本調査は、日本企業の役職・報酬体系に沿った形で、従業員の報酬水準や人事制度を対象に調査しています。調査内容は、売上・従業員数・職種などでの報酬水準比較や、人事制度のトレンドなど多様なテーマを含んでいますが、本レポートでは報酬水準・賃上げ動向、シニアの雇用と処遇を中心に主要なトピックスをお知らせします。
直近3年間において賃上げを実施した企業は86.5%で、2024年度の調査結果(84.5%)より2.0ポイント高い結果となった。賃上げの目的については、昨年同様に約7割の企業で「物価上昇への対応」(72.2%)や「従業員のモチベーション向上」(63.0%)と回答している。(図1)従業員規模別に分析すると、従業員10,000人以上の大企業では97.4%が賃上げを実施しており、従業員500人未満の中堅企業でも79.2%が賃上げを実施しており、中堅企業も含めて賃上げが一般的となりつつある。(図2)
全産業における賃上げ率を階層別に分析すると、すべての階層で4~6%以上の賃上げを実施する企業割合が経年で増加している。特に、初任給においては約7割の企業が4~6%以上の賃上げを実施している。(図3)
全産業における、基本給・諸手当・賞与を含めた年間報酬額の中央値を2023年度調査結果と比較すると、非管理職層*1の水準が3.8%~9.1%増加しているのに対し、管理職層*2の水準は最大で2.8%増にとどまった。(図4)
*1 非管理職層=上級一般社員・主任、標準一般社員、初級一般社員
*2 管理職層=本部長級、部長級、課長級、課長代理・係長級
定年後再雇用の年間報酬を従業員規模別に確認すると、従業員規模10,000人以上の企業では26.7%が8割台以上と回答しているのに対し、従業員規模500人未満の企業では42.7%が8割台以上と回答した。(図5)
59歳時点の年間報酬中央値は、従業員規模10,000人以上、500人未満のどちらも約800万円となっている。(図6)よって、従業員規模の小さい企業の方が60歳以降の年間報酬水準が高くなっている可能性がある。
努力義務となっている70歳までの雇用機会確保について、従業員規模10,000人以上の大企業、従業員規模500人未満の中堅企業のいずれも約3割が対応しているという結果となった。(図7)
とくに従業員規模500人未満では、昨年調査時(18.0%)より11.8ポイントの増加がみられた。
賃上げ競争がもたらす企業の人材戦略の違いに注目する。
物価上昇を背景とした賃上げは、昨年に続き調査参加企業の8割以上が実施した。内訳を見ると、管理職よりも非管理職の上昇幅が大きく、両者の報酬格差は縮小傾向にある。この傾向が続けば、「罰ゲーム化する管理職」と揶揄されるように、管理職の魅力低下が懸念される。こうした状況を受け、一律の引き上げにとどまらず、評価に応じてメリハリのある報酬を設計する企業が増えている。財務的余力の確保が難しい中堅企業ほど、このアプローチの必要性は高い。
シニア層の雇用に目を向けると、大企業と比較して中堅企業は再雇用時の報酬減額が比較的小さく、70歳までの雇用機会の確保にも積極的で、シニア活用に前向きな傾向が見て取れる。従来は、定年後再雇用を人事評価の対象外とし、賞与は定額、昇給・昇格なしとする企業が大半だったが、近年はシニア人材の戦力化とモチベーション向上を目的に、評価・報酬のあり方を見直す企業が増えている。
若年層の賃上げによる人材確保に加え、管理職の魅力向上とシニア活躍を促す人事制度改革は、人材不足が深刻化する日本において不可避の取り組みであると言える。
本サーベイは、自社の制度が業界や社会の動向をどの程度反映しているかを把握し、競争力ある報酬水準・人事制度を検討するためのヒントとして活用いただきたい。
調査期間:2025年7月 ~ 2025年9月
調査目的:魅力的な報酬水準・人事制度の設計に資する従業員報酬制度・人事制度の現状に関する分析データの提供
参加企業数:312社(集計対象従業員総数 1,487,890人)
参加企業属性:製造業139社、非製造業173社/上場企業220社、非上場企業92社