金利上昇などの金融機関が直面する急激な環境変化に向けた、預金獲得戦略やALM管理の重要性について解説を行いました。
デロイト トーマツは2026年7月13日に「自行戦略に基づく預金・ALM管理の在り方」をテーマとするウェビナーを開催しました。
本ウェビナーでは、人口減少・金利上昇下で金融機関に求められる視点を踏まえ、預金・ALM管理を取り巻く環境変化や金融機関経営の重要論点について、多面的にディスカッションを行いました。
ディスカッションを踏まえ、
が示されました。
合同会社デロイト トーマツ ファイナンシャルサービシーズ リスク管理戦略センター マネージングディレクターの勝藤史郎は、金利上昇が銀行経営にもたらす影響と、今後求められるALM運営の高度化の方向性について解説しました。金利上昇は利ざや改善など収益面でプラスに働く一方、預金流動、バランスシート変動、有価証券評価損益の発生、流動性リスクなど、新たな管理課題を伴います。
こうした環境下では、預金・貸出戦略の見直し、運用ポートフォリオの見直し、ストレステスト、FTP(ファンド・トランスファー・プライス:仕切りレート)、コア預金モデル、システム整備等を含めた総合的なALM運営の高度化が重要であると説明を行いました。また、ALMは特定部署に限られた論点ではなく、経営企画、財務、リスク管理、営業、市場運用などの幅広い部署に係る経営全体で検討すべき課題であり、組織横断での意思決定・管理体制の強化が重要である点を強調しました。加えて、金利環境の変化によりバランスシート自体が大きく変動する可能性が高まるなか、将来の収益性とリスクの双方を見据えた予測・モニタリング機能の強化や、資本効率を意識した経営運営の必要性について示しました。
合同会社デロイト トーマツ金融 ストラテジー パートナーの大仲忠之は、預金を取り巻く外部環境の変化を踏まえ、金融機関が今後どのように預金戦略を構築すべきかを解説しました。国内全体では信用創造の拡大を背景に預金総額は増加基調にある一方、都市部への預金集中や主要行・ネット専業銀行への流入が進むなか、従来の低金利の長期化やNISAの浸透により個人金融資産の構成は変化しており、地域金融機関では個別施策の巧拙が預金動向を左右していると指摘しました。
そのうえで、預金戦略は単なる金利引き上げではなく、①顧客訴求力、②顧客獲得力、③顧客維持力の三つの観点から設計すべきと整理し、①顧客訴求力としてALMと連動した金利施策と店舗ネットワークやUI/UXによるチャネル利便性の向上、②顧客獲得力としてデジタルを活用した潜在顧客基盤の拡充とマーケティング高度化、③顧客維持力としてデジタルを活用した営業力の標準化とトランザクションバンキングを活用した収益向上施策の重要性を示しました。さらに、高金利の預金サービス提供に繋げるため、店舗等のチャネルコスト削減を通した費用削減の重要性についても言及しました。
合同会社デロイト トーマツBanking & Capital Market ユニット パートナーの丸山由太は、オープンバンキング、異業種連携、AIエージェントの進展を見据えた金融機関のシステム構造改革について解説しました。今後は、金融サービス単体での競争だけでなく、自社サービスを他社に組み込んでもらう力と、他社サービスを自社に組み込む力の双方が重要であり、顧客リーチの拡大・顧客の囲い込み(とデータ収集)、データ活用といった好循環を描くことにより、顧客数の拡大や粘着性の高い預金の獲得、顧客当たり収益性の向上に繋がると述べました。
こうした好循環へ繋げるためには、AI・ヒトが理解し易いシステム、外部サービスと柔軟に接続できるシステム構造が不可欠であり、機能の要素化・カタログ化、API活用、相互接続性の高い設計が求められると解説しました。加えて、競争力強化の前提として、勘定系に過度に機能を抱え込んだ構造を見直し、守りの費用を抑えながら攻めの投資余力を確保することの重要性や、顧客データの利活用や外部サービスとの連携を前提とした柔軟なアーキテクチャへの転換が、顧客接点の維持・拡大に向けた重要な経営課題であることが示されました。
本ウェビナーを通じて、預金戦略、ALM、リスク管理、システム構造は、いずれも個別最適ではなく、一体で設計・運営すべきテーマであることが改めて確認されました。金利上昇、人口動態の変化、競争環境の変容、デジタル技術の進展といった複数の変化が同時に進むなか、金融機関には、預金を起点に経営全体を見直す視点がこれまで以上に求められています。
今回の内容が、今後の戦略検討や実務運営の一助となれば幸いです。
※上記の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。