銀行のAIジャーニーにおいて最前線に立つAIエージェントだが、銀行業務へのエージェント型AI導入には新たな思考と、既存のプロセスおよびワークフローの根本的な再設計が求められる。
エージェント型AI革命が到来している。Amazon1、Google2、Microsoft3、NVIDIA4、Salesforce5といった大手テクノロジー企業は自社製品にエージェント型AIを組み込んでおり、インテリジェント・オートメーションにおける大きな変革の兆しとなる可能性がある。
AIエージェントは独立して推論し、複雑なタスクを実行して目標に到達できるため、融資業務、トレジャリー業務、不正検知業務など多くの銀行業務の効率を向上させる6。エージェント型AIへの移行は銀行業務の自動化における自然な進歩であり、エージェント型AIは多くの点で機械学習、従来型のAIモデル、生成AIによって構築された基盤をより発展・強化するものである。
しかし、銀行におけるエージェント型AIの適用はまだ始まったばかりである。考慮すべき主な事項としては規制上の課題、モデルリスク、アクセス制御の要件、プライバシーの複雑さ、倫理的考慮、データ起因のバイアスがある7。加えて、エージェント型AIツールや他システムとの通信規格が標準化されていないという問題も加わる。また、既存のレガシーシステムや脆弱なデータ統合基盤は導入をより複雑にする可能性がある。多くのバンキング・プロセスではロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)のフレームワークや、機械学習、生成AIによる自律性の限定されたワークフローにエージェント型AIを組み込むため、大規模な見直しが必要になることが予想される。
それでも銀行にとってエージェント型AIの採用は待ったなしの状況である。銀行がこの変革をどのように実現し得るかを理解するため、デロイト内外の専門家に詳細なインタビューを実施した(方法論参照)。このテクノロジーを最大限に活用するには、新たな戦略的な取り組みが求められるかもしれない。また説得力を持って可能性を実証するには、インパクトが大きくリスクの低いユースケースを早期に選定することが不可欠となる。
エージェント型AIシステムは、主体性、すなわち定められた成果を目指して自ら判断し、行動を起こす能力を持つ複数の自律型AIエージェントで構成される8。大規模言語モデル(LLM)に基づいて構築され9、検索拡張生成(RAG)などの技術で強化されたこれらのAIエージェントは10人間による監視をほとんど、あるいは全く受けず能動的に機能するよう設計されている。また、リアルタイムで計画、実行、適応することができるため、他のAIモデルとは一線を画している(図1)。
AIエージェントはその複雑さもさまざまである11。現時点では、導入が容易な検索やインサイト生成に重点を置いたシンプルなAIエージェントが主流となっている(図2)。対照的に、複雑なワークフローを管理する完全自律型のAIエージェントは、多くの場合でカスタマイズされたソリューションやプロセスの再設計を必要とするため、主流になるのはこれからとなる。
このような多様なAIエージェントをマルチエージェント・ネットワーク内で組み合わせることにより、例えばAIエージェント①が公開情報を取得し、AIエージェント②がリスクのスコアリングを行い、AIエージェント③が規制に関するアップデートを提出することで、継続的な顧客確認(KYC)のメンテナンスが実行できる(人間の手をかけずに、監査記録と上書きを行う)。事実、Fulcrum Digital12やGoogle13などの企業はマルチエージェントによるKYCワークフローを支援する、エージェント型AIのソリューションを提供している。
ただし、マルチエージェント・ネットワーク内でよりシームレスな対話を促進するには、AIエージェント環境に適した新しいプロトコルが要求される可能性がある。Model Context Protocol(MCP)は特定の環境内で複数のAIエージェントがデータやツール、そして他のAIエージェントと対話・通信する方法を定義するオープンスタンダードの一つであり、異なる機能を持つAIエージェント同士が情報を交換して意思決定に協力するためのルールと構造を規定する14。Intesa Sanpaoloはこれらを踏まえ、リソース管理の最適化とさまざまなバンキング領域での適応性を強化することを目的としたマルチエージェント・システム・フレームワーク「HEnRY」を開発している15。
その可能性に着目した一部の銀行は、すでにエージェント型AI技術を使い始めている。例えば、BNYはコーディングや支払い指示の検証といった分野でAIエージェントが自律的に業務を遂行する取り組みを進めている16。同様にMastercard17、PayPal18、Visa19などの決済サービスプロバイダーも、AIエージェントが顧客に代わって取引する「エージェントコマース」の実証実験を行っている。またJPモルガン・チェースは法務分野で、既存の言語モデルに基づくエージェント型AIソリューション「LAW(Legal Agentic Workflows for Custody and Fund Services Contracts)」を導入した20。LAWは複数の専門AIエージェントと法務分野専門のツールを備えており、法務チームは複雑な法的文書に対するさまざまな問い合わせに対して92.9%の精度で処理している21。
一部の大手金融機関では、エージェント型AIによる機会を捉えるため積極的にチーム強化を行っており22、専門人材への需要が金融業界内で高まりを見せている23。対象は銀行のバリューチェーン全体に及び、さまざまな分野や機能にわたってより高度な自律化の機会をもたらし得る。アカウントサービスなど、すでに自動化が一定進んでいる分野ではエージェント型AIによる恩恵が大きいと見られる一方、クライアントオンボーディングなど対話や信頼関係構築が必要な分野では、エージェント型AIによるインパクトは限定的かもしれない。
従来のAIボットは、アンチ・マネー・ロンダリング(AML)に関する疑わしい活動を検知することはできるが、多くの場合で人間の介入が必要となる。エージェント型AIはデータセットを独自に分析し、新たな不正パターンから学習し、リアルタイムのマーケット情報に基づき判断することでこのプロセスを大きく変革できる可能性がある。AMLの調査に取り組むマルチエージェント・システムの例では(図3)、AIエージェントAが監視システムで生成されたアラートを確認して違反ルールを特定し、AIエージェントBが現在および過去のトランザクション履歴を確認する。AIエージェントA・Bの分析を元に、AIエージェントCが調査結果を文書化して必要な手順を推奨する。この時点で人間は調査結果のレポートを検証し、別のAIエージェントが規制当局へ不審な動きがあった報告と通貨取引レポートを自律的に提出することも可能である。
これらのAIエージェントは、人間が最終レポートを検証して承認する準備が整うまで、人間の介入なしにAIエージェント間でコミュニケーションや意思決定ができる。一つのAIエージェントが自律的にデューデリジェンスを実行し、RAGやMCPなどの技術を活用して財務データへシームレスにアクセスして分析している間に、他のAIエージェントは同時並行的に割り当てられたタスクの遂行を行うことが可能である。
このアプローチは業務効率を高め、人間が見逃していた違法行為をも明らかにできるかもしれない。
すべてのエージェント型AIのユースケースが同様の価値をもたらすわけではないため、銀行は適用範囲、複雑性、実装にかかる労力、規制上の考慮事項に基づき戦略的に導入する必要がある24。既存のAIトランスフォーメーションの経験は検討初期段階では活用できるが、具体的な成果を得るまでには業務内容と戦略目標に合った実践的なロードマップが必要である。現時点で銀行は、3つのアプローチからエージェント型AIをワークフローまたはより広範な機能に導入できる。
1. スマートオーバーレイ: 早い段階で取ることができる最も効果的なアプローチの一つに、すでに明確に定義されたプロセスと基盤技術にAIエージェントを「ラップ(wrap)」する方法がある。複雑かつ高コストな全面見直しを行うことなく、銀行のレガシーシステム上でシームレスに動作する、エージェント型AIを活用したスマートで応答性の高いインターフェースが導入できる25。既存インフラに固有のロジックを用いてAPIで情報交換し、MCPなどのプロトコルを用いてタスクを実行する場合もある。銀行に明確な標準作業手順書(SOP)がある場合は特定アクションに焦点を当てたAIエージェントを導入し、SOPをスクリプトのように利用することで一貫性とコンプライアンスを確保することができる。このアプローチであれば既存のプロセスに関するノウハウを最大限に活用し、AIエージェントの行動に対するセーフガードを容易に組み込むことができる。
既存のRPAフレームワークを活用することも有効なアプローチになり得る。大量かつ反復的な業務に用いられるRPAは、AIエージェントの導入基盤としても適している。例えばトレジャリー業務においてRPAが日常的に管理している資金移動の機能にAIエージェントを導入することで、従来の単純な自動処理から動的な流動性最適化(例えば価格決定やヘッジ戦略の選定など)へと機能を進化させることが可能となる。このような追加機能が運用効率化や戦略的意思決定にインパクトをもたらすかもしれない。
スマートオーバーレイのアプローチは特に反復性・複雑性・大量データ・低リスクといった特徴を持つインパクトの大きいワークフローに焦点を置くことで、銀行は大規模なシステムを置き換えることなく短期間で生産性を向上させられる可能性がある(図4)。
2. エージェント型AIを前提とした設計: AIエージェントを既存のプロセスに重ねるだけでは不十分な場合がある。つまり、レガシーシステムでは自律性と適応性の推進に限界があり、この場合に有効なのがエージェント型AIを前提とした設計アプローチである。これは銀行の各機能やワークフロー、プロセスに合わせて特別にカスタマイズされた、新しい自律的エージェント型ソフトウェアアプリケーションをゼロから作成する方法である。時代遅れのプロセス上にインテリジェンスを追加するスマートオーバーレイとは異なり、業務プロセス自体を根本的に再構築することで本質的な改革を実現できる。
この設計はマイクロサービスのアーキテクチャと似ており、銀行は特定機能を独立して処理しながらも広範なインフラストラクチャにスムーズに統合可能な、小規模かつ専門的なエージェント型AIサービスを段階的に導入できる。既存のソフトウェアを専用の自律型アプリケーションへと体系的に置き換えることで、銀行はAIエージェント機能をコア業務に直接組み込むことが可能になる。
AkkaのAgentic Platform26、Microsoftのマイクロ エージェント27、NVIDIAのNeMoサービス28などのサードパーティ・ソリューションがこの戦略の実現可能性を示している。例えば、Akkaを使用することで銀行は確実性、スケール、回復力を備えた自律的なマイクロサービス型のAIエージェントシステムをゼロから構築することができる29。
3. プロセスの再設計: 上述の2つのアプローチは現実的なソリューションとして有効である。しかし将来的にプロセスとワークフロー全体を再設計することで銀行はエージェント型AIの可能性をさらに引き出せる。この方法は特に、現状では「自動化は難しい」「実装リスクが高い」とされてきたような、戦略的に極めて重要な業務に適している。
このアプローチには現在のプロセスを評価し、AIエージェント化の機会を特定して優先順位を付け、さらに最適なパフォーマンスと効率を追求するためにAIエージェントを組み込む、というプロセスの再設計を含んでいる。RPAのような従来型の自動化の枠を超えることで、銀行はより効率的で適応性が高く、スケーラブルな新しいインテリジェント・ワークフローを設計できる。段階的なプロセス改善からAI主導の革新的なワークフローの再設計への移行は、銀行のイノベーション、新たな収益機会の発見、運用リスクの軽減、よりパーソナライズされたサービスの提供に資するだろう。
最終的にこれらのアプローチは、エージェント型AIが銀行の内部ソフトウェアやSaaSプラットフォームの表面下で静かに動作する「目に見えないインテリジェンス」を支えることになる。シームレスな統合によって高度な分析が民主化され、従来のテクノロジー導入に伴う課題が解消されることで、銀行は高度な予測機能を日常業務へ直接かつ容易に組み込むことができ、顧客関係の改善と即時の戦略的価値創出につなげることができる。
3つのアプローチはそれぞれ異なる特徴と有効性を持つが、相互に排他的ではなく併用もできる。リーダーは自社の状況に応じて最適な組み合わせを決定する必要がある(図5)。
銀行は適切なAI活用領域を特定したら、既存のコアバンキングシステムを新しいAIファブリックと統合し30、AIエージェントとCOBOLシステムなどのレガシーシステムとの共存を可能にして、よりシームレスな運用を実現可能とする。
AIエージェントで構成されたこの組み込みAIファブリックをデータファブリックとともにアプリケーションレイヤーに配置すれば、AIエージェントはトランザクション履歴、顧客プロファイル、コンプライアンスルールにアクセスできるようになり、データフローが促進され、より多くの情報に基づいた自律的なアクションが確保できる。
エージェント型AIシステムの構築には多くの場合、標準的なAIが利用する以上の大量のリソースと新しいインフラストラクチャが要求されるが、銀行は高度なツールと専門知識を備えたサードパーティベンダーを活用することでガバナンス、コンプライアンス、業務に集中できる。
一部のテクノロジー企業はエージェント型AIを大規模に実装するためのプラットフォームをすでに導入している。Amazonは、Amazon BedrockプラットフォームでAIエージェントのネットワークを構築、デプロイ、管理するマルチエージェント・コラボレーションが利用可能になると発表した31。同様にSalesforceが2024年9月にリリースしたAgentforce(2025年5月には新バージョンのAgentforce 2dxをリリース)プラットフォームは、APIやその他のソフトウェアソリューションを通じてエージェント型AIを組み込むことができる32。同社は銀行業界向けに特化した事前構築された役割ベースのAIエージェントのリリースも計画している33。Google Agentspaceも複数のAIエージェント、検索、エンタープライズデータが1つのプラットフォームに統合できるツールで、従業員が単一のワークスペースからリサーチ、計画、コンテンツ生成、アクション自動化を行うことができるようになる34。
Anthropicの金融サービス向けClaude35や、安全な金融取引のためのエージェント・ワークフローをサポートするStripeのツールキット36、返金や請求額の減額処理プロセス(クレジット・メモ・プロセス)を自動化できるArceeのAIエージェント37のように、銀行で使用できる特殊なAIエージェントを提供しているテクノロジー企業もある。銀行はまたAgentflow、CrewAI、LangChain、LangGraphといった異なるエージェント型AIフレームワークを使用して高度な推論エンジンを構築し38、n8n39やZapier40などのワークフロー自動化プラットフォームを使用してAIエージェントを設計している。
すべての潜在的なアプリケーションに対して、包括的なAIエージェントスイートを提供する単一ベンダーは存在しないだろう。さまざまなテクノロジープロバイダーとの多様なパートナーシップが進むべき道となると考えられる。例えば決済分野ではMastercardがIBMとMicrosoftの両方と協力し、エージェントコマース関連の機能を構築している41。プラットフォームのレイヤーでは一部のベンダーが、他のAIエージェントと相互接続して動作することを目的とした製品を提供している。またServiceNowは複数ベンダーのAIエージェントを統合し、堅牢な全社的オーケストレーションをサポートするプラットフォームを立ち上げた42。
ただしサードパーティのAIエージェントは、複数のサードパーティAIエージェント間の相互運用性や標準化の問題、攻撃対象領域の拡大といった制約をもたらす可能性があり、システムの脆弱性の拡大や自動化リスクのドミノ効果を招きかねない。銀行はデータを監視し保護する内部の「スーパーAIエージェント」構築を検討できるが、このアプローチには既存システムの大幅なアップデートが要求される。
第一に、エージェント型AIは広範なAIや自動化の取り組みから切り離された、独立した取り組みと見なすべきではない。エージェント型AIはプロアクティブな実行と自律的な意思決定を必要とする複雑なタスクに最適である一方で、従来のAIはパターン認識や予測タスクに適している。銀行はそれぞれのAIを、付加価値を与えたい領域に展開する必要がある。
次に、エージェント型AIの中核にコンプライアンスを組み込むことを後回しにすべきではない。銀行はコンプライアンスに関する考慮事項を積極的にAIエージェントの運用ロジック、ワークフロー、監視メカニズムに直接組み込む必要がある。組み込みのコンプライアンス・ガードレール、自動化されたリスク評価、継続的な監視を確立することでAIエージェントはコンプライアンス・フレームワーク内でより安全に運用できるようになる。ただし、これは設計と展開の両段階でコンプライアンスチームとAI開発グループが緊密に連携する場合にのみ実現するものであり、その結果として、より透明性があり説明可能で説明責任のあるエージェント型AIが実現できる。
エージェント型AIをサポートするには堅牢でスケーラブルなインフラが必要である。クラウドベースのソリューションは、これらのシステムが効率的に動作するために必要な柔軟性と計算能力を提供できる。またAIエージェントが急増するにつれ、マルチエージェント・システムをシームレスに調整することが重要になる。
エージェント型AIの成功には高品質でアクセス可能なデータを使用しなければならない。銀行は一貫したデータ基準、品質管理、包括的メタデータ管理を重視してデータガバナンスを強化すべきである。堅牢なデータパイプラインを確立し、データ資産をデータレイクまたはファブリックに一元化することで、よりシームレスなAIエージェントによるアクセスと迅速な分析が可能になる。同様に重要なのは、データの整合性を維持し、AIエージェントによる意思決定の説明可能性と透明性を高めるデータリネージである。
AIエージェントの数が拡大するにつれ、すべてのAIエージェントの所有者、範囲、データセット、リスク・エクスポージャー・リミット(財務的か否かを問わず)に関する情報を常に最新化し、管理することが重要である。
人間とAIのコラボレーション文化を育むことが、AIエージェントのオーケストレーションと実行を容易にする。エージェント型AIへの移行には、従来のAIや標準的なLLMよりも大きな文化的変容が求められるだろう。銀行はタスク実行の中心に人間を据えるのではなく、AIエージェントが中心的役割を担い、必要に応じて人間が指導・監督・介入するモデルに適応すべきである。AIリテラシーとトレーニングへの投資は信頼の醸成、スムーズな導入促進、効果的な人間とAIエージェントのパートナーシップ確保を実現することができる。
ヒューマン・イン・ザ・ループの維持が説明責任を強化する。エージェント型AIは機械の自律性を高める潜在力を持つが、銀行は説明責任の確保、リスクの軽減、組織のレジリエンスを強化するため、重要な意思決定ポイントに人間を配置し続ける必要がある。エージェント型AIのプロセスの速度は落ちるかもしれないが、規制、倫理、運用上の制約を考慮すると人間の関与は依然として不可欠であり、完全な自動化は現実的ではない。
エージェント型AIを効果的に組み込むには、技術的な実装と組織の準備状況に対処できる積極的なチェンジマネジメントが必要になる。リーダーはメリットを積極的に伝え、移行を慎重に管理し、組織文化とワークフローを新たなエージェント型AIパラダイムに適合させるべきである。従来のチェンジマネジメントにとどまらず、エージェント型AIの統合には組織の再構築が求められる場合がある。AIエージェントが実務で中心的役割を果たすようになるにつれ、組織内の情報の流れや意思決定の権限だけでなく、管理体制の再調整も必要になる可能性がある。具体的には、階層型の組織がよりフラットになり、意思決定もアジャイル型へ進む。これにより部門横断チームがAI提示のインサイトを基に、より直接的に協働することを可能にする。
多くの銀行には生成AIやRPAの展開から得た教訓があり、すでにエージェント型AI導入のための手順書(プレイブック)は持っている。短期的には、銀行は即時に価値を提供できる分野を選び焦点を当てるべきである。本調査では、エージェント型AIを導入するための3つの可能なアプローチを取り上げた。どの方法を追求するかの選択は組織の特性や背景、目標によっても異なるだろう。
エージェント型AIシステムが確実なメリットをもたらすまでには時間がかかる可能性があり、またそのメリットは各金融機関のデータ、クラウド、AIインフラ、機能の成熟度によって変わってくる。加えて、スピードや効率といったエージェント型AIがもたらすメリットはリスクとのバランスを取る必要があり、銀行はデータプライバシー、倫理的なジレンマ、規制遵守などのリスクを乗り越えなければならない。成功には、積極的な試行とバランスの取れたリスク・リターンのトレードオフが不可欠と言える。堅牢なガバナンスと戦略的展開により、エージェント型AIは銀行業務に革命をもたらし、オペレーショナル・エクセレンスと事業成長の機動力となり得る。
デロイトは2024年12月から2025年3月にかけて、米国の銀行およびサードパーティベンダーのテクノロジー&ソフトウェアエンジニアリング・エグゼクティブ5名と、デロイトの知識と経験豊富な複数のAI専門家に詳細なインタビューを実施した。これらの議論では、エージェント型AIの現状、銀行業界におけるその可能性、そして新しいテクノロジーに関連するリスクに焦点を当てている。これらのインタビューから収集された洞察は、業界の状況を広範囲に把握し、上記の調査結果を実証するのに役立った。テクノロジー企業の出版物や学術論文も、エージェント型AIの可能性と限界を多角的に検証する(triangulate)ために使用されている。この定性的アプローチは、当社の分析が業界リーダーの実践的な経験と知識豊富な意見に基づいていることを示している。
Deloitte Consulting LLP United States
AI & Insights Practice Leader Prakul Sharma
Deloitte Services LP United States
Banking & Capital Markets / Senior Research Leader Val Srinivas
Deloitte Support Services India Pvt Ltd India
Research Specialist Abhinav Chauhan
合同会社デロイト トーマツ
Banking & Capital Markets(銀行・資本市場)
Partner 戸室 信行/Nobuyuki Tomuro
Director 大内 圭介/Keisuke Ouchi
Director 栗原 祥子/Shoko Kurihara
Consultant 柳川 穂高/Hotaka Yanagawa
本稿はDeloitte US が2025年に発表した内容をもとに、合同会社デロイト トーマツが翻訳したものです。なお、翻訳版と原文に相違がある場合には、原文「How banks can supercharge intelligent automation with agentic AI」の記載事項を優先します。