近年、ESG/サステナビリティが経営イシューとして認識されるようになり、M&AライフサイクルにおいてもESGの戦略的重要性が高まっている。企業やプライベートエクイティファンドがESGへの関心を強めるなか、本調査により、M&Aリーダーの間では、買収・売却対象の検討といったM&A戦略策定のみならず、バリュエーション、契約締結、PMI、税務といったM&Aディールメイキングの諸活動においてもESG要素の組み込みが大幅に進展していることが示されるとともに、継続的な成長機会も浮き彫りになった。
本レポート「M&AにおけるESGトレンド調査 2024 日本版~ESGの影響力の高まり~」では、2024年6月に発刊されたグローバル版「2024 ESG in M&A Trends Survey」の監訳に加え、日本市場に特化した調査結果を分析したオリジナルの「日本市場考察版」を収録する。
組織はESGに関する方針策定・取組推進・情報開示などの一連のプロセスを進めてきた結果、近年ステークホルダーがますます重視している一連の変数を理解し、測定し、それらに基づいて行動する方法を学んでいる。こうした取り組みがM&Aの戦略や実行に影響を及ぼす程度は、他の分野での戦略やオペレーションに対するものと変わらないが、M&Aではその影響が如実に表れる。本調査の結果は、M&AのリーダーたちがこのESGに関する諸活動において、どのような進歩を遂げているかを明らかにする。
前回、デロイトが2022年にこのテーマについて調査した際には、ESGがM&Aのプロセスで考慮される頻度は現在に比べて散発的だった。現在では、関連するデータがより容易に入手できるようになり、企業がESGに対する理解を深め、M&Aディールのプロセス全体にこの要素を取り入れるようになったため、ESGに関する検討はM&Aライフサイクル全体で一層盛んに行われるようになっている。企業とPEのいずれにおいても、戦略やバリュエーションから契約締結、実行、税務上の検討事項に至るまで、回答者は重要性が高まっている分野としてESGを認識している。
グローバル全体ではM&AのプロセスにおいてESGの戦略的重要性が高まる傾向にあるが、日本市場でもESGの重要性が高まるにつれて、今後ますますM&Aプレイヤーの意識や行動の変化が起こると考えられる。
日本企業の傾向をグローバル全体と比較すると、M&A戦略におけるESGの重要性からPMIプロセスへの織り込みに至るまで、やや遅れている現状がみてとれる。
このような状況を踏まえ、今後日本企業がグローバル市場においてM&Aを実行する際に以下のようなリスクが生じてしまう可能性がある。
上記のようなリスクを回避・軽減するためには、自社にとって重要なESGの項目を明確化することや、DDやPMIを中心としたM&Aの社内プロセスを確立することに加え、その前提として、ESG視点での自社の事業ポートフォリオの見直しを行うことが必要である。
デロイトは2024年1月、売上高5億ドル以上の企業または運用資産残高10億ドル以上のPEファンドを率いるリーダー500人を対象に調査を実施した。非営利組織と公共部門の組織は除外され、回答者はCレベルの経営幹部と上級・中級管理職層の間で偏りなく構成されている。回答者の90%は企業に所属しており、PEリーダーは10%であった。企業規模(年間売上高)という点では構成に偏りは見られず、地域構成についても北米(34%)、欧州・中東(33%)、APAC(33%)となっている。本調査は、2022年にデロイトが実施した企業のM&Aに関する意思決定におけるESGの役割の変化に関する調査の後続として、2024年に調査対象を拡大してM&AにおけるESG動向調査からの考察を行った。
ご関心がおありの方は、ぜひ、当ページよりレポートをダウンロードし、詳細をご参照ください。
※本レポートはDeloitte Global M&Aが2024年6月に発行した内容をもとに、デロイト トーマツ ファイナンシャル アドバイザリー合同会社が翻訳したものである。和文版と原文(英語)に差異が発生した場合には、原文を優先する。