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業界展望 2026 消費財

消費財業界に向けた7つの提言

近年、脱グローバル化やAI(人工知能)といった要因が、消費財業界にこれまでにないスピードで影響を与えている。これまで業界の常識とされてきた「幅広さ」、「規模感」、「最適化」の必要性は、「集中」、「スピード」、「アジリティ」へのニーズによって揺らいでいる。2026年において、消費財企業の意思決定者は何を最優先課題とすべきか。

本稿では、世界の消費財企業の経営幹部300人を対象とした調査から得られたインサイトに基づき、経営層の議論のきっかけとなる7つの提言、すなわち2026年の戦略策定に向けて触媒となる「プロボケーション」を示している。

多くの消費者は、もはや適正な価格で十分な価値を得ているとは感じていない。DeloitteのConsumerSignals調査では、世界の消費者の47%、また高所得世帯の35%が「バリューシーカー:価値志向の消費者」、すなわちコスト意識を重視し、利便性よりも割引やお得感を重視する人々であることが示された。消費財企業の経営層は、バリューシーカーの存在は長期的な構造的課題であり、このような消費者行動の変化全般が、販売数量の増加と売上拡大へ向けた最大の課題であると捉えている。

今後の成長に向けては、バリュー認識型の価格設定(単なるコスト積み上げではなく、消費者へ何らかの付加価値を提供し、価格を設定するアプローチ)とコスト認識型の価格設定(低価格など消費者が実利を感じる点に価値を絞って商品を 提供するアプローチ)を適切に使い分け、低価格からプレミアムまであらゆる価格帯で消費者の「期待以上の価値」を提供することが重要である。

脱グローバル化への移行に伴い、貿易政策や国際関係が重要なリスク要因となっており、規模拡大と最適化を追求してきた企業ほど競争環境の一層の激化に直面している。世界が継続して変化し続ける状況下においては、能力や資本を迅速にシフトできる、より俊敏な組織の方が、より多くの選択肢を持つことができる。

多くの消費財企業がすでに変革を進めており、今回の調査対象となった消費財企業の全経営層が何らかの適応策を講じていることが明らかになった。主な戦略として、政策コストへのエクスポージャーを削減すべく、国内生産の増加や、貿易政策の影響を受けにくい商品構成への調整などの対応が行われている。

消費財企業は、幅広いカテゴリーを網羅するコングロマリット型から、事業の選択と集中により焦点を絞ったカテゴリーキラー型のポートフォリオへと移行している。

効率化、イノベーションサイクルの短縮、そしてより焦点を絞ったモデル構築により、特定事業で消費者との関係性強化を図る一方、注力領域に当てはまらない低成長カテゴリーから撤退し、強化領域である高成長事業の買収でポートフォリオを再構築している。また、調査対象企業の半数は、SKU(在庫管理単位)の合理化を計画しており、より詳細なレベルでの事業の精緻化が進んでいることが示された。

消費財企業は、スピードとアジリティを備えた文化を醸成し、新たな競争環境や強化領域に集約されたポートフォリオに適応するため、組織構造のシンプル化を目指している。

シンプルな組織構造は、組織の透明性を高め、タスクの責任の所在を明確にする。さらに、重要なデータやテクノロジーを選別してコスト要因を可視化し、最終的には蓄積した情報に基づいた迅速な意思決定を促進する。これらを推進するために、多くの消費財企業がAIの活用、中核機能のアウトソーシング、センター・オブ・エクセレンス(CoE)の設置を進めている。

雇用拡大は、組織成長の兆候とは見なされなくなってきている。調査対象の消費財企業の経営幹部の大半は、2026年にコスト削減の重要性が一段と高まることに同意しており、主要コストである労働力・人件費の領域は、新たなビジネスモデルの生産性議論のテーマとして不可欠である。

AI投資による生産性向上により、雇用拡大を伴わない成長が実現可能となるが、それは必ずしも企業におけるレイオフにつながるとは限らない。今後、AIにより業務の生産性を高めつつ、従業員の創造的業務時間を創出するなど、組織成長に向けた役割分担の再設計が重要となる。

小売企業は、現代の商取引に不可欠な消費者データの収集で優位に立っており、消費財企業との関係がこれまでと違った形で変化している。消費財企業の多くが、小売企業とのより深い協業(データ共有、共同イノベーション、共同事業計画など)で成果を上げ、さらなる連携を模索している。

一方で、バリューチェーンの再交渉、共同事業計画の構築における最大の障壁として両者の目標の不一致などが挙げられ、解決が求められている。

両者は、協業強化によるさらなる商業的な成功に向けて、価格設定、初期段階の商品イノベーション、コスト削減などで協業機会の探索、AI等の活用による消費者へのより高い価値提供の実現方法の探求を共に進めていくべきである。

消費財企業は、AI活用の有望領域を商品イノベーションとマーケティングと捉え、販売数量の増加と売上拡大のための最重要分野としている。すでに多くの企業がAIを新たな商品イノベーションや成長機会の特定に活用している。一方で、消費者側のAI利用が急速に進み、エージェンティックコマースなど生成AIを介した購買が拡大しているにもかかわらず、本調査においては、「生成AIを使って商品を調査・購入する消費者への最適なリーチや影響・マーケティング手法を模索している」と回答した企業は31%にとどまり、十分な対応ができていない状況が示された。

今後、消費者の購買ジャーニーがエージェンティックコマースへ移行するにつれ、自社商品が、主要小売のプラットフォームに採用され、AI経由でアクセス可能な即時決済機能により購入可能であることがより重要となる。こうしたエージェンティックコマースなど新たな商慣習に迅速に適応した消費財企業が、競争優位を確立できるだろう。

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