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EU CSRD(企業サステナビリティ報告指令)の概要とオムニバス法案による改訂

2026年8月20日時点

2025年2月、EU上場企業が続々とCSRDの初年度開示を行う中、欧州委員会はオムニバス法案を公表し、CSRDの簡素化を提案しました。その後、オムニバス法案を受けて、CSRDの適用時期の一部延期、適用対象企業の縮小、開示内容の簡素化が行われました。2026年7月に欧州委員会が採択した改訂版ESRSを含むCSRDの現在の状況について、日本企業に影響がある内容を中心にご紹介します。

1.CSRDとは何か

CSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive)とは、EUにおけるサステナビリティ情報の開示に関する規制です。CSRDは、ESRS(European Sustainability Reporting Standards)に従った環境・社会・ガバナンスの報告と第三者保証を要求しています。目的は、企業のサステナビリティ報告を充実させ、投資家や市民社会などのステークホルダーが比較可能で信頼性の高い情報を入手できるようにすることです。

CSRDは2023年1月に発効しましたが、2025年2月には欧州委員会がオムニバス法案を公表し、簡素化が行われました。

2.オムニバス法案とは何か

オムニバス法案とは、CSRDを含むEUにおけるサステナビリティ関連規制の簡素化を図る欧州委員会の提案です。目的は、サステナビリティ関連規制の簡素化により、EUの競争力を向上することにあります。

本法案を受け、2025年4月に適用時期を一部2年延期する「ストップ・ザ・クロック指令」が発効され、2026年3月に適用対象企業を縮小する「コンテンツ指令」が発効されました。さらに、2026年7月、開示内容を簡素化する改訂版ESRSが欧州委員会により採択されました。

CSRDは2023年発効後、2025~26年に適用2年延期・対象縮小・開示簡素化へ見直しが進む。

3.CSRDの日本企業への適用

CSRDと日本企業の関係は、①EU域内の子会社に対する域内適用、②日本親会社に対する域外適用、③CSRD適用対象外企業の3つに整理できます。EU域内適用企業は改訂版ESRSおよびEUタクソノミー、EU域外適用企業はESRS-40aまたは改訂版ESRSに基づいて開示します。また、CSRD適用対象外企業については、任意で開示をする場合に適用できるVS(Voluntary sustainability reporting standard)が設けられています。

日本企業のCSRD適用はEU子会社が2028年3月期、JP親会社が2029年3月期開始、対象外企業もある。

4.ESRSの改訂

ESRSは、CSRDに基づき企業が報告すべきサステナビリティ情報の具体的な開示内容を定めた報告基準です。

現行ESRSは2024年1月より適用が開始されていますが、オムニバス法案を受け、改訂が進められています。改訂版ESRSは、2026年7月に欧州委員会が採択済みで、EU理事会・欧州議会の異議申し立て期間を経て、2026年11月頃に発効見込みです。

ESRS改訂は2025年7月草案、同12月採択、2026年7月審査を経て、同11月ごろ発効見込み。

改訂の全体像

改訂版ESRSは、現行ESRSから必須データポイントを61%削減し、定性情報を中心に開示要求を大幅に簡素化しています。主要な改訂ポイントは以下の5つに分類することができます。

改訂版ESRSは必須データポイントを61%削減し、重要性重視・負担軽減・基準見直しを進める。

改訂ポイント1 マテリアリティ

マテリアリティ評価においては、企業の戦略や事業モデルなどの全般的な情報から重要なIROを特定する、トップダウン・アプローチを採用できることが明確化されました。また、開示は、重要でない情報は一部の例外を除き開示してはならないことが明文化されました。企業には、網羅的に情報を開示するのではなく、利用者の意思決定に重要な情報を的確に識別することが求められます。

改訂版ESRSはトップダウン評価を明記し、重要変化時のみ更新、非重要情報は原則非開示。

改訂ポイント2 負荷軽減措置

企業の実務負担を考慮し、報告の範囲や指標の情報収集範囲の限定や過度なコストや労力がかかる情報収集の免除など、負荷軽減措置が導入されました。企業は、各措置の適用条件と必要な追加開示を確認したうえで、どの措置を利用するか検討する必要があります。

改訂版ESRSは買収売却範囲、重要指標の限定、部分開示、JO除外、過度コスト免除等を容認。

改訂ポイント3 トピック別基準の見直し

環境・社会・ガバナンスの各トピック別基準について、大幅な開示要求の削減と伴に、実務上の課題を踏まえた見直しが行われました。例えば、GHG排出量の報告範囲のアプローチの柔軟性向上、汚染物質や人権インシデントなどに関する要求事項が明確化されています。企業は、従来のデータポイントとの対応関係を見直し、改訂版ESRSに基づいて開示事項を再マッピングする必要があります。

改訂版ESRSはGHG範囲の選択制、非1.5℃整合の明示、汚染・人権開示の対象明確化が柱。

改訂ポイント4 経過措置

企業の実務負担を考慮し、段階的に開示体制を整備し、情報収集し開示できるよう、一定期間に渡り一部の開示を免除する経過措置が設けられました。企業は、利用可能な経過措置を確認し、段階的な開示のロードマップを策定することが重要です。

Wave2企業は、初年度中心に比較情報や一部ESRS開示を猶予し、項目別に最大4年の経過措置がある。

改訂ポイント5 報告書の構造

改訂版ESRSでは、重要な情報を利用者に分かりやすく伝えるため、報告書の構造に関する自由度が高まりました。エグゼクティブサマリーを追加できるほか、EUタクソノミー開示や詳細情報を別添とすることも認められています。企業は、重要な情報を埋没させないよう、開示内容の削減と併せて報告書全体の構成を見直す必要があります。

改訂版ESRSは報告書にエグゼクティブサマリー追加やタクソノミー別添を認め、構成を柔軟化。

5.域外適用向け基準(ESRS-40a)

ESRS-40aは、CSRDの域外適用を受けるEU域外企業向けの開示基準です。 EFRAG(European Financial Reporting Advisory Group)が2026年7月に公開草案を公表しており、今後、欧州委員会の採択などを経て2028年1月からの適用開始が予定されています。

開発は2026年7月草案公表、2027年1月提出、同年後半採択見込みを経て、2028年1月適用開始予定。

ESRS-40aでは、企業が環境や社会に与えるインパクト・マテリアリティの観点からの開示が要求されます。基準開発は、改訂版ESRSを土台としつつ、ファイナンシャル・マテリアリティに関する要求事項の削除や、域外適用に必要な要求事項の追加などを行う形で進められています。

また、気候変動以外のトピックについて、報告範囲を「EU関連のインパクト」に限定できるMixed Approachオプションが提案されています。

ESRS-40aは域外適用向け基準で、改訂版ESRSを基にEU関連インパクトへ報告範囲を限定する案。

6.第三者保証

CSRDは、サステナビリティ情報の信頼性を確保するため、域内適用・域外適用いずれも適用初年度から独立した第三者による保証を受けることを求めています。

域内適用について従来計画されていた合理的保証への段階的な引上げは、オムニバス法案による見直しの中で削除されました。

7.企業が取るべき対応

改訂版ESRSにより開示要求は大幅に削減され、企業の実務負担は軽減されます。一方で、重要な情報の特定や軽減措置の利用について、企業自身による判断の比重はこれまで以上に高まります。したがって、単に従来の対応計画を縮小するのではなく、新たな適用要件と改訂版ESRSに基づき、マテリアリティ評価、データ収集、開示内容、保証対応を一体として見直すことが重要です。

また、一部の日本企業には、SSBJ基準への対応も見据えたグローバルな開示体制の構築が求められます。制度ごとに個別のプロセスを構築するのではなく、共通する情報、データ、内部統制を可能な限り一元化し、制度固有の要求を追加する形で対応することが効率的です。

改訂版ESRSの確定を受け、企業は「何を開示するか」だけでなく、「何を開示しないか」「どの軽減措置や経過措置を利用するか」を含めた方針を明確にする必要があります。そのため、以下の6つの観点から、CSRD対応計画を再点検することが推奨されます。

対応策は、現地法確認、重要性見直し、データ再整理、経過措置活用、保証人協議、SSBJ同時対応。

サステナビリティ開示・保証の日本および海外の最新規制動向

日本、ヨーロッパ、南北アメリカ、アジアパシフィックにおけるサステナビリティ情報の開示・保証の規制に関する最新動向を取りまとめています。

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