現場ごとに異なる評価軸をその場で数式化し、数百万通りの計画案から最適解を数分で導出
デロイト トーマツは、多様な業務課題に対して、現場ごとに異なる評価指標と制約条件を対話形式で定義し、AIが自律的に最適解を探索するシミュレーションツールを開発しました。本ツールはデロイト トーマツが推進する「Agentic BPR」の構成要素として活用し、業務プロセスの見直しから、AIを用いた計画立案、現場での意思決定までを一体で支援していきます。
まずは製造業における生産計画最適化、購買・在庫最適化、人員配置最適化の3つのユースケースで有効性を検証完了し、クライアントへの提供を順次開始します。
製造業における計画業務の最適化ニーズは、近年急速に高まっています。一方で、その中身は工場・品目・商流ごとに大きく異なります。ある工場では金型段取り替えの削減が最重要である一方、別の工場では納期遵守率、さらに別の拠点では生産量の平準化が優先されるなど、「何を良い計画とみなすか」の定義そのものが現場ごとに違います。
これまでも生産スケジューラーや配車計画など、計画業務を支援するシステムは広く活用されてきました。一方で、現場固有の評価軸や制約条件を反映するには専門知識を持つ人材による設定や調整が必要となることが多く、導入や変更に時間を要するケースが少なくありませんでした。また、生産品目の変更や制約条件の追加など業務環境が変化するたびに、設定や評価ロジックの見直しが求められていました。
加えて、評価軸の優先順位付け、すなわち複数のKPIをどう重み付けして一つの判断に統合するかは現場の熟練者の暗黙知に依存しており、その合意形成に至るまでが最大のボトルネックとなっていました。
デロイト トーマツは、この認識のもと、現場の判断基準を対話形式で整理し、最適化に必要な評価ルールとして再利用できる仕組みの構築を目指しました。
プレス工場投入順序最適化結果
本検証では、プレス工場における投入順序最適化を対象に、段取り替え回数、納期遅延、特急品対応など複数の評価指標を組み合わせた探索シミュレーションを実施しました。その結果、現場制約を満たしながら遅延ジョブ数の削減と設備稼働効率の向上が可能であることを確認しました。
(横棒=各ジョブの加工時間。同じ色が続くほど段取りロスが小さい。縦線=金型交換。黒枠=特急品)
いずれのユースケースにおいても、評価関数の設計から最適化結果の出力までを、数日程度で実施しました。3つの業務は対象も制約条件も大きく異なりますが、同一のエンジン上で定義ファイルを差し替えることで対応しており、本アプローチの汎用性を確認しています。
STEP 1 対象業務の選定とゴール設定
最適化の対象とする計画業務を特定し、現状の課題と目指す状態を整理します。誰のどの意思決定を支援するのかを明確にし、成果を測る指標をあらかじめ定めます。
▶ アウトプット:対象業務の定義、目標指標
STEP 2 評価関数の対話設計
現場担当者との質疑応答形式で、業務変数の洗い出しから、因果構造の整理、KPIの数式定義、重み付けまでを4段階で進めます。「何を良い計画とみなすか」を数式とパラメータの形で可視化し、関係者間で合意します。
▶ アウトプット:評価関数仕様書、ユースケース定義ファイル
STEP 3 探索シミュレーションの実行と検証
定義した評価関数に基づき最適化を実行し、現行の計画と比較検証します。現場の熟練者に結果を確認いただき、制約条件や重み付けを調整します。
▶ アウトプット:最適化結果、現行比較レポート、調整済み定義ファイル
STEP 4 現場運用への組み込み
既存の計画業務プロセスに組み込み、実運用での試行を行います。計画担当者が判断根拠を確認しながら使えるよう、運用ルールと承認フローを整備します。
▶ アウトプット:業務プロセス設計、運用手順
STEP 5 他拠点・他工程への横展開
STEP 2で作成した定義ファイルをベースに、他の工場・工程へ展開します。ゼロから設計し直す必要がなく、評価項目や制約条件の差分調整のみで適用できます。
▶ アウトプット:展開先の定義ファイル、横展開計画
STEP 2からSTEP 3までは、いずれのユースケースでも数日程度で実施しています。
生産計画、購買・在庫、人員配置で得た知見をもとに、配送計画、作業バッチ編成、物流ネットワーク設計などの領域にも適用を広げます。業務ごとの判断基準を整理し、最適な計画案を速やかに比較・検討できる仕組みとして発展させることで、企業の生産性向上、コスト最適化、変化に強い業務運営の実現に貢献してまいります。
大塚 貴行/Takayuki Otsuka | 合同会社デロイト トーマツ プロダクト バイスプレジデント