2023年のアジア進出日系企業におけるリスクマネジメントおよび不正の実態調査において、台湾地域の調査結果では日系企業の「現在不足し改善に取り組んでいる機能」の質問への回答として、「デジタル推進機能」が1位に挙げられています。台湾では政府がデジタル活用を積極的に推進しており台湾企業のデジタル技術の導入が進んでいることから、日系企業の経営者のデジタル活用への関心が高くなっていると推察されます。本ニュースレターでは、台湾のデジタル施策や企業に求められるデジタル化の対応をご紹介いたします。
台湾当局における近年のデジタル推進政策に関して、蔡英文政権において掲げられた「デジタル国家・スマートアイランド」の方針を実現するために策定された「デジタル国家・革新的経済発展プラン(2017-2025)」が最も上位の施策となっています。本プランは2017年から2020年の第1フェーズの終了後に、ポストCOVID時代に対応するインフラ構築・デジタル構築を見据えた「スマートカントリー」の実現に向けた「スマート国家プラン(2021-2025)」に変更されています。当該プランでは2025年に向けて以下の目標を定めています。
前述の包括的なデジタル推進政策と並行して個別のテクノロジー施策も推進されています。2018年に策定された「台湾AIアクションプラン1.0(2018-2021)」において、台湾の強みである製造業及び半導体産業とAI技術の融合を狙った取組みが実行され、1万人以上のAI技術者の育成、海外AIラボラトリーの誘致などを実現しています。2023年以降は「台湾AIアクションプラン2.0(2023-2026)」を策定し、以下の目標を定めています。
【台湾AIアクションプラン2.0の目標】
台湾では様々なAIアプリケーションが開発され各産業への適用が進んでいます。例えば製造業において「AI画像認識ツールによる不良品検査」といった品質向上及びコスト削減を狙った活用事例もみられます。また医療産業において「AIによる病巣検査の画像診断支援システム」といった検査の効率化を狙った活用事例もみられます。
このように各産業におけるAI利用が進むにつれて、企業はAIに係るリスク対応が求められることになります。AI利用にあたってコンプライアンス・プライバシー・サイバーセキュリティなどの一般的なリスクとAIによる意思決定・解釈・公平性などのAI特有リスクへの対応が求められます。2024年末には台湾において包括的なAIガイドライン(AI基本法)が整備される予定となっており、AI活用している企業は法制度の動向を注視し、適切なリスク対応を推進する必要があります。
なお、生成系AIの爆発的な普及に伴い、生成系AIに係るガイドラインの整備が行われています。2023年8月に公的機関における生成系AI利用ガイドライン(使用生成式AI參考指引)が公表されており、公的機関の業務における生成系AI利用が解禁となりました。当該ガイドラインには以下の生成系AIに関する禁止事項と利用ルールが定められています。
【公的機関における生成系AIに関する禁止事項と利用ルール(概要)】
台湾企業においても生成系AIの業務への活用が進んでいます。生成系AIはテキスト・画像・音声・コードなど様々な形式のデータを取り扱うことができ、調査・分析/対話/創作といった用途で利用することができます。また生成系AIの機能は、RPAなどの従来のデジタルツールの導入対象領域である定型業務ではなく、非定型な業務の自動化に適しています。従って、企業における営業・マーケティングなどのフロント業務から経理・財務などのバックオフィス業務まで幅広い業務に適用することが可能となることから、生成系AIの導入を検討する際には、システム企画などの初期段階においてスコープを定めてパイロットを行う必要があります。生成系AIの導入アプローチとして、利用目的を明確化し、生成系AIの適合性を適切に評価し、生成系AIの適用対象シナリオを選定することが重要なポイントとなります。デロイト台湾では数多くの台湾企業から生成系AI等の導入のご相談をいただいており、例えば以下のようなアプローチで生成系AIのパイロットをご支援しています。もし貴社にて生成系AI等の活用をご検討の際はご連絡いただければ幸いです。
【生成系AI導入アプローチ(例)】
本稿に関連するデロイト台湾のサービスのご紹介
著者:淡路 武志
※本ニュースレターは、2024年5月31日に投稿された内容です。
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