生成AIの効果を最大限に引き出すためには、堅牢な基盤構築と、業務における効果的な活用が必要不可欠です。デロイト トーマツでは、生成AI導入にあたり、2023年より、CxO直下に特任チームを設立し、トップダウンで迅速な意思決定と全社的な展開を進めてきました。このアプローチにより、2025年7月時点で、グループ全体で約12,000人の社職員が生成AI社内ツールをプロフェッショナルワーク内で活用し、その稼働時間の削減は約10万時間/月*に達しました。さらに、生成AIが自律的にタスクを実行することができるAIエージェントについても、全社展開を行っており、プロフェッショナルワークにおける更なる生産性向上を図っていく計画です。
生成AI導入はただツールを作ればいいというものではありません。持続的にAI変革に取り組める環境構築が不可欠です。そのためには開発・育成・定着の3つのポイントを踏まえ環境を整備しました。
まず、生成AIに関する技術検証と基盤構築において、私たちは最新技術への対応を最優先としました。CxO直下の特任チームが最新の生成AI技術を継続的に検証し、実用性の高い技術を迅速に導入しています。これにより、チャットボット型の生成AIツールや提案資料の自動作成ツールなど、4種類のツールを自社開発し、タイムリーに全社展開することが可能となりました。また、RAG(Retrieval-Augmented Generation)や負荷分散型の仕組みを整備し、社内データの活用や大量のアクセスにも対応できる堅牢な基盤を構築しました。
さらに、生成AIに精通した開発人材の育成として、エンジニア向けの専門研修プログラムを設け、最新の技術トレンドや実践的なスキルを習得させることで、組織全体の技術力向上を図っています。これにより、生成AI技術を活用した新たなプロジェクトの立ち上げや既存システムの改善においても、迅速かつ効果的な対応が可能となりました。
次に、生成AIの使いこなし推進(活用頻度、活用レベルの引き上げ)においては、約100種類以上のプロンプト集や参加必須のeラーニング、新卒・中途入社者向けの育成研修を導入しました。これらの取り組みは、論点設計、仮説立案から仮説検証、示唆出しなど、プロフェッショナルワークにおける基本的な業務プロセスに対応しており、特に若手コンサルタントの育成にも大いに役立っています。加えて、各組織内にスーパーユーザーチームを編成し、組織内での生成AI活用レベルの向上を図っています。組織固有業務のプロセスを詳細に分解し、生成AI活用を前提とした業務プロセスへの組み替えについても全社的に実施しています。
デロイト トーマツは、2025年3月からAIエージェントの全社展開を完了しており、既に幅広い業務領域で実運用されています。このAIエージェントは、プロフェッショナルワークにおける業務プロセスを組み込むことも可能であり、従来は課題整理や論点設計などの各業務プロセスごとに、各コンサルタントがプロンプトを検討・工夫し、生成AIに直接入力することでアウトプットを取得していました。しかし、現在では、タスクに応じた最適なプロンプト生成、社内資料等の活用、アウトプットのレビューをAIエージェントが一貫して自動的に実行する体制が整い、生成AIによるアウトプットの品質向上と作業時間の大幅な短縮を実現しています。
さらに最近では、社内向けのPrivate LLM(プライベート大規模言語モデル)や、アクセス権管理付きRAGの構築も進めており、より高いセキュリティと社内知見の反映を両立したAI活用を推進しています。これにより、人事業務の効率化を目的とした人事エージェント等の開発・導入も可能となり、社員の個人情報を適切に管理しながら、労務管理や各種人事業務の自動化・最適化を実現しています。これらの取り組みにより、人事関連業務の負担軽減と、データ活用による業務の精度向上が図られています。
以上の取り組みにより、デロイト トーマツは生成AIのプロ集団として、その専門性と実績を確立してきました。私たちの戦略的かつ一貫したアプローチにより、デロイト トーマツ グループ内では、多くの社職員が生成AIの真価を引き出し、業務効率化と付加価値の創出を実現しています。また、その実践に基づいた経験から、クライアントのビジネスにおける社内変革についても支援いたします。
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