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企業価値を上げるCFO 4 Levers

経営の前提が変わる今、CFOは“価値の設計者”へ

合同会社デロイト トーマツは、企業価値向上に向けたCFOの役割をテーマに、「CFO Agenda Series 2026 第1回:企業価値向上施策とCFOの未来予想」を開催した。本稿では、当日の議論をもとに、CFOを取り巻く環境変化と、企業価値向上に向けてCFOが注視すべき4つのレバーについて紹介する。

CFOを取り巻く環境変化

地政学リスクの拡大、サプライチェーンの再編、サステナビリティ開示要請の高まり、AIをはじめとするテクノロジーの進展など、企業を取り巻く経営環境は大きく変化している。こうした変化は、CFO組織に求められる役割にも影響を及ぼしている。

これまでCFO組織には、正確かつタイムリーな財務報告、資金管理、業績管理といった「守り」の役割が強く求められてきた。一方で現在は、それらに加えて、経営・事業・資本市場をつなぎ、企業価値向上に向けた変革を主導する役割が期待されている。

企業価値の考え方は株主中心からマルチステークホルダ価値へ拡大。株主価値向上と非財務要素を統合し、中長期的な企業価値創造を目指す。

企業価値向上に向けた4つのレバー

本セミナーでは、企業価値向上に向けてCFOが注視すべき打ち手を、PBRを構成するROE・PERの要素に紐づけながら、4つのレバーとして整理した。これらのレバーは個別に検討されるものではなく、相互に連動しながら企業価値に影響を与える点が特徴である。

CFOは事業・IR・財務の3戦略を統合し、収益性/効率性の向上、成長期待の醸成、資本構成の最適化、資本コストの低減の4施策で企業価値向上を目指す。

第一のレバーは、収益性/効率性の向上である。これは、既存事業の稼ぐ力を高めるだけでなく、限られた経営資源をどの事業・投資案件に配分するかを見極め、企業全体として資本効率を高めていく取り組みである。特に重要となるのが、事業ポートフォリオ戦略を起点にした意思決定である。短期的な売上や利益だけで各事業を評価するのではなく、中長期戦略、成長可能性、資本効率、リスクを踏まえ、「傘下事業のベストオーナーは自社か」という問いに向き合う必要がある。自社が最適なオーナーでない場合には、撤退、縮小、売却、アライアンスなども含めた選択肢が検討対象となる。

事業ポートフォリオ戦略と統合データ基盤を軸に、予測分析やローリング予算で投資判断を高度化し、収益性・効率性の向上を図る。

第二のレバーは、成長期待の醸成である。企業価値は、企業内部で算定される財務数値だけで決まるものではない。資本市場や投資家を含む社外ステークホルダーが、企業の将来性、成長力、リスク、経営の実行力をどのように評価するかによっても大きく左右される。そのためCFOには、過去の実績を報告するだけでなく、企業がどのような価値観に基づき、どの市場・事業領域で、どのように成長を実現するのかを分かりやすく伝える役割が求められる。企業理念、長期ビジョン、ビジネスモデル、資本政策、人的資本・知的資本などの無形資産、ガバナンスを一貫した価値ストーリーとして提示することが重要である。

企業理念から戦略、KPI、ガバナンスまでを一貫した成長ストーリーで投資家と共有し、財務・非財務情報を通じて成長期待を醸成する。

第三のレバーは、資本構成の最適化である。企業が持続的に成長するためには、事業投資を支える財務余力を確保しながら、同時に資本効率を高めていく必要がある。そのためCFOには、自己資本と負債のバランスを、事業環境、リスク許容度、投資家等からの期待を踏まえて設計する役割が求められる。財務健全性を重視するあまり自己資本を過度に厚く保つケースがある一方、過度なレバレッジは財務リスクを高め、事業環境の変化に対する柔軟性を損なう可能性がある。重要なのは、単一の理想値を追求することではなく、企業価値を最大化し得るTarget Rangeを設定し、その範囲内で資本構成をコントロールすることである。

事業環境や投資家期待を踏まえ、負債と自己資本の最適比率を設定し、複数のシミュレーションで資本構成を管理して企業価値向上を図る。

第四のレバーは、資本コストの低減である。企業価値を高めるためには、ROICがWACC、すなわち加重平均資本コストを上回る状態を持続的に実現することが求められる。収益性や成長性を高めるだけでなく、投資家や債権者が企業に求める期待収益率を適切にコントロールすることも、CFOにとって重要な経営課題である。資本コストは所与の条件ではなく、企業側が一定程度コントロール可能な要素である。財務の観点では、資本・負債比率の見直しや借入条件の交渉が論点となり、事業の観点では、収益構造の変革やレジリエントな事業ポートフォリオの構築、計画・見通しの信頼性向上が重要となる。

さらに、ESGの観点では、持続的成長を支えるサステナビリティ経営やコーポレート・ガバナンスの強化が求められる。情報開示・IR/SRの観点では、企業と投資家の間に存在する情報の非対称性を解消し、投資家不安を低減することが重要である。CFOは、財務・事業・ESG・情報開示を統合的に設計し、資本コスト低減に向けた打ち手を経営アジェンダに組み込む必要がある。

ROICがWACCを上回る状態を目指し、財務・事業・ESG・情報開示の観点から資本コストを最適化し、企業価値向上を実現する。

4つのレバーを統合して捉える意義

4つのレバーは、それぞれ独立した施策ではなく、相互に連動している。収益性/効率性の向上は、企業のキャッシュフロー創出力を高めるとともに、成長期待の醸成や資本コストの低減にもつながる。また、資本構成の最適化は、成長投資、株主還元、財務健全性のすべてに関係する。

したがってCFOには、個別施策を部分最適で管理するのではなく、事業戦略、財務戦略、IR戦略を一体として捉え、企業価値向上に向けた一貫したストーリーとして結び付けることが求められる。経営陣、事業部門、投資家をつなぎ、4つのレバーを統合的に動かすことが、これからのCFOの重要な役割となる。

次回予告

次回は、本記事で整理した4つのレバーのうち、特に資本市場との接点に焦点を当て、「資本市場とのリレーション強化」について解説予定である。

また、第3回では「AI×ファイナンス」をテーマに、ファイナンス組織におけるAI活用の可能性について取り上げる予定である。CFOが企業価値向上の実現に向けて、どのようにデータ、テクノロジー、人材を活用しながら変革を推進していくのかこうした論点についてさらに議論を深めていく。

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