2013年の税制改正で、「社会保障と税の一体改革」の一環として相続税がかかる範囲が広がり、相続税の基礎控除額は「5,000万円+1,000万円x法定相続人の数」から、「3,000万円+600万円x法定相続人の数」に改正されました。その結果、財務省のデータによると、当時相続税がかかるのは亡くなった方の4%程度に過ぎなかったものが、23年度は9.9%程度に増えています。
そのため、相続対策として生前贈与を活用することがますます必要となっています。23年度の税制改正で生前贈与に関する贈与税が大きく見直され、資産を次の世代に円滑に承継していくために今何ができるのかを知っておくことが大切です。
生前贈与を行った場合、贈与により財産を取得した個人に対して贈与税が課されます。贈与税の計算方法は「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」の2種類あり、財産を取得した個人(受贈者)が贈与をした個人(贈与者)ごとにそれぞれの計算方法を選択することができます。
暦年課税制度は1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産が110万円を超える場合に贈与税が課される制度です。
一方、相続時精算課税制度は、その贈与者からの贈与について、一生涯で 2,500万円までの贈与が非課税となり、2,500万円を超える部分の金額についてはいったん20%の贈与税を支払う制度です。ただし、その贈与者の相続時に、この制度により贈与を受けた財産を含めて相続税を算出し、事前に支払った贈与税を差し引いて最終的な相続税を計算することとなります。
なお、相続時精算課税制度については、23年度の税制改正により、毎年110万円を控除してから2,500万円(前年以前に控除している場合には残額)を控除して贈与税が計算されることとなりました。
暦年課税制度と相続時精算課税制度の主な違いは図表1の通りです。
資産を段階的に移転することで、相続時の負担を軽減することができます。どちらを活用すればより税金を抑えることができるかは、その贈与者の年齢と贈与するモノの価値にもよりますが、23年度の税制改正で「有 利・不利の判定」がより複雑になっています。
以前は、暦年課税制度で贈与した財産のうち、相続財産に加算されるものは、相続開始前3年間とされていました。しかし、23年度の税制改正で、相続財産に加算される期間が、相続開始前7年以内に改正され、24年1月1日以後に贈与により取得する財産にかかる相続税について適用されることとなりました(上表における相続時対応における期間)。その他に相続時精算課税制度において、相続時に合算する相続財産についての基礎控除枠が新たに設定されました。
改正による影響イメージは図表2の通りです。
上述の通り、生前贈与を行ったとしても、死亡前7年内の贈与に関しては相続財産に加算し相続税の計算が行われます。以前よりも計画的に生前贈与を活用する必要が生じていますが、特定の要件を満たす贈与であれば、贈与税がかからずに資金を子供や孫に贈与することも可能です。
夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるための贈与で、通常必要と認められるものは非課税となります。ただ、これらは生活費として必要な都度直接支払われたもののみが非課税となるため、一括して多額の金額を支払う場合には、贈与税の課税対象となります。結婚や子育て、子供の入学などは多くの資金が必要となります。
その資金を祖父母などが賄うケースは一般的にもよくありますが、これらの行為も基本的には贈与に該当するため、お金をもらった方は贈与税を計算する必要があります。
ただし、このような行為に関して、一定の要件を満たす場合には、それぞれ非課税の枠が設定されています。これらの制度を活用することによって、税金をかけずに贈与を行うことができます。
なお、上記の制度はいずれも金融機関等での手続きや、それぞれ申告書の提出が必要になるなど、適用する場合には様々な手続きが必要になります。その点はご留意ください。
上述の内容を考慮してせっかく生前贈与をしたとしても、実際に贈与したと認められない場合もあります。
贈与とは、あげる側があげる、もらう側がもらうという意思表示をし、意思の合致がある場合に初めて贈与があったと成立します。そのため、家族名義の預金について、名義変更して贈与した気になったとしても、もらった側が管理していない場合には、贈与したと認められないことがよくあります。
そういったことが起きないように贈与契約書を作成し、お互いに意思があることを示しておくことも、生前贈与を活用するには重要な対策となります。
生前贈与の活用は相続対策として有効な手段である一方、贈与税や各制度の適用条件・手続きなど知らないと、かえって多く税金を支払うこととなります。また、個々の状況に応じて対策も変わってきます。まずはご自身の保有財産を把握するところから進め、将来も見据え専門家に相談しながら検討していくことが重要です 。