ニュースリリース
デロイト トーマツ グループ(東京都千代田区、グループCEO:木村研一、以下「デロイト トーマツ」)は、2025年3月期の有価証券報告書におけるサステナビリティ情報開示の状況について、本日レポートを公開しました。本レポートには、2025年6月末までに有価証券報告書を提出した3月期決算の東京証券取引所上場企業のうち、①過去3年にわたり決算期の変更なく提出している2,153社を対象にテキスト解析したAI調査と、②2025年3月末時点の時価総額が1兆円以上のプライム市場上場企業133社を対象に公認会計士が分析した専門家調査の2種類の調査が含まれています。
2023年3月期より、有価証券報告書に「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄が設けられており、本分析の対象には適用3年目を迎える企業が多数含まれています。また、現在、具体的な記載方法は開示府令等において規定されておらず、柔軟な記載が可能ですが、時価総額3兆円以上の企業は2027年3月期から、1兆円以上3兆円未満の企業は2028年3月期から、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が定める開示基準の適用義務化が検討されています。本分析からは、記載内容には更なる充実の余地があるものの、過年度よりも積極的な開示を行う傾向などがうかがえます。分析の概要は以下本文の通りですが、全文は下記レポートをご覧ください。
サステナビリティに関する記載量は3年で約1.5倍に増加
3月決算の上場企業における「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載量(文字数)は、2023年3月期から2025年3月期にかけて約1.5倍増加しており、多くの企業がサステナビリティ情報の開示を積極的に進めている傾向が見受けられる。プライム市場上場企業の中で時価総額別に分析した場合でもこの傾向は変わらず、また、時価総額が大きいほど記載量も多い(図表1)。特にサステナビリティ関連の評価項目を役員報酬に組み込んでいる企業の記載量が多い傾向にあり、サステナビリティ情報開示の更なる拡充に向けては、役員報酬制度の設計を含むガバナンスの強化が有効である可能性が示唆される。
気候関連の予想される財務的影響を具体的な金額で開示する時価総額1兆円以上のプライム上場企業は約2割
SSBJ基準で開示が求められている気候関連のリスク及び機会の予想される財務的影響については、炭素税の増加の影響や環境関連投資予定額などについて開示している企業が見られた。時価総額1兆円以上のプライム市場上場企業では、定量的な情報を開示した企業は、前期は約2割にとどまっていたが、当期は約4割の企業が開示を行っており、具体的な金額を開示している企業が約2割、大中小の金額的定義を示した上で影響度を大中小に分類して開示している企業が約2割であった。投資判断にあたり定量的な財務的影響の開示の有用性は高いと考えられるため、開示を行う企業の増加および開示の充実が期待される。
GHG排出量の実績値を開示する企業は増加傾向にあるが、時価総額1兆円以上のプライム上場企業で当期の実績値を開示する企業は約3割にとどまる
プライム・スタンダード市場において全ScopeでGHG排出量実績・削減目標ともに開示率が経年で増加傾向にある。排出量実績の算出が複雑なScope3についての開示も堅調に増加しており、特に今後SSBJ基準でScope別の開示が義務化される企業を含むプライム市場において、排出量実績の開示率が伸びている。(図表2)
時価総額1兆円以上のプライム市場上場企業のうち約4割が前期の実績値を開示しており、当期の実績値を開示する企業は約3割にとどまっている(図表3)。また、1期分のみを開示している企業が約4割で最も多い。取り組みの進捗状況などを明確に示す観点からは、当期を含む複数期分を適時に開示できるよう体制整備を進めていく必要があると考えられる。
リスク・機会、戦略、指標及び目標をカバーする一貫性のある開示が望まれる
有価証券報告書の「サステナビリティに関する考え方及び取組」では、サステナビリティ情報を開示する際、リスク、機会、戦略、目標、実績の項目について一貫性を持って記述することが適当と考えられる。そこで、上場企業における各項目の代表的な記載内容及び項目間の関連性をAIを用いて分析した。気候変動については、リスクや機会、戦略の記載は比較的充実しているが、それらを定量的にモニタリングするための目標及び実績の記載がGHG排出量関連に集中している。一方、人的資本については、戦略やそれをモニタリングするための目標及び実績は比較的記載されているが、開示府令上、明確に要求されていないリスクに関する記載が乏しい傾向が見られた。このような傾向は今後開示をさらに改善すべき余地が存在していることを示唆している。
【AI調査】
キーワード検索や生成AIによる機械的な情報抽出を行い、抽出結果の集計分析を行っています。キーワード検索による情報抽出では、原則として図表4に示した単語群のうち1つ以上が記載されている場合に、開示ありとして扱いました。なお、アルファベットについては、英単語先頭の大文字・小文字の違いを問わずに、単語が含まれている場合に開示ありとして扱っています。
テキスト解析は機械的に行っているため、機械処理による誤解析やデータの欠落の可能性があります。機械的なテキスト解析においては、文章から各種情報を抽出する際に生成AIを一部活用しており、生成AIの誤判定などによる誤りが含まれる可能性があります。また、データの欠落の例としては、有価証券報告書のXBRLデータのタグ情報に基づいたデータの抽出を行っているため、タグ情報と文章の不一致により分析対象となる開示が欠落している可能性や、画像形式で情報が埋め込まれている箇所は分析対象外とした影響が存在します。本分析はこうした限界を踏まえて利用される必要があります。
【専門家調査】
サステナビリティ領域を専門とする公認会計士が、目視で分析を行っています。
有価証券報告書のサステナビリティ情報の開示における具体的な記載方法は、現時点ではSSBJ基準のような詳細な定めはなく、柔軟な記載が可能とされています。そのため、開示状況の割合の算出にあたり、該当するSSBJ基準の開示要求に適切に準拠しているかどうかまでは評価しておらず、部分的あるいは形式的にでも開示要求に対応した開示がなされていると判断できる場合には、開示されているものとみなして集計しています。そのため、開示状況の割合は、SSBJ基準の各要求事項に準拠している企業の割合を示すものではありません。
デロイト トーマツ グループは、日本におけるデロイト アジア パシフィック リミテッドおよびデロイトネットワークのメンバーであるデロイト トーマツ合同会社ならびにそのグループ法人(有限責任監査法人トーマツ、デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社、デロイト トーマツ税理士法人、DT弁護士法人およびデロイト トーマツ グループ合同会社を含む)の総称です。デロイト トーマツ グループは、日本で最大級のプロフェッショナルグループのひとつであり、各法人がそれぞれの適用法令に従いプロフェッショナルサービスを提供しています。また、国内約30都市に2万人超の専門家を擁し、多国籍企業や主要な日本企業をクライアントとしています。詳細はデロイト トーマツ グループWebサイト、www.deloitte.com/jpをご覧ください。
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