日本は高齢化の進展に伴い医療需要が増加する一方で、看護職員の業務は多岐に渡り、多くの医療機関において、現場では慢性的な人手不足に直面しています。令和8年度の診療報酬改定において、ICT等の活用による業務効率化が推進されていますが、十分な検討を経ないままICT等を導入することにより、期待した業務負荷軽減に繋がらない事例も見受けられます。本稿では、看護職員が専門性を発揮しながら、働きやすい職場環境を構築する業務効率化の進め方について要点を整理します。
健康経営は、従業員の健康に投資することで、従業員一人ひとりが持つ能力や経験といった資本を最大限に引き出し、組織全体のパフォーマンスを安定的に向上させるための不可欠な基盤です。それは、人的資本可視化指針に健康経営が含まれていることからもみてとれます。そして、近年、この健康経営と人的資本経営への注目が、企業価値向上の観点から急速に高まっています。これらは単に従業員のエンゲージメント向上といった側面に留まらず、持続的な企業価値創造に不可欠な経営アジェンダとして認識されるようになりました。
この潮流を象徴するように、2026年3月、内閣官房は「人的資本可視化指針」を改訂し、同時に「戦略に焦点をあてた人的資本開示~投資家の期待に応えるための考え方の整理~」と題した別紙を公表しました。これらは、人的資本に関する情報開示を、単なる個別施策の羅列としてではなく、経営戦略と連動した投資として捉え、投資家との対話に資する形で示すことに焦点を当てたものと読み取れます。
指針の改訂の背景として、経営戦略と連動した投資のためには「あるべき組織・人材の姿」「必要となる人的資本投資」を踏まえた上で人材戦略を明確にするとされ、人事の実務に引き寄せれば、今後は「施策を実施している」という事実だけでなく、「なぜその領域に投資し、どのような指標・目標で管理しているのか」を、価値創造のストーリーとして説明できる状態がより重要になっていくでしょう。
なかでも健康経営は、施策が多岐にわたりやすいため、戦略とKPI(重要業績評価指標)のつながりを明確にしなければ、この新しい潮流の中で「投資」としての説明責任を果たすことが難しくなる可能性があります。
本稿では、こうした背景を踏まえ、改訂された人的資本可視化指針を起点としながら、健康経営を人事の「経営管理テーマ」としていかに再整理し得るか、直近の政策動向も交えて論点を整理します。