「保育政策の新たな方向性」(令和6年12月,こども家庭庁)では、保育政策において「量から質への転換」の推進を目指しています。当法人が実施した令和6年度子ども・子育て支援調査研究事業「保育の質や保育所等の職員配置に係る指標の在り方に関する調査研究」の調査結果を踏まえ、保育における職員配置基準に関する国際的な情報の収集とともに、「保育政策の新たな方向性」に基づき、今後の保育における職員配置基準のための実証研究の実施に向けた示唆をまとめると共に、実施のための調査設計(案)の策定を行いました。
※本調査研究は令和7年度子ども・子育て支援等推進調査研究事業で実施したものです。
女性の就業率の上昇を踏まえた保育の受け皿整備の成果として待機児童の解消は課題に残りつつも保育の量の拡大が進む一方、こども家庭庁は「保育政策の新たな方向性」(令和6年12月)を公表し、令和7年度~10年度末を見据え、保育政策では「量から質への転換」の推進を目指しています。その上で、「こども未来戦略(加速化プラン)」に基づき、令和6年度から4・5歳児の職員配置基準は30対1から25対1、令和7年度から1歳児の配置基準が6対1から5対へ改善され、これに対応する加算措置の創設と職員配置における最低基準の改正が行われました。本調査はこども家庭庁令和6年度子ども・子育て支援調査研究事業「保育の質や保育所等の職員配置に係る指標の在り方に関する調査研究」(以下、「令和6年度調査研究」と記す)の調査結果を踏まえ、保育における職員配置基準に関する国際的な情報の収集を行うとともに、「保育政策の新たな方向性」に基づき、今後の保育における職員配置基準のための実証研究の実施に向けた示唆をまとめると共に、実施のための調査設計(案)の策定をすることを目指しています。
調査A:文献調査
① 調査A-1:先行研究のまとめ
保育分野における職員の配置基準やこども対保育士・保育者等の比率が保育の質やこどもの発達等に影響について研究されている報告書・学術論文を整理し、保育分野における職員の配置基準に関連する国際的な動向について整理しました。
② 調査A-2:諸外国調査
令和6年度調査研究で必要とされた3か国(ニュージーランド、韓国、デンマーク)を対象に、保育所の制度、保育士資格要件、配置基準等の実態を調査しました。その調査結果を踏まえ、令和6年度調査研究及び本調査研究で対象とした計9か国(イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン、アメリカ、シンガポール、韓国、ニュージーランド、デンマーク)を対象に、深堀調査として、①保育士以外の配置基準、②資格階層別の配置、③時間帯別の配置、④保育サービス別の配置について追加調査・整理し、日本の配置基準検討に資する考え方を整理しました。
調査B:ヒアリング調査
① 調査B-1
保育業務等の把握・整理及び現場の状況把握を行うため、検討委員会の委員へプレ・ヒアリングを実施し、その後認可保育所及び認定こども園の3施設でプレ・タイムスタディ調査を実施しました。調査結果に基づき、保育士等が行う保育業務の整理とともに、タイムスタディ調査に向けた改善ポイントについて整理しました。
② 調査B-2
実証研究の調査設計にあたり、保育分野または対人援助業務でタイムスタディの調査研究の実績のある学識有識者等にヒアリングを行い、タイムスタディ調査の調査設計(案)の参考情報としました。
調査A-1では、こども対保育士等の比率が発達に与える影響に関する実証研究は少なく、科学的に確定的な結論は得られませんでした。他方、当該比率は保育の質を支える重要な指標の一つと位置付けられており、年齢別の推奨基準を提示する文献を4件確認しました。調査A-2では、調査対象国の計9か国は、法令またはそれに準拠する規則等により年齢別配置基準を定め(スウェーデンは一人当たりの比率ではなくグループ規模を規定)、国・州レベルで比率を規定していました。調査対象国では、各国の保育制度の目標の達成のために、職員の配置基準に関しては、保育所に勤務する職員で配置基準を設ける、保育士に資格階層の配置基準を設ける、保育の時間帯別の配置をする、保育サービス別の配置等をそれぞれ規定し、こどもたちの年齢・発達に応じた安全な保育サービスができるよう規定されていることがわかりました。諸外国における保育分野の制度や保育士資格要件の特性を踏まえた適用に留意しつつ、今後の日本の職員配置基準の検討に資する一助となり得ます。
調査B-1では、保育所等で行ったプレ・タイムスタディ調査の結果より、保育業務を40項目に整理しました。調査B-2の学識有識者等ヒアリング調査を行い、調査B-1・B-2の両結果を踏まえ、令和8年度に実施するタイムスタディ調査の実証研究の調査設計(案)を策定しました。保育士の配置基準の検討においては、タイムスタディ調査に加え、位置測位などの客観データの併用により質・安全の検討を深化させるとともに、開所時間や休暇取得を見込む要員、時間帯・季節変動、コンタクト/ノンコンタクト業務、経験差を考慮した弾力的な配置も論点として重要です。
有限責任監査法人トーマツ
ヘルスケア
財満 信子|シニアマネジャー
山田 圭之介(看護師・保健師)
高橋 真代 (看護師・助産師・保健師)
坪井 優佳
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※上記の社名・役職は 2026/04時点のものとなります。