デロイト トーマツは、コンサルティング業務全体を対象に、生成AIおよびRAG等のAI基盤を活用した「AI駆動型ナレッジマネジメントサイクル」を始動しました。本取り組みは、単なるAIツールの導入にとどまらず、情報の取得・解釈・構造化・可視化・資料化・データサニタイズ・再利用に至るまでの一連のプロセスを再設計するものです。
著作権上利用可能な外部の業界データ、レポートおよび政策・規制情報、さらに社内に蓄積されてきた提案書や報告書などを統合し、クライアント固有の課題に対して迅速かつ高精度な提案を行うための新たな基盤を構築しています。すでに一部のシステムは稼働を開始しており、2026年4月から段階的な全社展開を予定しています。
本取り組みの特徴のひとつが、クライアントとのヒアリングにおける情報整理の高度化です。生成AIが会話を自動で記録・要約し、議論の背後にある課題意識、意思決定の前提、制約などの“暗黙知”をその場で形式知化します。これにより、プロジェクトメンバー間で早期に認識が統一され、立ち上がり段階から論点のズレを最小限に抑えることが可能になります。その結果、提案設計のスピードと精度を同時に高めることができます。
アプリのイメージ
ヒアリングで得られた情報は、社内の過去の提案事例・報告書、政策・規制情報など多様なデータソースと、安全なアクセスコントロールを備えたAIデータ基盤(RAG)上で結び付けられます。文書は従来の部署単位ではなくプロジェクト単位で管理され、各文書には必要最小限のアクセス権限のみを付与することで、プロジェクト固有の機密情報を保護しつつ、根拠や参照元を遡及可能な形で提示することが可能です。さらに、提案の中心となる課題整理、論点設計、仮説立案、検証計画、施策導出といったプロセスは、RAGが取り込む社内外データを基盤に、生成AIとコンサルタントが協働しながら一体的に進められ、ヒアリングで抽出された論点に外部データや社内知見を組み合わせて仮説を段階的に精緻化しつつ、必要な検証設計や根拠整理を同時並行で実施することで、過去の知見を現在の意思決定に直接活かします。
アクセス権限付きデータ基盤(RAG)
複雑な因果関係や業務プロセス、優先度・影響度といった多次元情報は、文章だけでは正確に伝わりにくく、認識のズレが意思決定のスピードを低下させる要因となります。
デロイト トーマツでは、画像生成AIを活用したインフォグラフィック化により、こうした複雑な情報を直感的かつストーリー性をもって可視化しています。
近年、Googleの「Nano Banana Pro」(2025年11月提供開始)に代表されるような高度な生成AIの登場により、ストーリー性のあるインフォグラフィック画像を迅速に作成できる環境が整いつつあります。これにより、構想段階から視覚的なアウトプットを用いた議論が可能となり、クライアントとの共通理解や合意形成を大きく前進させることができます。一方で、生成されたインフォグラフィック画像をSVG形式に変換し、PowerPointへ取り込む従来手法では、以下のような課題が顕在化していました。
これらの課題に対し、デロイト トーマツはインフォグラフィック画像をPowerPoint資料へ自動変換する独自ツールを開発しました。SVGファイル特有の構造的な問題を回避しつつ、PowerPoint上でテキストやレイアウトを柔軟に編集できるスライドとして展開します。これにより、議論の進行に応じた修正やアップデートにも即座に対応でき、手作業でのレイアウト調整を大幅に削減。資料の更新スピードと品質を両立させ、生成AIのスピード感と、コンサルティング現場で求められる実務的な精度を兼ね備えます。
生成AIによる画像⇒SVGファイル⇒PowerPoint資料の作成例
デロイト トーマツが独自開発したツールによるPowerPoint資料の作成
提案後には、成果物に含まれるクライアント名や特定され得る情報をサニタイズします。統一した匿名化ルールに基づき、外部公開できない数値や条件を適切に処理したうえで、再利用可能な社内資産として蓄積します。匿名化済みの知見はRAGデータソースに再投入され、次のプロジェクトにおける検索精度や生成品質の向上につながります。現在は、AIによる自動サニタイズと人による二重チェックを組み合わせ、品質維持と作業効率化を進めています。
本ツールは、段階的な機能拡張と社内展開を進めており、初期機能の提供および運用検証を通じてユーザー体験や業務適合性を継続的に高めながら、対象部門・ユースケースを順次拡大していく予定です。 また今後は、当社の「AI Factory as a Service (AI FaaS)」の取り組みの一環として、本ツールをクライアント企業の AI変革フェーズに応じた形で提供していきます。具体的には、AI活用の構想策定から設計、実装、基盤整備、社内展開・定着化まで、企業の状況や課題に応じて最適なサービスを提供します。
デロイト トーマツは、実務に根ざしたAI活用を通じて企業の生産性向上と業務変革を支援しており、今後も実用性・拡張性の高いツールを提供し、継続的な価値創出に貢献していきます。
デロイト トーマツの社内事例から考えるAI変革の全体像・AI FaaSの提供例
大塚 貴行
合同会社デロイト トーマツ
Associate Vice President of Business Architecture
※このページの内容は2026年2月時点のものです。