※ デロイト トーマツが寄稿した 「日経ヴェリタス 電子版」 2026年4月2日記事を転載しております。
元記事はこちらよりご覧いただけます。
2025年12⽉19⽇、⾃⺠党と⽇本維新の会は令和8年度税制改正⼤綱(以下「⼤綱」)をまとめました。⼤綱とは、毎年12⽉ごろに与党が取りまとめる税制改正の基本⽅針を⽰した⽂書です。今回は、その中から読者にとって重要と思われる項⽬を解説します。
1:ふるさと納税の特例控除限度額の⾒直し
2:特定暗号資産の譲渡等の分離課税化
3:少額投資⾮課税制度(NISA)のつみたて投資枠の対象年齢拡充
4:貸付⽤不動産の評価⽅法の⾒直し
5:極めて⾼い⽔準の所得に対する負担の適正化措置(超富裕層課税/ミニマムタックス課税)の強化
個⼈住⺠税におけるふるさと納税の特例控除限度額について、これまで⾼所得者に有利と指摘されていたことへの対応として次の⾒直しを⾏います。28年分以後の個⼈住⺠税に適⽤されますが、住⺠税は前年の所得に基づき計算されるため、27年以後のふるさと納税から改正後の控除限度額を意識する必要があります。
【図表1】 ふるさと納税の特例控除限度額に上限が設定される
現⾏では、暗号資産の譲渡等による所得は総合課税の対象となるため、株式の譲渡等と比べて税負担が重くなることが多く、⾒直しを検討していました。
本改正により、暗号資産取引業者に対して⾦融商品取引業者登録簿に登録した暗号資産(特定暗号資産)の譲渡等をした場合、譲渡所得は他の所得と分離して20%(所得税15%、住⺠税5%)の税率で課税されます。また、特定暗号資産の譲渡損失については、3年間の繰越控除制度を創設します。
現⾏では18歳以上(1⽉1⽇現在)が⼝座開設可能となっていますが、つみたて投資枠の対象年齢が0歳まで拡充されます。⼝座保有者である⼦が0〜 17歳の間、年間投資枠は60万円、⾮課税保有限度額は600万円で、⼦の年齢が12歳以降、⼦の同意を得た場合のみ、親権者などによる払い出しが可能となります。
貸付⽤不動産の市場価格と相続税評価額との乖離(かいり)を利⽤して評価額を圧縮する租税回避への対応として、次の⾒直しを⾏います。27年1⽉ 1⽇以後に相続などにより取得する財産の評価に適⽤されます。
【図表2】 課税時期における通常の取引価格で評価
(*1) 課税上の弊害がない限り、被相続人等が取得等をした貸付用不動産に係る取得価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額の100分の80に相当する金額によって評価することが可能です。
(*2) 課税上の弊害がない限り、出資者等の求めに応じて事業者等が示した適正な処分価格・買取価格等、事業者等が把握している適正な売買実例価額又は定期報告書等に記載された不動産の価格等を参酌して求めた金額によって評価することが可能です。ただし、これらに該当するものがないと認められる場合には、上記(イ)に準じて評価(取得時期や評価の安全性を考慮)されます。
(*3) 上記(イ)の改正は、当該改正が通達に定められる日までに、被相続人等がその所有する土地(同日の5年前から所有しているものに限る。)に新築をした家屋(同日において建築中のものを含む。)には適用されません。
【図表3】 施工日前に通達が制定されることを前提としたイメージ
所得税は、基本的に総合課税による超過累進税率(最⼤45%)が適⽤されるため、本来は⾼所得者ほど所得税の負担率が高くなります。しかし、株式の譲渡所得などは分離課税で⼀律の税率(15%)が適⽤されます。⾼所得者層ほど所得に占める株式の譲渡所得などの割合が高いことから、⾼所得者層ほど負担率が低下するという逆転現象が生じていました。いわゆる「1億円の壁」問題です。
このような状況を踏まえ、25年分の所得税から「極めて高い⽔準の所得に対する負担の適正化措置(いわゆる「超富裕層課税」または「ミニマムタックス課税」)」を導⼊しました。27年分以後の所得税について、当該措置を強化します。
当該措置では、各種所得を合算した所得⾦額(基準所得⾦額)から特別控除額を控除した⾦額に税率を乗じた⾦額が、通常の⽅法で計算した場合の⾦額(基準所得税額)を超過した場合に、その超過した差額を追加的に申告納税することになります。
本改正により、特別控除額が3.3億円から1.65億円に半減し、税率が22.5%から30.0%に7.5ポイント引き上げられます。例えば、その年の所得が株式などの譲渡所得(分離課税15%)のみの場合、現⾏では所得⾦額10億円が当該措置の適⽤を受ける⽬安でしたが、改正後は3.3億円が⽬安になり、適⽤対象者の範囲が拡⼤されます。
【図表4】 超富裕層課税の適用対象者が拡大
本改正の影響を受ける可能性がある取引としては、株式や不動産の譲渡、上場株式などの配当、海外移住や⾮居住者への贈与・相続などが考えられます。これらの取引で3.3億円を超えるような所得が⾒込まれる場合には、早期に事前の検討を行うことを推奨します。
【図表5】 超富裕層課税の適用対象者が拡大
梅村 芳志 (うめむら よしゆき)
デロイト トーマツ税理士法人
ファミリーコンサルティングパートナー
税理士。2010年に日系大手税理士法人へ入社。事業承継を中心とした業務に従事する。同法人の地区事務所長に就任し、事務所立ち上げから規模拡大を指揮した実績を有する。2020年5月にデロイト トーマツ税理士法人へ入社。2024年6月にデロイト トーマツ ファミリーオフィスサービス合同会社執行役へ就任。
塩⼭ 侑史(しおやま ゆうじ)
デロイト トーマツ税理士法人
ファミリーコンサルティング
マネジャー
⾦融機関、他の税理⼠法⼈を経て、2023年にデロイト トーマツ税理⼠法⼈へ⼊社。⼊社以来、主に⾮上場会社に対する事業承継・組織再編コンサルティング、国際資産税コンサルティング、公益財団等の活⽤⽀援、税務申告書作成業務に従事。