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AIトークノミクス(Tokenomics)のトレンド

はじめに

AIビジネスの本格実装が進む中で、AIモデルの「トークン」利用量を基準とする課金体系への対応が喫緊の課題となっている。AIのトークン消費量を管理し、コストと価値の最適化を図る「AIトークノミクス」の重要性が増加している。

本稿では、注目の高まる「AIトークノミクス」の最新トレンドと取り組むべき打ち手を解説する。

AIビジネスの現在とトークノミクス

AIビジネスは、本格的にビジネス成果を求めるフェーズに移行しつつある。AX(AI Transformation)というワードも一般化しつつあり、部分適用ではなく全社のビジネスモデル変革やオペレーション効率化がゴールに設定される例が増えている。

AIエージェント導入による業務プロセス改革やAI駆動開発によるソフトウェア開発の本格化も進行し、複数の言語モデル・ツール・アプリケーションを使い分けながら業務利用するステージへの変化が見られる。

少し前までは、AI利用を促進するアクセルの視点が中心だったが、現在は、AIをユニットエコノミクスや投資対効果(ROI)といったアクセルとブレーキの視点でとらえる必要性が高まっている。この背景には、AIサービスの定額利用からトークンの利用ボリュームに応じた課金モデルへの移行のトレンドがある。

トークンとは、テキスト、画像、音声などをAIモデルが処理する際の基本単位であり、学習、推論といったプロセスで消費される。より深い推論を実行すればより多くのトークンを消費する。

複雑な推論を行うAIエージェントなどの登場による推論コストの上昇も影響し、AIサービスの定額利用からトークンの利用に応じた課金モデルへの移行が進んでいる。

例えば、GitHubは2026年6月から、固定の月額料金と「GitHub AI Credits」を組み合わせる料金体系へと移行した。プランに応じて月ごとに付与される一定額の「GitHub AI Credits」を、各モデルのAPIレートに従い、入力、出力などのトークン使用量に基づいて消費する仕組みだ1。

先行企業では、AIのトークン利用ボリューム増大により企業のコスト負担が増加する例も出てきている。例えば米Uber Technologiesでは、エンジニアのAIコーディングツール活用が急速に進んだ結果、年間AI予算を4カ月で消化するなどの事例もある2。

AI導入は、生産性向上による人件費やコストの削減を期待するケースが多いが、AI利用コストが削減効果を上回る可能性もある。Gartnerは、大規模言語モデル (LLM) トークン消費量の増加と利用量ベースのライセンスモデルへの移行により、2028年までにAIコーディングコストが平均的な開発者の給与を上回ると見立てている3。

ROIの視点では、AI投資による売上向上やコスト削減効果などのR(Return)がまだ不透明な段階で、同時にI(Investment)が変動費化し予測が困難となっている。このため、動的な投資回収モデルの検討が必要な環境となっている点がポイントである。 

(図1)AIトークン時代のテクノロジー支出管理の変化

AIのトークン課金への移行により、IT支出は固定費中心から利用量に応じて変動する費用を含む管理へ変化し、高精度な予測と利益率管理が重要になる

このようにAIのトークン消費量を管理し、コストと価値の最適化を図ることを一般的に「トークノミクス」と呼ぶ。各企業がトークノミクスを実践・確立させることが今後のAIビジネスのキーワードとなるだろう。

AIトークノミクスにおける視点と打ち手

では、この流れを踏まえて企業はどのようなアクションを取るべきであろうか。短期・中長期視点でそれぞれ打ち手が考えられる。

短期的にはAIガバナンスの強化が挙げられる。部門別の分散した利用状態を統制するためAIガイドラインなどのルール整備を進める企業が増えているが、今後はリアルタイムモニタリングを通じた可視化、利用上限といったガードレール設定などを通じて、利用促進と同時に過剰利用を抑制するコストコントロールの仕組みが必要となる。また、技術視点での打ち手としては、データ圧縮や難易度に応じた言語モデルの選択を通じた利用トークン数の最適化といった対策が考えられる。

中長期的視点ではAIインフラやアーキテクチャーの再設計が重要となる。デロイトの分析では、一定のトークン数の閾値を超えるとクラウド利用よりも自社構築がコスト優位となると見込まれ、①パブリッククラウド利用②AI特化型のネオクラウド利用③API利用④自社インフラ構築といった複数の選択肢から自社の利用実態に合わせたAIインフラ設計を行うことが重要である。まずは現状のAI利用状況やユースケース別の将来計画を可視化することがスタートポイントとなる。

クラウドコストが年々上昇する中、SaaS事業者も従来のシート課金ではなくトークン連動の課金モデルへ移行が進みつつある。現時点のコストのみではなく、将来の見立てを踏まえた設計が求められることにも留意が必要である。従来からクラウド領域での財務インパクトの最適化行うFinOpsが取り組まれてきたが、AI領域に範囲を拡張した“AI FinOps”として進化の兆しが見られる。

おわりに

今後はトークンの視点からAIビジネスの投資計画やオペレーティングモデルを組み立てた上で、競争優位を構築することが重要となる。その実現にはテクノロジーの導入や活用を推進するCTO・CIO・CDOと、財務戦略を担うCFOが連携したうえで、AI活用効果を最大化するオペレーションを構築することがポイントとなるであろう。

1 GitHub, GitHub Copilot is moving to usage-based billing, 2026/4/27: https://github.blog/news-insights/company-news/github-copilot-is-moving-to-usage-based-billing/
2 Janakiram MSV, Uber Burns Its 2026 AI Budget In Four Months On Claude Code., Forbus, 2026/5/17: https://www.forbes.com/sites/janakirammsv/2026/05/17/uber-burns-its-2026-ai-budget-in-four-months-on-claude-code/
3 Gartner Predicts AI Coding Costs Will Surpass Average Developer’s Salary by 2028 as Token Consumption Surges, Gartner®, Press Release, 2026/6/24: https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2026-06-24-gartner-predicts-ai-coding-costs-will-surpass-average-developer-salary-by-2028-as-token-consumption-surges
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