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金沢から、現場が動く。デロイト トーマツ smooth × デロイト トーマツ アリーナ

“戦える地方”が拓くDXの実装力

2025年9月24日、金沢市役所・市長応接室。
デロイト トーマツ グループ 税務・法務領域ビジネスリーダー 溝口史子、有限責任監査法人トーマツ アシュアランス事業本部長 山本大、そして金沢発の二社――デロイト トーマツ smooth(以下DTsm)代表取締役社長 中野祐希、デロイト トーマツ アリーナ(以下DTA)代表取締役社長 花尾正人が、村山卓・金沢市長を訪れた。

「地方から日本を変える」は宣言で終わらない

単なる“表敬”ではない。石川・金沢という「企業が育つ土壌」で生まれた二社が、デロイト トーマツ グループの一員として全国を支える新たな実装体制を築いた――その節目を示す場だった。

その意義を象徴するように、村山市長は金沢の現在地をこう語った。

「金沢は戦争の被害も大地震もほぼなく、昔ながらの町割りが残っています。一方で、高度経済成長期に建てられた旧耐震の建物が多く、断層帯もある。駅前再開発など、都心の更新を加速させます」

金沢市長 村山卓氏

市長は都市の「形」と「人」を両輪で見据える。都市インフラの更新と並行して、金沢は“人の基盤づくり”にも手を打ってきた。

廃校となった野町小学校を再生した「みらいのまち創造館」では、起業家のためのインキュベーション施設、子どもの創造力を育む学びの場、そして「食芸研究所」など多様な人と事業が交わる拠点が生まれている。

「いい企業がどんどん育っています」と市長は笑みを見せる。

この“育つ土壌”があったからこそ、DTsmとDTAのような企業が生まれ、金沢はデロイト トーマツ グループにとっても新たな希望の地となった。

溝口は、今回の訪問を通して改めて金沢という都市の可能性を感じたと語る。 

デロイト トーマツ グループ 税務・法務領域ビジネスリーダー 溝口史子

「デロイト トーマツとして全国に拠点を持つなかで、地方には地方ならではの強みがあります。金沢のように文化と人材の基盤が整った地域は、企業が自立的に育つ環境を持っている。その中から生まれた二社とともに、現場と経営の両輪で支援できる体制を築けたことは大きな意味があります」

金沢という“舞台装置”――文化・アクセス・制度が、企業を育てる

石川県・金沢市は文化と産業の重層性を備える都市だ。市長は、まちの骨格を作り上げた“水”の存在を語る。

「55本の用水が街をめぐっています。兼六園の池は貯水池で、犀川上流から約11キロを高低差2メートルで引いている。金沢のまちをつくったのは“水”なのです」

金沢市の記録によれば、市内には55本の用水があり、総延長は約150キロメートルに及ぶ。なかでも辰巳用水は、犀川上流から約11キロを導水し、そのうち約4キロがトンネル区間という構造を持つ。“水が自ら流れる都市”という仕組みは、いまも金沢の営みを象徴している。

「みらいのまち創造館」について自ら説明する市長

加えて、東京・大阪・名古屋へ2時間半程度という距離感が、都市圏のスピードと地方の生活圏を同時に手中に収める。

「冬は雨雪が多いが、そのぶん仕事に集中できる。食も文化も揃っている」と村山市長は胸を張る。

こうした文化・自然・生活・交通のバランスが、金沢に「人と企業が育つ条件」を整えている。さらに市はデジタル・クリエイティブ関連企業の誘致にも積極的だ。

「金沢市クリエイティブイノベーション創出助成金」は、土地・建物の取得や改修、賃借、設備移転などにかかる経費を最大3,000万円支援する。県の「IT・コンテンツ企業立地促進補助金」(上限5,000万円)と組み合わせることで、二層で企業の成長を後押ししている。

「制度が呼び込み、現場が定着させる」

金沢の政策、文化、生活環境。これらが相互に作用し、「企業が伸びるまち」としての基盤を形づくっている。その環境が生んだのが、DTsmとDTAという二社であり、デロイト トーマツが彼らを選んだのは必然ともいえる流れだった。 

金沢の土壌が生んだ二社――全国を見据える現場力

デロイト トーマツ smoothは2017年に創業。freee、kintone、SalesforceなどのクラウドSaaSを組み合わせ、経理・人事・労務などバックオフィスのデジタル化を支援してきた。

一方、デロイト トーマツ アリーナは24期目を迎える老舗システム企業。奉行シリーズや大臣エンタープライズ、kintoneを駆使し、業務アプリケーションの設計・導入に強みを持つ。

両社はいずれも金沢を拠点とするが、取引先は全国に広がっている。都市部の企業とも多数のプロジェクトを手がけ、地方発ながら全国のDXを支える立場を確立している。

では、彼らは金沢という土地をどのように見ているのか。
中野は語る。

「この街は“起業しやすい”です。金融機関の支援が厚く、学生も多い。けれど、バックオフィス整備が遅れがちで成長が止まる。そこをデジタルで支えるのが私たちの使命です」

デロイト トーマツ smooth代表取締役社長 中野祐希

花尾も続ける。

「IT企業の集積、三大都市圏への絶妙な距離、同業間の知見共有。私たちは金沢を拠点に置きながらも、都市部のプロジェクトにも数多く関わっています。だからこそ、地元と全国を結ぶハブとして、ここに根を張ると決めました」

デロイト トーマツ アリーナ 代表取締役社長 花尾正人

この“地の利”は、企業間の意思決定速度にも効いている。二人の子どもが同じ星稜高校に通っていた――そんな距離感は、議論を早め、合意形成の摩擦を減らす。

デロイト トーマツが両社をグループに迎えたことで、診断から設計・導入・定着、さらに運用最適化や内部統制、税務に至るまで、E2E(End to End)の支援が一気通貫で可能になった。

こうして二社の実装力は磨かれ、全国の中堅・中小企業を支える原動力となっている。
この取り組みを、山本は「地域から生まれる新しい経営支援モデル」と位置づける。

「全国の大手企業を支援してきた中で感じるのは、現場の解像度を持つ企業の重要性です。smoothとアリーナは、地域で課題を解きながら全国の企業とも取引してきた。そこにデロイト トーマツの知見を掛け合わせることで、“地方と中央を循環する実装力”が生まれると確信しています」 

有限責任監査法人トーマツ アシュアランス事業本部長 山本大

デロイト トーマツが加わることで開く回路――人材・官民・地域の連鎖

両社のグループ参画は、地域の枠を超えた“知の循環”を生み出すきっかけにもなりそうだ。

花尾はデロイト トーマツ参画後の変化を率直に語る。「参画からわずか3週間で、お客様の見る目が変わりました」

中野も続ける。

「メンバーの意識も変わる。グループ内の出向の受け入れ・派遣も活発化し、異文化の組み合わせが学びを広げています」

ブランドが信頼の回路を開き、人材の行き来が新しい知を持ち込む。

溝口は、二社の参画を“グループ全体の変化の起点”と捉える。

「DXの本質はテクノロジー導入ではなく、人と地域の再設計にあります。smoothとアリーナのように地域密着の実装力を持つ企業と連携することで、私たちの支援はより社会実装型へと進化しました」

溝口は続けて、行政との連携にも言及する。

「行政は総合格闘技です。官民が人材を行き来させ、同じテーブルで課題に向き合う時代です」

行政との関係では“お願い”ではなく“共にやる”。この姿勢が、地域の実装を前に進める。

山本は次のようにまとめる。「地域が利益を生まなければ、日本全体の利益は生まれない。地域が元気になれば、日本が元気になる」。

花尾は“同速化”の重要性を強調する。「東京からの情報は“早いようで遅い”ことがある。市や県の施設の中に、本業に直結する教育・共有の場を。首都圏と同じ速度で情報が流れる環境を、デジタル教育とセットで整えたい」。

こうした発言の背景には、“中央から地方へ”ではなく、“地方から中央へ”という新しい流れがある。金沢から始まる実装力の連鎖は、今後、他地域へも広がっていくはずだ。

「金沢から成長していく企業がいるのは嬉しい。牽引役として頑張ってほしい」と村山市長もエールを送った。

金沢モデルを全国へ――地方の力が、中央の課題を解く

今回の表敬は、成果の一区切りではなく、新しい章の始まりである。金沢という地が育んだ二社が、デロイト トーマツというネットワークと融合し、地方と都市を横断するDX支援の実装モデルを生み出した。

DTsmとDTAが目指すのは、「地方に根ざしながら全国を支える企業群」という新しいあり方だ。

この姿勢を、山本は“金沢モデル”と呼ぶ。

「金沢は地方でありながら、全国の企業と対等に連携できる都市です。そこで育った二社がグループに加わることで、地方と中央の境界を越える支援体制が実現した。地方から始まる変革が、やがて日本全体の産業構造を強くしていくと思います」

花尾は最後に語る。

「若い人材の育成とデジタル教育に貢献したい。金沢を拠点にしながら、地方と都市の橋渡しをしていきます」

金沢の文化と人が育てた“地の力”に、デロイト トーマツ グループの実装力が加わり、日本全体の中堅・中小企業を支える新しい仕組みが生まれた。

それは、“地方だからできる”のではなく、“地方からこそ始まる”。

金沢はその象徴であり、これからも企業と人を育てる「現場」であり続ける。
宣言は終わった。これからは現場が動く時代だ。

金沢のデロイト トーマツのオフィスの前で