生成AIやDXの進展で拡大するデータセンター需要を踏まえ、電力供給・系統接続上の課題とデータセンターの地方分散に伴う事業機会について、電気事業者の観点から整理する。
2025年2月18日に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では、人口の減少や省エネルギーの浸透などにより2007年度以降は減少傾向が続いていた我が国の電力需要について、一転して、2040年度には対2022年度で1~2割増加するとの予測がなされました。その主な理由の一つが、DXの進展や生成AIの登場によるデータセンターの拡大であり、現在も建設ラッシュが続いています。データセンター立地は関東圏、関西圏が多いとみられていますが、データセンターの立地選定における課題や立地決定において重視される項目を踏まえると、地方にも立地が進んでいく可能性が高いとみられています。このため、データセンター投資は、経済成長や経済安全保障の観点から我が国にとって重要な課題であるだけでなく、各地域における電気事業者にとって重要な成長機会でもあります。本稿ではデータセンター立地について、電気事業の観点からの最新の検討状況や取り組み等を整理します。
これまでデータセンターは主に関東圏、関西圏に設置されてきました。関東圏の印西市などが代表的な例であり、都心からの距離が比較的近いこと、災害耐性が高いこと、土地の確保が比較的容易だったこと等が印西市のデータセンター立地上の優位性として挙げられています。
電気事業の観点から見ると、データセンターは大規模かつ局所的な需要増加を生じさせます。例えばMC Digital Realty社によれば、印西市のデータセンターNRTキャンパス全体のサーバ用電源容量が100MWに達しており、またColt Data Centre Services社は印西4拠点の電源容量を70MWと公表しています。この2つの施設だけでも、合計容量は170MWとなり、原子力発電所1基の出力のおよそ1〜2割にあたる規模です。このようにデータセンターによる電力需要は、電気事業の観点から魅力的な事業機会である一方で、エリア(供給区域)によっては、あるいはあまりに1エリアにデータセンターが集中しすぎると、電力供給が追いつかずにデータセンター建設のボトルネックになることが懸念されます。データセンターは、再生可能エネルギー由来電力などの脱炭素電源を重視する傾向が強く、立地に当たっては電力の量だけでなく調達する電力の質も問われますが、エリアによっては再生可能エネルギーの開発が追いつかない可能性があります。加えて、大規模集中型のデータセンターでは局所的に電力需要が急増するため、送電線や変電設備の整備が追いつかず、系統接続までに長期の待機期間を要する場合があります。こうした点も、電力供給がデータセンター建設のボトルネックになり得るとの懸念を強めています。これは国の戦略上見過ごせない問題です。
上述した電力確保、用地確保の制約を踏まえ、データセンターの地方分散の促進が望まれています。地方においては、用地確保がしやすいうえ、電力需給が都心ほどひっ迫しない傾向にあり、さらに再生可能エネルギーによるクリーン電力ポテンシャルも大きなものがあります。したがって、データセンターの地方分散は、データセンター事業者、地方の電力会社/電気事業者の双方にとって魅力的な選択肢といえます。加えて、北海道や東北では気温の低さによるランニングコストの抑制といった強みもあります。
こうした選択肢を具体化するための動きも電気事業者の間で出てきており、大量の計算資源が必要なAIの学習環境については、利用者への即時応答を前提とせず通信遅延が許容できることから関東圏・関西圏以外の地域に分散配置された大規模データセンターを活用することが検討されています。また、学習によって構築したAIモデルに基づいて企業が予測などの推論を行う推論環境については、余剰電力がある地方の産業集積地にて利用現場(エッジデバイス)近傍に設置された、学習用よりもさらに分散配置されたより小規模な地域データセンターを活用することなどが検討されています。このようなデータセンターの分散配置を検討する動きは、大規模集中型のデータセンターを避けることで、送電系統と早期に接続できるという利点もあいまって、海外でも同様に確認されています。
このような動きのもとで、地方の電力会社/電気事業者においては、分散型データセンター誘致・対応に向けた取り組みが活発化しており、通信やIT等の異業種の企業との分散型データセンターに関する共同検討の立ち上げが相次いでいます。また、送電系統との接続長期化を解決するために、接続を待たずに自家発電設備を導入して早期の事業開始を支援するサービス(系統との接続後はBCP対応電源としても活用可能)や、自らの発電所の敷地/跡地にデータセンターを誘致・開設する取り組みも確認されており、各地の電力会社/電気事業者によるデータセンター領域での収益化と、それに向けた体制整備やケイパビリティ拡充は、電気事業に携わる各社にとって今後ますます重要な事業課題になりそうです。また、データセンターを中心とする需要増への対応として電力供給インフラを拡充するにあたっては、膨大な資金調達と積極的な投資、回収予見性の確保、バランスシートへの影響の考慮も加味した投資スキームやアライアンススキーム、DXを含む他の投資との優先順位付け等、経営・ファイナンス上の様々な観点からの検討が必要であり、スピード感を持ちつつ多様な論点を遺漏なく検討していくことが求められます。
合同会社 デロイト トーマツ
パートナー 稲垣 健一
※上記の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。