ネバダ州人事局(Nevada Department of Human Resources)が、2000年から2001年にかけて、SOGS(※)の調査基準に照らしてネバダ州のギャンブル依存症の推定有病率を算出した結果、ギャンブル依存症有病率は6.4%と推定されており、米国平均の推定有病率2~3%と比較すると約2倍以上にもなっています。
そのため、ギャンブル依存症対策等に対して拠出する社会的費用は他州よりも大きいと考えられます。
(※)SOGS: South Oaks Gambling Screen(米サウスオークス財団が開発したギャンブル依存症の簡易スクリーニングテスト)
<米国各州のギャンブル依存症有病率(調査基準:SOGS)>
1. ギャンブル依存症対策の体制
ネバダ州では、州の複数の行政機関とカジノオペレータを始めとする各種事業者、医療機関などが連携した体制を構築しています。また、州による補助金交付やカジノオペレータが資金を拠出する制度が整備されているため、ギャンブル依存症の調査・研究機関が多く、治療・相談に係る環境が整っています。
2. 法規制に基づくギャンブル依存症対策の一例
ネバダ州では、ネバダ州法等に基づき、カジノオペレータは以下のギャンブル依存症対策を実施しています。
① 入場制限・排除制度
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② 広告制限
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出所:ネバダ州政府等の公表情報よりデロイトトーマツ作成
3. カジノオペレータのギャンブル依存症対策の一例
米国では、全米ゲーミング協会がカジノオペレータに対し、ギャンブル依存症対策の推奨事項を定義しています。各カジノオペレータは、当該事項に基づいた対策を基本とし、独自の取組みを行っています。
① 入場規制
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② 教育・研修
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③ 広報・啓発
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④ 治療・相談関連
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出所:オペレータ等の公表情報よりデロイトトーマツ作成
4. ギャンブル依存症に係る治療・相談の一例
ネバダ州の治療・相談に係る取組み例として、ネバダ大学とネバダ州問題ギャンブル協議会の事例があります。
① ネバダ大学
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② ネバダ州問題ギャンブル協議会
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出所:ネバダ大学、ネバダ州問題ギャンブル協議会の公表情報等よりデロイトトーマツ作成
ネバダ州の特徴的な点としては、ゲーミング産業の健全性維持のため遵守すべき最低限の法規制を整えながらも、ゲーミング産業成長のため事業者間の自由競争を重視する政策を採用していることがあげられます。
そのため、行政による徹底した法規制ではなく、カジノオペレータによる自主的な取組み、カジノオペレータにより支援を受けた民間団体による取組みがギャンブル依存症対策活動の中心となっています。
米国ネバダ州では、行政、事業者、医療機関の連携によりギャンブル依存症対策の体制を構築し、民間機関に対する州の補助金やカジノオペレータが資金を拠出する制度が整っています。
日本では、ギャンブル等依存症対策基本法が2018年7月に可決・成立されました。本法は、国、地方自治体等の責務を明らかにするとともに、ギャンブル等依存症対策の基本事項等を定めることにより、安心・健全な社会の実現を目指して2018年10月5日より施行されています。
米国ネバダ州の事例と同様に、日本のIR参入事業者においても、主体的にギャンブル依存症対策について取組みを実施して社会的責任を果たす必要があると想定されます。