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「戦略と実行」へ移るアクティビズムの主戦場

―2026年足元のトレンドと今後の展望―

Financial Advisory Topics 第49回

上場企業の淘汰とアクティビストの台頭が進む中、いま資本市場では「守り」ではなく「変革」が企業に求められています。2026年株主総会の最新動向と、上場企業として生き残るための要諦を読み解きます。

今後10年間で上場企業数が半減する時代?

日本の上場企業数は、2013年の東証・大証の統合後、増加していましたが、2024年には減少に転じており、2025年では60社、2026年は5月時点で40社、前年同時点比で減少しています。一方、米国における上場企業数は、1996年をピークに減少に転じ、30年の間で約8,000社から4,000社に半減しています。それに伴い、米国のGDPを米国籍の上場企業数で割った1社当たりGDPは、10億ドルから72億ドルに上昇しています。(図1)

日本のGDPを2025年末の上場企業数(3,777社)で割った1社当たりGDPは11億ドルで、米国の上場企業数がピークであった1996年とほぼ同水準です。欧州の1社当たりGDPも米国より多い86億ドルであることを踏まえると、日本の上場企業数もいずれ半減するということが容易に想像できるのではないでしょうか。そしてかかる時間は30年ではなく、10年くらいで半減してしまう可能性もあると考えられます。

米国に上場する米国籍の上場企業数において、過去最高社数であった1996年当時の1社あたりGDPは足元2024年時点の日本とほぼ同額となっていた。

図1 米国に上場する米国籍の上場企業数1

上場企業半減を加速させる動きに飲み込まれるな!

上場企業が減る要因はおおむね以下になります。

  • 合併・株式交換・株式移転などの企業組織再編
  • MBO、LBOによる非公開化
  • 流動性基準などの上場廃止基準への抵触

実際、非公開化を目的としたTOB件数は年々増加しており、同意なき買収の事例も増えています。その動きを後押しする要素の一つとして、アクティビストの存在が挙げられます。アクティビストは、上場企業に対して企業再編や非公開化を促す「触媒」として機能しているのです。

経産省の「公正な買収の在り方に関する研究会」においても、アクティビストとPEファンド(プライベートエクイティ・ファンド)の水面下での連携についてのリスクが指摘されています。実務上は、アクティビストやPEファンドに加え、ファイナンシャルアドバイザーなどの専門家も関与しながら、結果として非公開化の提案・検討に至る事例が見られます。これらの市場参加者はいずれも、案件形成や取引遂行に関する高い専門性を有しており、資本市場の仕組みを的確に活用しながら、それぞれの立場で経済合理性の実現を図るプロフェッショナルです。

強い意思や明確な目的、確固たる覚悟を持って非公開化を選択するのであれば、それは経営判断として尊重すべきです。しかし、これまでのように漫然と上場を続け、株価が割安な状態のまま放置されていると、上場企業半減時代という大きな波に飲み込まれ、気づいたときには上場企業ではなくなっていた、という事態にもなりかねません。そうした事態を避けるために何をすべきかについて、昨今のアクティビストの動向も確認しながら、一緒に考えていきましょう。

2026年6月総会の展望

ここからは、2026年6月総会におけるアクティビスト等のデータを確認していきます。

アクティビスト等によるキャンペーン件数は、前年を上回るなど増加傾向にあり、対象企業の6割超が時価総額1,000億円以上であるなど、昨年に続き「標的の大企業化」が見られます。アクティビストの運用パフォーマンスが良いため、運用を預かる資金量が増加していることも一つの要因と考えられます。

キャンペーンの対象企業としては、PBR 1倍未満の会社だけでなく、PBR 1倍以上でも同業他社比で資本効率や成長期待が見劣りする企業であったり、資本コスト経営が軽視されている、またガバナンス不全の会社などがターゲットになりやすい傾向があります。(図2)

6月時点のキャンペーン件数は、2025年の70件から2026年72の件への微増と引き続き活発で、標的となった対象企業の時価総額を調べると、1000億円以上の企業が全体の62.2%を占める

図2 アクティビスト等による日本企業に対するキャンペーンの状況2,3

また、株主総会におけるアクティビストから株主提案を受けた企業数(69件)も、昨年同時点(67件)を上回っており、2026年6月総会においても50社を超える企業に対してアクティビスト等から株主提案がなされています。(図3)

株主提案を受けた企業数は2026年5月末時点で128件と昨年同時点を上回っており、そのうちアクティビスト等から提案された企業は54社である

図3 株主提案 概況4,5,6

アクティビスト等による株主提案の内容を見ますと、いくつかの特徴が見て取れます。まず一つ目は、役員指名の提案の中で、役員の解任議案が増加していることです。2025年は年間で7件だったものが、2026年は5月末時点ですでに16件と急増しています。これまでは、社外取締役の選任議案といった、いわば「送り込み」の議案が中心でしたが、今年は特に、経営トップである会長(創業系)や社長への解任議案が増えています。従来の「こういうスキルを持った社外取締役を入れることによって取締役会の議論を活性化すべき」という要求から、「今の状況を打破し、改革を進めるためには、経営トップあるいは取締役会そのものを刷新すべきだ」という取締役会の刷新(Board Refreshment)要求へと、軸足が移りつつあるように見受けられます。

もう一つの特徴は、経営戦略に関する提案の増加です。具体的には、事業ポートフォリオ計画策定や戦略委員会設立などを求める提案が2年連続増加しています。株主還元の提案も引き続き一定数見られるものの、近時のまさに経営の本丸に踏み込む提案増加の兆しは、前述の解任議案の増加と相まって、あたかも「変わることを拒む」上場企業側にとって、従来以上に厳しい変革圧力がかかっているといえます。(図4)

アクティビスト等による株主提案の種別では、役員指名に関する提案が50件以上あり、経営戦略や投資方針の明確化・実効性向上を目的とした議案も5件と、数は少ないながら増加傾向にある

図4 アクティビスト等による株主提案:議案種別の傾向7,8

上場企業として残るために、いま問われること

あるアクティビストの最高投資責任者は、カンファレンスで次のように述べています。

上場企業は、上場した時点で、資本市場に対して、持続的な企業価値向上を目指すことを公約している。よって選択肢は3つしかない。

自社で成長戦略を描いて自助努力を続けること

PEファンドやストラテジックバイヤー(事業会社)に買ってもらうこと

我々と協働して取り組みを進めていくこと

自らの意思で上場企業として資本市場で生き抜いていくためには、上記①の選択肢を採るほかありません。上場企業半減の波にのまれないよう、経営陣がしっかりと自らオールを握って、変革の大海原に力強く漕ぎ出していただきたいと思います。すでに、現状維持では遭難のリスクがあることにいち早く気づいた企業から、資本政策の見直し、事業ポートフォリオの再構築、非中核事業の整理など、具体的な変革が始まっています。

デロイト トーマツ エクイティアドバイザリー(DTEA)は、変革に向け果敢に挑戦する経営陣に正確な羅針盤を示すとともに、持続的な企業価値向上という大航海を万全の体制でサポートいたします。

脚注:

1 参考:世界銀行(World Bank)

2 参考:アクティビスト等(アクティビスト、機関投資家、環境NGO団体)・対象企業のWebサイト、各種ニュースリリース、招集通知等。時価総額はLSEGより取得。

3 2026年6月総会時点(2026年5月公表分)まで

4 参考:招集通知、臨時報告書、有価証券報告書。東証以外上場の企業に対する株主提案は除く

5 アクティビスト等とその他の株主から同時に受けた場合にはそれぞれ1社として集計

6 2026年6月総会時点(2026年5月公表分)まで

7 参考:招集通知、臨時報告書、有価証券報告書。東証以外上場の企業に対する株主提案は除く。取締役等の選解任議案は候補者1名につき1議案として集計

8 2026年6月総会時点(2026年5月公表分)まで

執筆者

デロイト トーマツ エクイティアドバイザリー合同会社
代表執行役社長 古田 温子
マネージング ディレクター 中島 大

※上記の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。 

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