本記事は日本国内優遇措置検索サービス「Japan Incentive Insights」のコンテンツです。本記事は2025年12月19日時点の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。
Japan Incentive Insights(コンテンツページ):大胆な設備投資の促進に向けた税制(特定生産性向上設備等投資促進税制)
2025(R7)年12月19日に令和8年度税制改正大綱が公表され、大胆な設備投資の促進に向けた税制(特定生産性向上設備等投資促進税制)の導入が公表されました。詳細については法令案の公表が待たれますが、大企業・中小企業を問わずに生産等設備の投資に適用できる優遇税制であり、建物やソフトウェアも対象に含まれる等、適用対象となる事業者の範囲が広いことから注目の制度と言えます。本記事では、令和8年度税制改正大綱をもとに現時点で判明している制度のポイントを解説します。
大胆な設備投資の促進に向けた税制(特定生産性向上設備等投資促進税制、以下「本税制」)は、2029(R11)年3月31日までに経済産業大臣の確認を受け、確認の日から5年以内に生産等設備を取得及び事業供用した場合に、税額控除7%(建物、建物附属設備、構築物については4%)又は即時償却を選択適用できる制度です。
従来は約3年以内に認定を取得し着工・竣工を完了させなければならないという制度が多く、期限までに工事が完了するか分からない/間に合わないという理由で制度を適用できないという事業者の声が多くありました。本税制は、2029(R11)年3月までの約3年以内に経済産業大臣の確認を受け、「確認の日から5年」以内に事業供用する設備を対象にできるため、建設工事が長期化している昨今でも適用しやすい措置と言えます。
対象投資は、確認を受けた生産等設備を構成する一定金額以上の機械装置、工具、器具備品、建物、建物附属設備、構築物及びソフトウェアです。
税額控除を選んだ場合、当期法人税額の20%が控除上限です。別途、輸出入取引に係る条件の著しい変化など事業環境の急激な変化による影響への対応を行うための計画の認定を受けた事業者法人は、控除しきれなかった部分について最大3年間の繰越しが可能とされていますが、具体的な要件は税制改正大綱では公表されていません。
税制改正大綱では以下の要件が公開されています。投資額の下限値が35億円以上(中小企業者等は5億円以上)であり、まさに大胆な設備投資を対象とした制度と言えます。
大企業(適用除外事業者に該当する中小企業者を含む)に限り、以下の条件に該当する事業年度においては、本税制(繰越税額控除制度を除く)は適用されないため、留意が必要です。
本税制における投資計画の確認を受けた法人は、当該計画期間中において、以下の制度を適用できません。
また、認定設備は戦略分野国内生産促進税制の税額控除限度額の計算の基礎となる資産の額に含まれないため、同一資産に対して重複してメリットを享受できないようになっています。
税制改正大綱での公表情報のみに即していうと、本制度は中小企業経営強化税制(B類型)との類似性が高いと考えられます。そのため、本税制の導入により、中小企業経営強化税制の対象となっていなかった資本金1億円超又は従業員2,000人超の法人にも広く門戸が開かれたといえる側面もあります。また、これまで中小企業経営強化税制(B類型)を適用してきた事業者でも、5億円以上の投資という制約はつくものの、建物等を対象にすることができる等、メリットは大きくなる場合もあります。
制度の詳細については3月頃の法制化を待つ必要がありますが、2026(R8)年度に大規模な投資を検討している場合は早期に検討を開始することが推奨されます。
本税制を含め、優遇措置の適用の検討を進められる場合は、ぜひデロイト トーマツにご相談ください。