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製造オペレーションの変革に関する調査:デジタル技術を適用した変革をいかに実現するか

デロイトが経営幹部600名を対象に実施した調査は、製造オペレーションの変革、特にデジタル技術を適用した変革に伴い、製造業が人材獲得の困難を乗り越え、複雑な変革を管理し、事業リスクの軽減に取り組んでいる実態を明らかにしている。

日本語版発行に寄せて

本レポートは、Deloitte USが発行した「2025 Smart Manufacturing and Operations Survey」の日本語版である。レポート内容は、デロイトが2024年8月から9月にかけて米国に本社または事業拠点のある大手製造業に対して実施した調査結果に基づいており、製造オペレーション変革、特にデジタル技術を適用した変革の現在地と今後の展望を分析している。

米国の大手製造業では、製造オペレーションの変革が重要な経営アジェンダとして推進されている。本調査が示すとおり、変革のオーナーシップは最高執行責任者(COO)が51%、最高技術責任者(CTO)が38%と、経営幹部が担っている。経営主導の変革は、生産量の10%~20%増加や従業員の生産性の7%~20%向上といった、財務・業務の両面でのリターンを生み出しており、その成功体験がさらなる投資を後押しするという好循環が生まれている。

一方で、本調査が示す米国の状況と比較した場合、日本の製造業の状況はどうだろうか。依然として製造現場が主導する改善活動が根強く、その変革の範囲は個々の現場の個別最適にとどまり、本社による全体統制が十分に機能していない、その結果、スピードやスケールで後塵を拝し、相対的な競争優位性が低下している、というのが多くの日本の製造業の実態ではないだろうか。

本レポートが、日本の製造業における製造オペレーション変革への取り組みを加速させる一助となれば幸いである。

 

芳賀 圭吾
パートナー
産業機械・建設セクター スマートファクトリーイニシアティブリード
合同会社デロイト トーマツ

本稿は、Deloitte Consulting LLPが発表し、合同会社デロイト トーマツが翻訳・改訂したものである。和訳と英文「2025 Smart Manufacturing and Operations Survey」に相違がある場合は、原文を優先する。

 

製造オペレーションの変革は、自動化と分析技術によって設備全体からデータを取得し統合する取り組みである。製造オペレーションの変革によって、今日の不安定な市場環境に起因する課題を含め、生産能力や競争力に関する多くの難題を解決することが可能である。「インダストリー4.0」は長年にわたり野心的な構想を掲げてきたが、今ようやくその価値が現実のものとなりつつある。

デロイトは2024年8月から9月にかけて、米国に本社または事業拠点のある大手製造業の経営幹部600名を対象に調査を実施した(調査方法を参照)。工業製品、エネルギー・化学品、バイオ医薬品、自動車、消費財などの業界から得られた回答からは、製造オペレーションの変革に関する潮流が変化しつつあることが明らかになった。

調査結果は、この動向を取り入れている企業が、より高い俊敏性を持ち、人材獲得の魅力が増し、生産性も向上することを示している。その一方で、複雑な変革の管理や業務リスクの軽減など、製造オペレーションの変革に向けたシステムを導入する際の主要な課題も明らかになった。これらの課題を克服するために、経営幹部は基幹技術やデータアナリティクスに投資し、サイバーセキュリティのプロセスと管理体制にリソースを重点的に割り当て、従業員の能力開発に注力している。さらに、チェンジマネジメントを実施し企業変革を推進するための専任の社内チームが構築されている。 

製造オペレーションの変革が進んでいる

製造オペレーションの変革が生産性と企業成長に不可欠であるとの確信は、広く浸透し、さらに強まっている。調査対象である製造業の92%は、今後3年間で製造オペレーションの変革が競争力の主な原動力になると考えており、これは2019年の調査から6ポイント増加している。同様に、回答者の85%は、自社の製造のスマート化への取り組みにより、製品の製造方法が変革され、機敏性が向上し、製造領域での新たな人材確保が促進されると考えている。

製造オペレーションの変革への関心と投資は、製造業がその主要な導入利点を認識しているためである。製造オペレーションの変革に求める価値として、回答者の半数近く(49%)が業務上の利点を第1位に挙げ、第2位は僅差で財務上の利点(44%)であった。

図1: 製造オペレーションの変革は、企業全体にメリットをもたらすと経営幹部の85%以上は考えている

製造オペレーションの変革の価値が明確になりつつある

製造オペレーションの変革への関心と投資は、リターンの増加に伴い高まっている。製造オペレーションの変革への取り組みがどの経営指標に影響を与えたかについて、回答者は導入後の実質的な影響として、平均して生産量が10%から20%向上、従業員の生産性が7%から20%向上し、そして生産能力の活用余地が10%から15%増加したとの回答が得られた。

回答者は、製造オペレーションの変革への取り組みによる改善が、支援領域への投資拡大を後押ししていると指摘した。自社の成熟度について、品質管理、業務、継続的な改善、テクノロジーの領域で高い水準にある一方で、人的資本と保守管理は相対的に低いと回答している。現在の成熟度と目標とする成熟度のギャップ分析からは、人的資本、資材管理、保守管理の3つの領域に対して投資が必要な時期であることを示している。

図2: 製造オペレーションの変革に関連する各領域のうち、製造業は特に人的資本とテクノロジー領域の成熟度を向上させることを目標としている

成熟度が高まるにつれ、投資も拡大している

今後を見据え、製造業は人的資本を最大の改善対象としており、IT、データ取得、アナリティクス、インフラストラクチャにおけるアプリケーションの成熟度向上が僅差でそれに続いている。注目すべき点として、回答者の78%が改善活動に関する全体予算の20%以上を製造のスマート化への取り組みに割り当てている。また、88%が2026年度も投資を継続、または拡大させる予定である。当然ながら、投資規模は企業規模と相関しており、中小企業での投資額は少ない一方、大企業は桁違いに多額の投資を行う傾向がある。  

図3:回答者全体の78%が予算の少なくとも20%を製造オペレーション変革に充て、将来における投資配分額も拡大が見込まれる

製造業は製造オペレーションの変革に向けてどのような投資を行っているか

センサー、エッジおよびクラウドコンピューティング、サイバーセキュリティ、アナリティクスなどのテクノロジーの導入・連携・最適化は、製造業が製造オペレーションの変革をより早く、より先へと進めるための基盤を築いている。現在の重点は、製造オペレーションの変革に向けたテクノロジーとデータ基盤を確立することに置かれている。投資の状況からは、製造業における優先順位の実態が見えてくる。  

図4: 製造業は、アナリティクスと自動化に向けたデータ基盤の確立を最優先している

自動化への投資は人材不足の課題を解決するか

今後2年間における投資の優先領域として、回答者の半数近く(46%)が「プロセスの自動化」を第1位または第2位に挙げている。続いて、「フィジカルオートメーション」を挙げた回答者が37%、「工場の同期」を挙げた回答者は24%であった。自動化への投資は、熟練労働者不足を緩和し生産性を最大化するための重要な施策とみなされている。また、工場の同期は、労働力、資産、材料といった制約による影響を軽減できる。

人材確保の課題については、回答者の48%が生産管理と業務管理の役割を「中程度から重大な課題」と認識しており、計画・スケジューリングの役割についても46%が同様の回答をしている。人的資本に関する最大の懸念は、企業文化や安全衛生ではない。実際に、回答者の3分の1超(35%)は製造オペレーションの変革がもたらす可能性を最大化するために、従業員に必要なスキルとツールを提供し、次世代型の工場に適応させることを最大の懸念と位置付けている。The Manufacturing Instituteとの人材に関する共同調査(2024年)でも指摘されている通り、スキルギャップの問題は、求人への応募者不足という課題と並行して生じている、解決すべき課題となっている。

データ即時活用性と接続性への投資は、自動化促進にあたっての前提条件である

調査結果からは、製造オペレーションの変革に向けたテクノロジーの導入は、センサー、データ、フィジカルオートメーション、AIが焦点となることが明らかになった。今後2年間における投資の優先順位については、回答者の41%が工場自動化のためのハードウェア、同34%がアクティブセンサー、同28%がビジョンシステムを挙げている。これらの投資は、製造環境における監視・検知能力を高め、自動化をさらに推進させる。センシング、データ取得、自動化は、高度なアナリティクス、業務に関する深い洞察、生産効率の向上など、より高次の製造のスマート化の価値を実現するための前提条件である。こうした価値の一部はすでに顕在化しつつある。

設備やネットワークのレベルでは、回答者の57%がクラウドコンピューティング、同57%がデータアナリティクス、同46%が産業用IoTソリューション、同42%が5Gの利用が進んでいると述べている。また、大規模な展開とガバナンスの管理を目的として各種の社内基準が導入されており、回答者の45%がアーキテクチャ基準、同54%が統合データモデルを活用したデータ基準、同48%がトレーニングおよび導入に関する基準の導入について言及している。

Industrial DataOps Unified Namespaceのケーススタディで述べられているように、アーキテクチャ戦略と基準の導入は、データ管理を簡素化し、業務上の機敏性を高めることができる。

製造業では現在、製造オペレーションの変革に向けてAI基盤を構築中である

調査回答者は、製造オペレーションの変革に向けたAIの導入状況は中程度であると回答しており、多くの企業はAI機能を検討する初期段階にある。回答者の29%が設備やネットワークレベルでAIや機械学習を利用しており、同24%が同規模で生成AIを導入している。実験や概念実証にも適度な投資が行われており、同23%がAIや機械学習の試験導入を行っており、同38%が生成AIの試験導入を行っている。特に生成AIに関しては、デロイトの「State of Generative AI in the Enterprise Q4 survey(企業における生成AI導入状況に関する調査:第4四半期)」にある通り、製造業におけるテクノロジーとユースケースは依然として成熟途上の段階にあるが、企業や業界全体では、実験や概念実証および大規模な導入のケースが増えてきている。

本レポートの調査結果は、今後2年間の製造オペレーションの変革に関する投資先の優先順位に関する調査データと一致している。優先投資先は引き続きデータ関連に集中しており、回答者の40%がデータアナリティクス、同29%がクラウドコンピューティング、同29%がAI、同27%がIIoTを投資先として言及している。業務データや企業データの取得、連携、分析に必要な基盤技術への投資を通じて、製造業は製造のスマート化の成熟度を高めている。 

図5: 今後2年間での優先投資先は製造技術とソリューション関連に集中している

製造オペレーションの変革への移行における課題とリスクに対処する

製造オペレーションの変革の価値が注目を集めている中で、複雑な変革に伴う課題も浮き彫りになっている。変革を推進し、そのためのスキルを持つ人的資本を獲得する中で、製造業は戦略的リスク、人材不足、サイバーセキュリティ対策の強化といった課題に直面している。

複雑な変革における事業中断のリスクに対応する

製造オペレーションの変革を阻む主な障壁には、経営幹部の賛同、技術投資、リソースの制約、チェンジマネジメントと導入、価値の追跡と実現がある。二次的な障壁としては、労務管理、事業部門間の連携およびマクロ経済的な外部要因が挙げられる。 

図6: 経営幹部はさまざまなリスクに取り組んでいる。とりわけ不正アクセスや知的財産の盗難・オペレーションの中断などに代表される、オペレーショナルリスクの回答数が最大である。

リスク管理も優先事項の一つである。回答者の3分の2近く(65%)が、製造オペレーションの変革への取り組みに関する懸念事項として、オペレーショナルリスクを第1位または第2位に挙げている。オペレーショナルリスクには、取り組みの失敗による事業の中断や損失などが含まれる。特にオペレーショナルテクノロジー(OT)環境におけるリスクを詳しく見ると、回答者の55%が不正アクセスを、同47%が知的財産の盗難を、同46%が業務の混乱を極めて懸念すべき事項としている。戦略的リスクの軽減は優先順位リストの上位にランクインしている一方で、コンプライアンスリスクと財務リスクへの関心はやや低めである。

人材の拡充と従業員のスキル向上が急務である

製造業は深刻な人材不足に直面している。デロイトの「2024 Insights manufacturing study(2024年製造業調査)」にある通り、労働需要を満たすためには2033年までに最大380万人の新規従業員が必要であり、製造オペレーションの変革がその解決策の一端となる可能性がある。回答者の大多数(85%)は、製造のスマート化への取り組みが活気に満ちた有望なキャリアパスとして、業界に新たな人材を呼び込むという点に同意または強く同意している。

しかし、今日においても、製造オペレーションの変革に必要なデジタルスキルを既存の従業員に習得させる必要性は依然として残っている。回答者の半数近く(48%)が製造のスマート化に関する研修と導入基準を設けていると回答した一方で、人的資本は調査対象である製造オペレーションの変革の全カテゴリーの中で最も成熟度が低い水準にある。このような理由から、人的資本は製造業が改善への意欲を最も強く示すカテゴリーの一つとして挙げている。

製造オペレーションの変革に伴いサイバーセキュリティ対策を強化する

企業が業務やプロセスを改善するためにデータを取得・活用する製造のスマート化への取り組みを進めるにつれて、サイバーセキュリティ対策は喫緊の課題となっている。サイバーセキュリティツールは、製造環境と複数企業環境の間で共有されるケースもあり、回答者の44%が自社の製造部門向けのサイバーセキュリティソリューションは専用ツールと共有ツールを組み合わせたものであると述べている。サイバーセキュリティへの注目が高まる中、一部の製造業はIT予算の平均15.74%をサイバーセキュリティに充てている。

AI、バーチャルPLC、デジタルツインといった魅力的な最先端技術があるにもかかわらず、回答者の平均的な自己評価によるテクノロジーの成熟度は、テクノロジー、データ、自動化に関する業界基準を満たす水準にあるものの、それを超えてはいないことを示している。この点における改善余地は依然として非常に大きい。製造オペレーションの成熟度に関連して、人的資本に次いで2番目に大きい改善目標はテクノロジー強化であり、これにはサイバー攻撃からテクノロジーとデータを保護する必要性が含まれている。

図7: テクノロジーの成熟度は業界基準を達成しているが、まだ目標とのギャップがあり改善余地が大きい

経営幹部は、人材、プロセス、テクノロジーをどのように変革しているのか

価値創造と変革の実現に向けて、製造業はテクノロジーエコシステム、人材、企業プロセス全体において変革を促進する優れたアプローチを追求している。

基幹技術と新興技術を導入する

多くの製造業は、センサー、クラウド、エッジコンピューティング、AIなどのコア技術といった基幹技術に加えて、バーチャルPLC、ロボティクス、シミュレーションなどの新興技術の導入を進めている。しかし、回答者によると、現在の戦略的アプローチは、最新のイノベーションを採用することよりも、製造オペレーションの変革に向けた基幹システムへの投資と導入に重点が置かれている。今後2年間での優先投資先となるシステムとして、回答者の35%が高度な生産スケジューリング、同33%が製造実行システム、同28%が品質管理を第1位または第2位に挙げている。

基幹システムへの投資は、ソリューションへの投資と並行して実施されており、回答者の40%がデータアナリティクスを今後2年間での優先投資先の第1位または第2位に挙げている。ビジョンシステム、工場自動化のためのハードウェア、アクティブセンサーなど、導入されている他のテクノロジーのほとんどがデータを生成または活用するため、データアナリティクスのソリューションが必要になる。アナリティクスを活用して業務とサイバーフィジカルシステムを可視化することにより、製造業は広範な変革を追求するための基盤を構築できる。

大量のデータや接続されたシステムは、価値を生み出す一方で、サイバーセキュリティリスクも生み出す。幸いにも、回答者はサイバーセキュリティ対策に継続的に注力していることを示している。回答者の68%が過去1年間に製造のスマート化の技術スタックに対するサイバーセキュリティリスク評価または成熟度評価を実施したと回答している。さらに、接続されたシステムが新たなサイバーセキュリティリスクを生み出す中、デロイトの「2024 Global Future of Cyber survey」調査の回答者の91%が過去1年間に1件以上のサイバーセキュリティ侵害を経験したと回答している。この調査では、回答者の72~74%が全社的なサイバーセキュリティ対策の重点として、内部および外部の侵入テストと脆弱性評価を挙げている。興味深い結果として、新しいテクノロジーソリューションを導入する際に、セキュアな設計を強制的に適用または組み込んでいるかという質問に対しては、26%が「導入に遅延を招かない場合に限る」と回答している。このことから、サイバーセキュリティの領域においても、生産性が一貫した優先事項となっていることが読み取れる。

図8: サイバーリスクは過去1年間でリスク評価を完了したものが65%あるため、全体的なリスクのランク付けにおいて優先順位が低くなっている

人材の拡充と従業員のスキル向上を実施する

従業員のデジタルスキルとデジタル能力を強化するための方法として最も多くが挙げたのは、新規人材の採用(68%)である。また、経営幹部を含む従業員のスキル向上の必要性も認識されている。回答者の半数以上(53%)が経営幹部向けの研修を実施していると回答し、同43%がベンダーや第三者が開発した研修を利用している。同40%が短期的な能力補完のために契約社員や派遣社員を利用すると回答している。

人材への投資やスキル向上は社内で実施されている一方で、製造業は製造オペレーションの変革や業務の一部、特に自社が中核的な強みを持たない分野については、アウトソーシングする方法を模索してきた。

回答者の69~72%が、IT、OT、データサイエンスおよびエンジニアリング、アプリケーション開発、サイバーセキュリティといったテクノロジーに重点を置いた領域で熟練した人材の採用に中程度から大きな課題を抱えていると回答している。そのため、現在製造業の65~70%が、OT、IT、サイバーセキュリティ、アナリティクスおよびAI、自動化の導入を専門に担当する役割を含め、テクノロジー、データ、サイバーセキュリティに関する多くの業務をアウトソーシングしている。特にサイバーセキュリティの領域では、回答者の69%がサイバーセキュリティの検出機能(例:セキュリティオペレーションセンター)を第三者に依存しており、同73%がサイバーセキュリティイベントの対応において第三者の支援を利用している。

今後2年間でアウトソーシングが変化するかどうかについては、現在多くの役割をアウトソーシングしていない製造業は、その方針を維持し、社内の人材を活用する傾向がある。逆に、既に大幅なアウトソーシングを実施している製造業は、今後もそれを継続すると回答している。どちらのアプローチも、製造のスマート化の人材ニーズを満たすための有効な選択肢である。

専任のサポート体制を維持するために社内の人材を活用することを選択した製造業は、業界横断で人材確保交渉を行い、人材不足の分野で求職者を引き付ける必要がある。役割をアウトソーシングする製造業にとってのメリットは、リソースの細分化、タスクや時間単位での雇用、幅広い分野での専門知識などがある。時間あたりのコストは高くなる可能性があるが、社内の人材を活用する場合よりも全体的なコストは抑えられる。

図9: 製造業は製造オペレーションの重点領域、とくにIT全般やサイバーセキュリティ、データサイエンス/データエンジニアリング、アプリケーション開発のスキル不足に直面しているが、それを補う熟練労働者の雇用にも課題がある
図10: 製造業の一部は、テクノロジー人材のギャップを埋めるために外部のサービスプロバイダーを利用している

企業全体で変革的なプロセスの変更はどのように推進されているのか

製造オペレーションの変革のためのテクノロジーの導入・実装は、プロセスや業務に広範な変化をもたらす。その変化は工場、ネットワーク、サプライチェーン、IT/OT環境を横断して行われるため、回答者の半数以上(52%)が製造オペレーションの変革への取り組みに関する調査・策定・展開を担う専門チームまたはワーキンググループを構築している。その他のチェンジマネジメント活動には、同45%が製造オペレーションの変革がもたらす影響を従業員と顧客に伝えるプロセスの構築、同44%がセンター・オブ・エクセレンスの構築、同42%が目標に対する進捗を評価するための価値目標と測定目標の策定などが挙げられる。

技術の導入と管理を第三者に大きく依存しているにもかかわらず、製造オペレーションの変革の取り組みにおけるチェンジマネジメントの管理支援に第三者を利用した回答者はわずか32.5%であったことは、注目すべき結果である。つまり、大半の製造業は製造のスマート化の変革には社内の人材を主体として推進し、人材確保が困難な活動については外部からの支援に頼っている。

製造オペレーションの変革への取り組みの最終責任者は誰か。回答者の半数以上(51%)は、最高執行責任者(Chief Operating Officer:以下「COO」)や業務担当部長などの業務部門のリーダーが主体的に推進していると回答している。同38%は最高技術責任者(Chief Technology Officer:以下「CTO」)などの技術管理責任者が主導していると回答した。この調査結果は多くの製造業が直面している人材面の課題と一致しており、IT部門と業務部門が協力する必要があることを裏付けている。COOはスマートな製造環境に必要なスキルを備えた人材の確保に重点を置いている。CTOはスマートな業務を可能にするエコシステムを構築・維持するためのテクノロジー人材を求めている。

図11: IT部門とオペレーション部門が製造オペレーションの変革における責任を共有する

製造オペレーションの変革の構想は実現可能であり、その取り組みが継続している

2017年当時、製造オペレーションの変革という構想が注目され始めたばかりであった。経営の俊敏性を実現するためにデータとシステムを連携させる可能性は明らかであり、技術革新の動向からは、製造オペレーションの変革を実現できるツールが登場する兆しがあった。製造オペレーションの変革は、当時は単なる願望や構想にすぎなかった。

今日、製造オペレーションの変革は、それが生み出す戦略的・業務的価値が広く認知されているため、あらゆる業界の製造業にとって最優先事項の一つになっている。しかし、製造業は複雑な変革の管理、業務リスクの軽減、人材不足への対応など、さまざまな課題に直面している。これらの課題を解決するため、経営幹部は中核となる製造システム、データアナリティクス、サイバーセキュリティ対策に投資している。また、従業員のスキル向上を重視し、変革を推進するための社内の専門チームを構築している。こうした戦略を取り入れることで、製造オペレーションの変革の複雑さを乗り越え、多面的な効果を享受することができる。

調査方法

本レポートおよび図表に記載されている全ての統計データは、2024年8月から9月にかけてデロイトが実施した「2025 Smart Manufacturing Survey(2025年製造オペレーションの変革に関する調査)」の結果に基づくものである。本調査の回答者総数は600名である。本レポートおよび図表における比率の数値は四捨五入してあるため、合計しても100%にならない場合がある。

回答者は、年間売上高が5億米ドル以上、従業員数が1,000名以上、米国に本社または事業拠点を有する企業の経営幹部である。対象企業には、消費財、工業製品・建設、エネルギー・化学、鉱業・金属、自動車、運輸、航空、ライフサイエンス、テクノロジーなどの業界が含まれる。

発行人

赤坂 直樹
産業機械・建設セクターリーダー
合同会社デロイト トーマツ
パートナー

芳賀 圭吾
産業機械・建設セクター スマートファクトリーイニシアティブリード
合同会社デロイト トーマツ
パートナー

川崎 拓人
産業機械・建設セクター
合同会社デロイト トーマツ
マネジャー

執筆者

Deloitte US
Tim Gaus
Principal
Smart Manufacturing
Business Leader

Deloitte US
Michael Schlotterbeck
Principal
Industrial Products and Construction leader

謝辞

本レポートの執筆にあたり、調査作成、データ分析、およびインサイト開発に多大に貢献したChris Culver、April Goya、Jason Hunt、Leslie Koff、Chutian Li、Laura McGoff、Ryan Rieboldt、David Levinに感謝の意を表する。また、編集とデザインに協力したJustin Hienz、Andy Bayiates、Molly Piersolにも感謝申し上げる。

表紙デザイン:Alexis Werbeck、Getty Images

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