デロイト トーマツ グループは、毎年10月を中心とした前後数カ月を「Impact Month」としている。デロイトの世界共通のパーパス「Making an impact that matters」に基づき、NPOとの協働によるボランティア活動や、社会課題、環境課題をテーマとしたワークショップなどを通して、社会に大きなインパクトを創出することを目指した取り組みだ。
2023年にスタートしたこの活動は年々規模を拡大しており、2023年には100のプログラム、延べ2,300人だったのが、2024年には延べ5,500人近くが参加し、2025年には130以上のボランティアプログラムが展開されている。
これらの活動は、社会への貢献だけでなく、参加するメンバー個人のウェルビーイング向上やチームビルディング、ロイヤリティ向上にもつながっているという。デロイト トーマツがなぜ、この「Impact Month」に力を注ぐのか。そして参加者はどのような経験や意識の変化を得たのか、主要な活動事例について、各プログラムを運営するメンバーに話を聞いた。
そもそも「Impact Month」はどのような経緯で始まったのか。その源流となったのは、東日本大震災以来10年間にわたり続けてきた復興支援活動だ。震災から10年を迎えるタイミングで、デロイト トーマツは利益を追求するだけでなく、社会や環境から享受しているものを積極的に還元する必要があるという議論が高まった。
まず、ボランティア休暇制度の導入を行ったが、取得者は限られた。ボランティアに関心はあるが、どのように始めてみればよいのかわからないというメンバーの声も聞こえてきた。そこで「社会や地球環境に貢献するためには、まず私たち自身が充実し、ウェルビーイングの状態にある必要がある」という考えをベースに、社会に貢献したいというメンバーの気持ちを後押し、社会参加への機会を提供する仕組みとして、2023年にImpact Monthを開始した。
Impact Monthではごみ拾い、古本の寄付、中高生を対象とした出張授業や職場体験プログラム、里山の整備など、幅広いプログラムが用意され、メンバーは自分が興味あるプログラムに参加できる。中には家族や友人、デロイト トーマツのアラムナイメンバーが参加できるプログラムも用意されており、職場の同僚を誘って参加するメンバーも少なくない。大切なのは、組織から強制されるのではなく、メンバー自身がプログラムを自ら選んで参加することだ。
各会場でボランティアとして参加し大会を支えた
2025年のImpact Monthは、9月に行われた東京2025世界陸上の運営ボランティアからスタートした。デロイトは世界陸上のWorld Athletics Supporterとして大会を支援している。大会前後の準備期間も含め、多くのデロイトメンバーがボランティア活動に参加し、アスリートたちの挑戦を支えた。
スポGOMI参加者からは自然に笑みがこぼれる
Impact Monthのプログラム中でも、特に高い人気を博し、年々規模を拡大しているのが「スポーツごみ拾い(スポGOMI)」だ。これは5人1組のチームで制限時間内に拾ったごみの量を競い合うというスポーツの要素を取り入れた清掃活動で、従来の社会奉仕活動を「競技」へと進化させた、日本発祥の新しいスポーツだ。
この活動を主導するデロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社 マネージングディレクターの濱野香織は、リモートワークが増える中で、スポGOMIが仕事ではなかなか接する機会のないメンバー同士のコミュニケーションのきっかけにもなっていると話す。
「監査チーム単位、ユニット単位で参加しているチームもありますが、普段は仕事の話しかしないメンバーとも、ざっくばらんに話せるようになったという声が寄せられています」
デロイト トーマツ リスクアドバイザリー合同会社 Finance Advisory & Operation マネージングディレクター / 濱野 香織
2024年は、3日間で累計900名超が参加し、合計440kgのゴミを回収した。プログラムはすぐに定員が埋まってしまうほどの人気を博しており、2025年はさらに規模を拡大して名古屋、大阪でも開催。累計1,200名超が参加し、合計616kgのゴミを回収した。
「参加者がごみを見つけた時の笑顔が印象的でした。まるで宝物を見つけたかのような反応で、楽しみながら取り組んでいるのが伝わってきました」
ごみ拾い中に、街の方から「うちの子も、こんな会社に入れたい」と声を掛けていただいたこともあったという。また昨年はクライアント企業の方が見学に来られ、その後にその企業でも同様の取り組みを始めるなど、インパクト創出という成果もあった。
荒川クリーンアップで集まったたくさんのゴミ
スポGOMIとは違った角度からごみ問題に向き合う活動として「荒川クリーンアップ」がある。これは「ごみ問題と向き合い、自然とともに生きる社会」の実現をビジョンに掲げ30年以上活動を続ける「NPO法人荒川クリーンエイドフォーラム(ACF)」と連携して実施しているボランティア活動だ。ACFによると、海域に流入するごみの5〜8割は陸域由来だと言われており、河川清掃は海に街ごみが流出するのを食い止める「ラストチャンス」となる。デロイト トーマツでは春・秋の年1回、荒川河川敷での清掃活動を実施している。
事務局としてこの活動に関わるデロイト トーマツ コンサルティング合同会社Corporate Planning, CSR シニアコンサルタントの玉川朝恵によると、秋の荒川クリーンアップには、毎年100人以上が参加しているという。
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社Corporate Planning, CSR シニアコンサルタント / 玉川 朝恵
「荒川清掃では、河川敷で草をかき分けながらごみを拾っていきます。ペットボトルが一番多いごみですが、中にはカヌーや自転車といった大型ごみや、普段なかなか目にしない注射器などのごみも見つかります」
実際にクリーンアップに参加すると、拾っても拾っても終わらないという無力感を感じるほど大量のごみがあるという現実に直面するという。その現実を身をもって知ることで、普段の自分の行動を省みる機会になる、と玉川はその意義を説明する。
本活動は、デロイト トーマツメンバーだけでなく、その家族や友人の参加も歓迎している。参加者アンケートでは「家族や友人に自分の会社が社会貢献していることを知ってもらえて、誇りに思った」という声が多く挙がった。
食やエシカル消費をテーマにした活動も展開されている。10月には、耕作放棄地の再生をはじめとする社会課題に取り組む農園や団体から仕入れた食材や、適切な労働条件、環境負荷への配慮といった要件を満たした食材を集めたマルシェを社内で開催した。デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー 合同会社シニアコンサルタントの谷川昌弥は、この取り組みの意義を次のように語る。
「耕作放棄地の問題など、地方や農家の課題はなかなか実感しづらいものです。そういった中で、地方の問題や農家の問題を自分ごととして意識し、自分たちの購買行動の変容にもつながるという意味で大きなインパクトがあると考えています」
またファイナンシャルアドバイザリーでは農園運営にも参画しており、その清掃や草刈りなどのプログラムも用意されている。この農園ボランティアは、農園で働くファイナンシャルアドバイザリー所属の障がいのあるメンバー(Diverse Abilities)と連携して実施している。こちらも単に農園をサポートするだけでなく「参加者の視座が上がることも大きな意義」だと谷川は説明する。
農園ボランティアでの草刈りの様子
地域のつながりがきっかけで仏具磨きのプログラムも
「普段、私たちは障がいある方々と接する機会は多くありません。農園ボランティアを通じて一緒に活動することで、お互いの理解が深まり、多様な人がいることを肌で感じられます」
デロイトトーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社P&Sシニアコンサルタント / 谷川 昌弥
Impact Monthは社会貢献活動を行うと同時に、デロイト トーマツ グループのメンバー、組織風土に確かな変化をもたらしている。単なるボランティアではなく、グループの一員であることを強く意識し、組織へのコミットメントを高める機会であると同時に、社会貢献を通じてメンバー一人ひとりのウェルビーイング向上にも寄与していることが、参加者アンケートから明らかになった。
デロイト トーマツは今後もImpact Monthの活動を拡充していく予定だ。提供されているプログラムの多くは東京が中心だが、東京以外のオフィスでも、独自のプログラムが数多く展開されている。今後はさらに全国各地に取り組みを広げていく予定だ。
運営メンバーは、「いずれはこうしたキャンペーンを会社が主導しなくても、一人ひとりが日常的に社会貢献を行うようになることが理想だ」と話す。そんな組織の理想像を実現するためにも、Impact Monthの活動により多くのメンバーを巻き込んでいくことを目指している。