都市によって算出手法は異なりますが、ロンドンにおけるナイトタイムエコノミーの経済規模は£40.1bn(約5.6兆円、Gross Value added; 付加価値の合計、2017年公表)、ニューヨークでは$29.1bn (約3.2兆円、Economic Output、2018年公表)と公表されており、その経済規模の大きさが注目されています。
*£=140円、$=110円で換算
このように、世界の主要都市ではナイトタイムエコノミーに関する統計の算出が進められているとともに、その経済規模を更に拡大するための様々な取組みが官民の両側から行われています。
日本においてはナイトタイムの活用に向けた議論が本格化し始めたという段階です。
現在のナイトタイムエコノミー振興をめぐる議論は、訪日外国人観光客の消費額を増大させるための戦略の一環で検討されています。
政府が「明日の日本を支える観光ビジョン」にて定めた、「2020年までに訪日旅行消費額8兆円」という目標を達成するため、観光庁は『「楽しい国 日本」の実現に向けた観光資源活性化に関する検討会議』の成果として、『「楽しい国 日本」の実現に向けて』の提言を公表しました。その中で、夜間帯における訪日外国人の消費拡大が課題として特定されました。
具体的な課題としては、以下の事項が挙げられています。
また、自民党では、「時間市場創出推進議員連盟(ナイトタイムエコノミー議連)」にて以下の項目に関する中間提言を行っており、ナイトタイムエコノミーを振興するためのより具体的な示唆が出されています。
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先に述べたように、ロンドンやニューヨークといった都市では、ナイトタイムエコノミーを活性化するために様々な施策を打ち出しています。本稿では、その一部をご紹介します。
【有力コンテンツ】
コンテンツの観点では、各都市がその地域固有で特徴的な文化を反映したコンテンツをアピールすることで、多くの観光客を誘致しています。
例えば、ニューヨークがエンターテインメントの集積地であることはあまりにも有名で、ブロードウェイにはミュージカルを観賞するために多くの観光客が世界中から訪れます。ロンドンも、ニューヨークに劣らないミュージカルの観劇で観光客を魅了しています。
また、欧米諸国には観劇の前後に、劇場の周辺で夕食をとる「プレ・ポストディナー」という文化が根付いており、夜の8時頃から始まるミュージカル観賞を中心に、飲食が出来る環境を整え消費を促しています。
ニューヨークのエンターテインメントといえば、ナイトクラブも有名です。特徴的なコンセプトを持った多様なニーズに対応するナイトクラブが整備されており、深夜まで賑わいが絶えることがありません。
【夜間交通】
ナイトタイムエコノミーの振興に欠かすことが出来ないと考えられる夜間交通については、地下鉄の24時間運行や、ライドシェア等の二次交通がニューヨーク、ロンドン、シドニー等では広く浸透しているため、時間を気にすることなくエンターテインメントを楽しめる環境が整っています。
【法規制と推進体制】
夜間はナイトクラブやショービジネスといった昼間とは異なる事業者が存在するとともに、夜間営業に係るライセンス制度や各種法規制が関係するため、ナイトタイムエコノミー振興に際しては、推進体制が重要となります。
その代表例が、ナイトメイヤーと呼ばれる役職の創設です。ナイトメイヤーは夜間帯における様々な利害関係者を調整することが主な役割で、ロンドンのNight Czar やアムステルダムのNight Mayorが広く知られています。
デロイト トーマツでは、Deloitteの海外ネットワークによる海外都市におけるナイトタイムエコノミーに関する成功事例や関連する法規制等のナレッジを数多く有しています。
デロイト トーマツは、企業のナイトタイムエコノミーに関するビジネス参入戦略の策定や事業計画の策定といったビジネス参入・事業化支援だけにとどまらず、法規制への対応やレピュテーションマネジメントなどのリスク管理の支援をおこないます。
また、ナイトタイムエコノミーの振興を検討する地方自治体に対しても、基本構想、基本方針策定支援業務などのサービスを提供します。