2026年度5月号メルマガ「医療分野における業務効率化・職場環境改善の更なる推進について」にて、医療機関の業務効率化・勤務環境改善に関する制度見直しの方向性についてご紹介しました。今回はその続編として、令和9年度厚生労働省概算要求で示された新たな事業の内容を踏まえ、医療機関が今からどのように準備を進めるべきかを整理します。
令和9年度厚生労働省所管予算概算要求では、業務効率化・勤務環境改善に積極的かつ計画的に取り組む病院を、厚生労働大臣が認定できる仕組みを前提とした「医療分野における業務効率化・勤務環境改善に向けた調査・支援事業」が盛り込まれています。認定制度に応募する病院が作成・提出する「業務効率化・勤務環境改善計画」を踏まえて、国が審査、調査、支援を進める建て付けが示されています。
厚生労働省は令和8年(2026年)9月9日に「電子カルテ普及計画」を示しました。この計画では、電子カルテを単なる医療機関の基幹業務システムとして捉えるのではなく、患者に質の高い医療を提供するための情報基盤であり、さらに創薬や医療機器開発を含むライフサイエンス分野の基礎データを創出する情報基盤でもあると整理しています。加えて、その前提としてサイバーセキュリティ対策を不可欠とし、「必要な患者の医療情報を共有するための電子カルテ」の普及を通じて、国民に質の高い医療を効率的かつ安全に提供することを目指しています。
これに加えて法令・政府方針では、地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律に基づき、令和12年(2030年)12月31日までに電子カルテ普及率約100%を達成するよう目指しており、「遅くとも2030年には概ねすべての医療機関において必要な患者の医療情報を共有するための電子カルテの導入を目指す」とされています。
令和6年4月から、診療に従事する医師に時間外・休日労働の上限規制が適用され、医療機関には実効性のある勤務環境改善が求められています。一方で、救急や外科系診療科などでは、診療科の特性から長時間労働が生じやすく、現場任せの改善だけでは限界があるのが実情です。医師の働き方改革を推進する上で、特に欠かせないのが、院長のリーダーシップです。取組を効果的かつ継続的に進めるには、院長が自ら目的と優先順位を示し、院内の多職種を巻き込みながら、実施可能な施策を迅速に動かしていくことが不可欠とされています。取組が停滞した場合に院長が判断し、前に進めることも重要です。医師の働き方改革は、単に労働時間を減らすだけの取組ではありません。患者安全や医療の質を守り、将来にわたり地域医療を維持していくための経営課題でもあります。だからこそ、現場の努力だけに委ねるのではなく、院長が先頭に立って改革を進める姿勢が求められます。
今回は、事例集の内容をもとに、院長主導で進める医師の働き方改革の実践ポイントを整理してご紹介します。