費者」、世帯年収2,000万円以上の消費者を「富裕層」と称する。

「体験」「品質」「社会性」を重視し、堅実さと積極さが共存する価値観

本調査結果において富裕層は、価格やコストパフォーマンスを最優先するのではなく、よりメリハリのある消費や、環境・地域への配慮、生活の質や効率を重視していることが明らかとなった。豊かさや社会的意義、個人の満足度を追求する価値観がうかがえる。

「ライフスタイル全般におけるこの数年で変化した価値観」では、「節約と贅沢のメリハリをつけるようになった」と回答した割合が、富裕層・一般消費者ともに3割を超え、最も意識が高まっているおり、富裕層の方がよりその傾向が強い。一般消費者では、「コストパフォーマンスを重視するようになった」や「節約志向が高まり、より低価格なものを購入・予約するようになった」割合が高いが、富裕層は「より環境に良い商品の購入や行動を心がけるようになった」や、「自分が住んでいるまちや地元の商品やサービスに興味を向けるようになった」といった割合も高い。

富裕層は消費において必要な場面では節約しつつも、品質や社会的価値を感じる体験や商品には積極的に消費する姿勢が浮かび上がっている。

今後の消費意向においても、両者の間には傾向の違いが見られる。

まず、「今後消費を増やしたいものはない」と回答した割合は、一般消費者が約半数に上るのに対し、富裕層では3割に留まる。また、「今後消費を減らしたいものはない」と回答した割合も、一般消費者が約半数であるのに対し、富裕層は6割を超える。この意向は昨年よりも増加しており、特に20代が押し上げている。また、年代が高いほど「減らしたいものはない」割合が高く、60~70代で7割を超え、半数以下の一般消費者と顕著に差があり、消費意向が高いことがうかがえる。

具体的な消費項目では、富裕層は「旅行」や「外食」といった体験に関わる支出を増やしたいと考える割合が、一般消費者と比べて高い傾向にある。特に「海外旅行」については、一般消費者との差が顕著である。一方で、「食料品(生鮮・加工食品)」や「貯蓄・投資」を増やしたいとする割合は一般消費者とほぼ同水準であり、日常的な消費や将来への備えについては、富裕層と一般消費者の間に大きな差はなく、共通の意識がみられる。

また、「貯蓄・投資」を増やしたいとする意向は、昨年に比べて全体でわずかに減少(-2.8ポイント)したが、20代だけは増加(+8.7ポイント)しており、若年層における資産形成への関心が高まっていることがうかがえる。

堅実で慎重な消費姿勢が続く一般消費者に比べ、富裕層は旅行や外食、ラグジュアリー品など、「豊かさ」や「体験」に関連する消費を拡大しようとする意向が強いことが示された。

購買チャネルはオンラインの利用が進むが、パーソナライズ提案は店員からの提案の満足度が高い

商品購入時の利用チャネルについては、富裕層においても店舗中心の購買傾向であるが、カテゴリによってその割合や傾向に違いが見られる。

生活必需品については、富裕層の方が「併用を含めたEC」を利用する割合が高く、購買チャネルの多様化が進んでいる。特にアルコールや日用品では、富裕層の約3割が併用を含めてECを利用しており、特にシニア女性では一般消費者との間に顕著な差が見られる。ECの利用理由は、一般消費者同様に「ポイントを貯めている」「貯まったポイントで商品が買える」といった経済的要因が主である。

また、店舗を選択する理由としては、一般消費者は「実物を手に取って確認したい」であるが、富裕層は「品揃えがよい」を挙げており、より店舗に多様な商品やブランドを求めていると考えられる。

ラグジュアリー品に関しては、生活必需品とは逆に、富裕層の店舗での購入割合が76.2%と一般消費者よりも高く、昨年よりも4.0ポイント増加した。店舗利用の理由は「実物を手に取って確認したい」という回答が最も多く、年齢が上がるほどその傾向は強まる。一方、「品揃えがよい」ことも理由の上位となっており、若年層ほど高い傾向にある。ラグジュアリー品においては、店舗での丁寧な接客や体験が購買において重要な役割を果たしていることがうかがえる。

コンシューマー業界では、パーソナライズマーケティングの活用が進んでいるが、本調査では「購入履歴などを元にした商品の提案」に関する利用実態と提案内容の合致について質問している。

利用実態を見ると、富裕層は一般消費者に比べて、各チャネルにおける利用割合が高く、今後も利用したいと考える割合が高い傾向が見られる。特に「店員からの商品提案」では、富裕層の約4割がポジティブな意識を持っており、デジタル提案よりも好まれている。富裕層が、対面でのパーソナルなサービスや提案に対して高い価値を感じていることが示された。

一方、「インターネット」や「SNS」上に表示される広告については、富裕層・一般消費者ともに「興味がない」と回答する割合が高いものの、富裕層の方が「利用しているが今後は利用したくない」「今後も利用するつもりはない」といった消極的な意見もやや多い。インターネット広告やSNS広告など、画一的な提案については興味を示さない層も多く、チャネルによって受け入れ度合いに差がある。

「提案内容が好みに合っているか」についての調査結果を見ると、富裕層は一般消費者に比べて各チャネルで「自分の好みに合っている」と感じている割合が高い。特に「店員からの商品提案」では、富裕層の約9割が「好みに合っている」と回答しており、パーソナライズされた提案の精度に一定の満足感を持っていることがうかがえる。富裕層は商品やサービス選択においてパーソナライゼーションを重視する傾向が強いことが示された。

旅行において重視するものは食文化、宿泊施設、伝統

「旅行」に関して消費意欲が高い富裕層だが、「旅行先で期待するもの・大事にしたいこと」においては、世代ごとに重視するポイントや価値観に違いが見られる。

「旅行中の飲食や食文化」への関心が全世代を通じて最も高く、特に50代以上では6割を超える。また、「宿泊施設」へのこだわりも年代が上がるほど強くなり、特に60代では44%が高級施設やランクの高い部屋を重視すると回答しており、快適さやラグジュアリーな体験への志向が顕著である。

「旅行中の買い物」については、若年層が他の年代に比べてやや高い関心を示しているが、全体としては他の項目に比べ重視する割合は低めである。一方、「遺産・伝統建築や史跡の鑑賞」「自然散策」「芸術鑑賞」といった文化的・知的な体験に関しては、特に70代で高い傾向が見られ、年代が上がるほど体験や鑑賞など「質」を重視する姿勢が強まることが示された。

富裕層は旅行に対して「食」「宿泊」「移動」といった基本的な快適さやラグジュアリー体験への消費意識が高いだけでなく、年代によっても旅行先で求めるものが多様化していることが明らかとなった。

調査概要

  • 調査日:2025年5月上旬
  • 調査方法:インターネットを利用したパネル調査(47都道府県)
    統計局2025年4月発行の人口データを元にウエイトバック値を反映

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