企業の要員・人件費の生産性向上機会の発見を目的として、アンケート調査を元に人事、財務・経理、情報システム(IT)といった間接機能、および一部のフロント・ミドル機能の生産性ベンチマーク調査を実施しました。本調査は、2012年より実施し、今回で7回目となります。
間接機能比率の中位値は、全企業で11.8%(2023・2024年度版では11.3%)、製造業で11.0%(同11.7 %)、非製造業で14.3%(同10.0 %)となり、全企業・非製造業では増加、製造業では減少という結果になりました。非製造業において間接機能比率が上昇している主な要因として、全社員に占める情報システム機能正社員比率が1.8%(同1.3%)と大幅に上昇していることが挙げられます。また、総人件費に対する情報システム機能コスト(人件費+業務委託費)も4.2%(同2.7%)と間接機能比率と同様上昇傾向にあることから、人員・コストの両面から情報システム機能への投資が進んでいることが読み取れます。この背景には、業務効率化や高度化を目的とした生成AI活用を含むデジタル投資の強化が進んでいるのではないか、ということが想定されます。一方で、間接機能の増加傾向やばらつきの大きさは見られるものの、過去7回の調査を通じて見ると、やはり間接機能比率は10%から12%程度が中位値であることには変わりはなく、競争力のある間接機能組織を検討する際の一つの目安となる水準であると言えます。
全正社員に占める新規採用者(新卒)は2.8%(同2.6%)、全正社員に占める新規採用者(中途)の割合は3.0%(同3.1%)、自己都合退職率は3.3%(同3.4%)と横ばいとなり、人材流動性は前回調査とほぼ同水準で推移していることが確認されました。 2021,22年調査、2023,24年調査、本調査において、全正社員に占める新規採用者(中途)は1.5%→3.1%→3.0%、自己都合退職率は2.4%→3.4%→3.3%と推移しています。今回の結果は、人材が一定程度流動化することを前提としたキャリア選択や採用・定着の考え方が企業・個人双方に共有されつつあることを示していると考えられます。
近年、日本企業での報酬水準の引き上げ率が高水準で推移していますが、その傾向を本調査からも読み取ることができます。具体的には、正社員の平均年収は7,346千円(同6,883千円)、部長級社員の平均年収は12,673千円(同11,708千円)、課長級社員の平均年収は9,774千円(同9,225千円)となりました。また、正社員全体では6.7%(同4.0%)、部長級社員では8.2%(同1.8%)、課長級社員では6.0%(同0.8%)と報酬水準の上昇率が拡大しました。その背景としては、物価上昇に伴う採用市場における競合企業の賃上げ動向を踏まえ、従業員の採用力強化や流出リスクを回避する観点から、各社で報酬水準の引き上げを実施していることがあると推察されます。
合同会社デロイト トーマツ パートナー 山本 奈々
今回の調査では、全体の間接機能比率が前回(2023・2024年度)に引き続き増加しており、特に非製造業でその傾向が顕著であることが確認されました。
間接機能は従来から業務効率化の重要な領域として各社が生産性改善に取り組んできた分野であり、近年の生成AIの急速な発展・普及を受けて、今後はさらなる生産性向上への期待が高まっていくことが予想されます。しかしながら、生成AIによる業務効率化・高度化の取り組みは各社とも今まさに検討を始めているという段階であり、そのためのAIやデジタル関連への投資の強化が、結果として今回調査における間接機能比率の増加として現れているのではないか、と考えられます。
今回の調査から生成AIへの投資に関する指標を追加していますが、今後も引き続き生成AIへの投資と間接機能比率の関係性について注目していきたいと考えています。
いずれにせよ、間接機能比率については、絶対の適正値は存在せず、自社にとっての最適解をトップダウン・ボトムアップの両面から導き出すことが必要となります。ぜひ、本調査をご活用いただきながら、自社なりの最適解をご検討いただければと思います。
2012年より実施し今年度で7回目となる本調査は、企業の要員・人件費の生産性に関する有用なベンチマークデータとして活用されることを目的に、企業に対してWebのアンケート形式で調査を行い、集計データをもとに日本国内で活動する企業の間接部門の人的生産性を分類・整理したものです。調査内容には企業の人的生産性を計る指標の一つとして、一人当たりの生産性および人件費効率、企業の直間比率、管理スパン、人事/経理・財務/ITの各機能効率等の指標データ、業種・規模別の指標データなどが含まれます。
調査形式:Webアンケート方式
調査対象年度:直近決算期(2025・2026年度)
調査時期:2025年7月22日~2025年10月31日
参加企業数:147社
参加企業属性:本調査は、業種、売上規模(単体売上高)、従業員規模(正社員数)の3つのカテゴリーにおいて参加企業の回答を集計しています。業種区分は日経36業種をもとに弊社独自で設定しており、製造業・非製造業の分類は下記の通りです(一部複数に該当する企業含む)。なお、今回の参加企業のうち、売上規模(単体売上高)が1000億円以上の企業は61社、従業員規模(正社員数)が1000名以上の企業は69社となります。
<製造業(79社)>
建設、食品(食品・飲料)、プロセス、化学工業、医薬品(医薬品・製薬)、機械・金属製品、電気機器・精密機器、自動車・自動車部品、その他製造業
<非製造業(68社)>
総合商社・専門商社、小売業、金融業、運輸・倉庫業・不動産業、通信・通信サービス・インターネット付帯サービス、サービス業
合同会社デロイト トーマツ
ヒューマンキャピタル
Email: hc_benchmark@tohmatsu.co.jp