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資産税等に関する令和8年度税制改正について

ファミリーコンサルティングニュースレター 2026年1月

はじめに

2025(R7)年12月19日、令和8年度税制改正大綱(以下「大綱」)が公表されました。今回は、その中から資産税・所得税のうち重要性が高い下記項目について解説を行います。

【資産税】
1. 貸付用不動産等の評価方法の見直し
2. 教育資金の一括贈与非課税措置の見直し
3. 非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度における特例承継計画の提出期限の見直し
4. 個人の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度における個人事業承継計画の提出期限の見直し

【所得税】
5. 極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置の見直し
6. 同族会社以外の法人(特定法人)が発行した社債の利子等への課税区分の見直し
7. 暗号資産の分離課税化等
8. 物価上昇に連動して基礎控除等を引き上げる仕組みの創設
9. NISAの拡充
10. ふるさと納税制度の特例控除額の見直し

資産税

1. 貸付用不動産等の評価方法の見直し

相続税法の時価主義の下、貸付用不動産の市場価格と相続税評価額との乖離を利用して評価額を圧縮する租税回避への対応として、その取引実態等を考慮し、次の見直しが行われます。

(1) 内容

対象となる貸付用不動産

対象となる貸付用
不動産の取得時期

評価方法

(イ)

被相続人等が対価を伴う取引により取得又は新築をした一定の貸付用不動産(*3)

課税時期前5年以内が対象

課税時期における通常の取引価額に相当する金額(*1)

(ロ)

不動産特定共同事業契約又は信託受益権に係る金融商品取引契約のうち一定のものに基づく権利の目的となっている貸付用不動産
(いわゆる不動産小口化商品)

取得時期にかかわらず対象

課税時期における通常の取引価額に相当する金額(*2)

(*1) 課税時期における通常の取引価額に相当する金額については、課税上の弊害がない限り、被相続人等が取得等をした貸付用不動産に係る取得価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額の100分の80に相当する金額によって評価することが可能です。

(*2) 課税時期における通常の取引価額に相当する金額については、課税上の弊害がない限り、出資者等の求めに応じて事業者等が示した適正な処分価格・買取価格等、事業者等が把握している適正な売買実例価額又は定期報告書等に記載された不動産の価格等を参酌して求めた金額によって評価することが可能です。ただし、これらに該当するものがないと認められる場合には、上記(イ)に準じて評価(取得時期や評価の安全性を考慮)されます。

(*3)  上記(1)(イ)の改正については、当該改正が通達に定められる日までに、被相続人等がその所有する土地(同日の5年前から所有しているものに限る。)に新築をした家屋(同日において建築中のものを含む。)には適用されません。

(2) 適用関係
2027(R9)年1月1日以後に相続等により取得をする財産の評価に適用されます。

(3) 対象となる貸付用不動産のイメージ(施行日前に通達が制定されることを前提)

対象となる貸付用不動産のイメージ図

POINT: 

2025(R7)年11月に国税庁から公表された「財産評価を巡る諸問題」で、賃貸不動産の市場価格と通達評価額の乖離を利用した相続対策や小口化商品の贈与事例等に対する問題提議がされていました。これまではこうした事例に対して財産評価基本通達総則6項に基づく課税処分を行うこと等により個別に対応がされていましたが、納税者の予見可能性を確保し、評価の適正化及び課税の公平性を図る観点から、評価方法そのものの見直しが行われます。

取引相場のない株式の評価においては、財産評価基本通達185にて評価会社が課税時期前3年以内に取得等をした不動産について、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価するものとされています。評価会社が貸付用不動産を取得等した場合の取扱いについては、大綱に明記されていないため、今後の動向を注視する必要があります。

2. 教育資金の一括贈与非課税措置の見直し

父母・祖父母等の直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置(最大1,500万円の非課税)について、これまでの本措置利用の実態等を踏まえ、2026(R8)年3月31日までとされている教育資金管理契約に基づく信託等可能期間は延長されずに終了となります。ただし、同日までに拠出された金銭等については、引き続き本措置を適用することが可能です。

3. 非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度における特例承継計画の提出期限の見直し

(1) 制度概要
後継者が経営者から非上場株式等を贈与又は相続により取得した場合に、一定の要件のもと、贈与税・相続税の納税が100%猶予される制度です。要件の一つとして、特例承継計画を策定し、都道府県に提出する必要があります。

(2) 特例承継計画の提出期限の延長
特例承継計画の提出期限が1年6月延長され、2027(R9)年9月30日までとされます。

特例承継計画の提出期限が1年6月延長され、2027(R9)年9月30日までとされる図

POINT: 

特例承継計画の提出期限は1年6月延長されましたが、当該納税猶予の特例制度自体の適用期限の延長は、今回も大綱に記載されておらず、2027(R9)年12月31日までの相続・贈与が対象であることから、適用期限の到来を見据え、早期に事業承継に取り組むことが期待されます。

適用期限後のあり方については、世代交代の停滞や地域経済の成長への影響に係る懸念に加えて、本措置の適用状況や課税の公平性等の観点も踏まえて多角的な検討を行い、2027(R9)年度税制改正において結論を得る旨が大綱に記載されているため、今後の動向に注視が必要です。

4. 個人の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度における個人事業承継計画の提出期限の見直し

(1) 制度概要
後継者が事業主から個人事業に係る資産を贈与又は相続により取得した場合に、一定の要件のもと、贈与税・相続税の納税が100%猶予される制度です。要件の一つとして、個人事業承継計画を策定し、都道府県に提出する必要があります。

(2) 個人事業承継計画の提出期限の延長
個人事業承継計画の提出期限が2年6月延長され、2028(R10)年9月30日までとされます。

個人事業承継計画の提出期限が2年6月延長され、2028(R10)年9月30日までとされる図

POINT: 

個人事業承継計画の提出期限は2年6月延長されましたが、当該納税猶予制度自体の適用期限の延長は、今回も大綱に記載されておらず、2028(R10)年12月31日までの相続・贈与が対象であることから、適用期限の到来を見据え、早期に事業承継に取り組むことが期待されます。

所得税

5. 極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置の見直し

(1) 背景

  • 所得税は、基本的に総合課税による超過累進税率が適用されるため、本来は高所得者ほど所得税の負担率が高くなります。しかし、株式等の譲渡所得等は分離課税で一律の税率が適用され、高所得者層ほど所得に占める株式等の譲渡所得の割合が高いことから、高所得者層の所得税の負担率が低下するという逆転現象が生じていました。
  • このような状況を踏まえ、税負担の公平性の観点から、2023(R5)年税制改正により、極めて高い水準の所得について最低限の負担を求める措置が、2025(R7)年分の所得税から導入されました。

(2) 税制改正の内容

  • 税負担のさらなる公平性の確保を図る観点から、2025(R7)年分の所得税から適用されている「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」について、次の見直しが行われます。

現行

改正案

特別控除額

3億3,000万円

1億6,500万円

税率

22.5%

30%

  • 各種所得を合算した所得金額(基準所得金額)から特別控除額(1億6,500万円)を控除した金額に、30.0%の税率を乗じた金額が納めるべき所得税の金額を超過した場合に、その超過した差額を追加的に申告納税することとされます。

▶(基準所得金額*1ー1億6,500万円)×30.0% > 基準所得税額*2
▶ 追加納付する税額 → 基準所得税額との差額を申告納税

(*1)基準所得金額の計算上、源泉分離課税となる預金利子やNISA制度の非課税所得は対象から除外されます。また、特定新規中小企業者がその設立の際に発行した株式の取得に要した金額の控除等の租税特別措置法等による適用後(控除後)の金額で計算します。一方で、申告不要制度の対象となる配当や上場株式の譲渡所得等は同制度の適用がないものとして計算します。
(*2)基準所得税額は、外国税額控除を考慮しないで基準所得金額に対して計算した税額をいい、復興特別所得税額を含みます。

(例:所得が株式譲渡所得のみで分離課税(所得税及び復興特別所得税15.315%)の対象となるケース)

  • 所得(株式譲渡所得)が3.3億円の場合は以下のとおりです。

▶(3.3億円ー1億6,500万円)×30.0%=約0.5億円
▶ 3.3億円×15.315%=約0.5億円(基準所得税額)

  • 上記のとおり、改正後は、所得が株式譲渡所得などの分離課税の対象となる投資所得のみである場合には、所得金額3.3億円が適用の目安になると考えられます。
    なお、現行では、同様のケースにおいては、所得金額10億円が適用の目安になると考えられます。

(3) 適用関係
2027(R9)年分以後の所得税について適用されます。

POINT: 

2027(R9)年以後に株式や不動産の譲渡所得が多額に発生すること等が見込まれる場合には、本改正の影響を受ける可能性があるため、2026(R8)年中に実行する等のスケジュール面を含めた事前の検討が必要となります。

また、国外転出時課税についても本改正の影響を受けると思われるため、海外移住や非居住者への贈与等(特に納税猶予ではなく、納税するケース)が見込まれる場合も同様に、2026(R8)年中に実行する等のスケジュール面を含めた事前の検討が必要となります。

6. 同族会社以外の法人(特定法人)が発行した社債の利子等への課税区分の見直し

(1) 内容
同族会社の役員等が、その同族会社以外の法人(以下、「特定法人」)が発行した社債の利子で、実質的にその同族会社から支払を受けるものと認められる場合(*1)における当該利子は、総合課税の対象とされます。また、その同族会社の役員等が支払を受ける当該特定法人が発行した社債の償還金についても、総合課税の対象とされます。

(*1) 「実質的にその同族会社から支払を受けるものと認められる場合」とは、特定法人が発行した社債に係る債務についての同族会社による保証の契約その他の契約の内容その他の状況からみて、同族会社の役員等が特定法人が発行した社債に係る債務の不履行により実質的に損失を受けないと認められる場合をいいます。

(2) 適用関係
2026(R8)年4月1日以後に支払を受けるべき社債の利子及び償還金について適用されます。なお、同日以前に発行済みの社債についても適用対象となることに留意が必要です。

(3) 改正の経緯と想定されるパターン毎の社債利子の課税区分

改正の経緯と想定されるパターン毎の社債利子の課税区分を表した図表

(*1) 同族会社の判定の基礎となる株主である法人と特殊の関係のある個人(法人との間に発行済株式等の50%超の保有関係がある個人等)およびその親族等(事実上婚姻関係と同様の事情にある者など政令で定める者)が支払を受けるものをいいます。
(*2) 同族会社の役員等X(Y)が、実質的にその同族会社A(B)から支払を受けるものと認められる場合をいいます。

7. 暗号資産の分離課税化等

  • 金融商品取引法等の改正を前提に、暗号資産取引業(仮称)を行う者に対して金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産等(特定暗号資産)の譲渡等をした場合には、その譲渡等による譲渡所得等は他の所得と分離して20%(所得税15%、個人住民税5%)の税率で課税することとされます。
  • 特定暗号資産の譲渡損失について、3年間の繰越控除制度が創設されます。
  • これらの改正は、金融商品取引法の改正法が施行された年の翌年1月1日以後の特定暗号資産の譲渡等に適用されます。
  • 総合課税の譲渡所得の基因となる暗号資産について、以下の措置が講じられます。この改正は、金融商品取引法の改正法が施行された年の翌年分以後の所得税に適用されます。

▶ 譲渡益について、譲渡所得の特別控除額を控除しない。
▶ 5年超保有資産に係る譲渡所得の金額の計算上2分の1とする措置を適用しない。
▶ 譲渡損失について、他の総合課税の対象となる所得との損益通算を適用しない。

POINT:

現行では、暗号資産等の譲渡等による所得は総合課税の対象となるため、株式等の金融商品と比べて税負担が重くなることが多く、以前から課税の見直しが検討されていましたが、今回の改正により見直しが行われます。

なお、今回の改正によって、国外転出時課税の対象資産に暗号資産が追加されるのかどうかや、暗号資産取引業を行う者を通さない暗号資産等の譲渡等の取扱いについては、大綱に明記されていないため、今後の動向に注視が必要です。

8. 物価上昇に連動して基礎控除等を引き上げる仕組みの創設

(1) 基礎控除
物価が上昇すると控除の実質的な価値が減少するという課題への対応として、基礎控除の本則部分は、見直し前の控除額に、税制改正時における直近2年間の消費者物価指数(総合)の上昇率を乗ずることで調整されます。また、特例部分についても次の見直しが行われます。

合計所得金額に対して控除額の図表

(注)
1 この改正は、2026(R8)年分以後の所得税に適用され、給与等及び公的年金等の源泉徴収については2027(R9)年1月1日以後支払分から適用されます。
2 2028(R10)年分以後の特例部分は、合計所得金額が132万円以下の場合に37万円とされ、132万円を超える場合は0円とされます。

(2) 扶養親族及び同一生計配偶者の合計所得金額の要件
基礎控除の本則部分の引上げに併せて、扶養親族及び同一生計配偶者等の合計所得金額の要件も、現行の58万円がそれぞれ62万円に引き上げられます。

(3) 給与所得控除の最低保障額
基礎控除の本則部分と同様の措置が講じられるほか2026(R8)年及び2027(R9)年の最低保障額を引き上げる特例が創設されます。

給与所得控除の最低保障額の図表

(注)
1 この改正は、2026(R8)年分以後の所得税に適用され、源泉徴収については2027(R9)年1月1日以後支払分から適用されます。
2 特例部分は、年末調整で適用されます。

9. NISAの拡充

  • 次世代の資産形成を支援する観点から、つみたて投資枠の対象年齢が0歳まで拡充されます。
  • 口座保有者である子が0~17歳の間、年間投資枠は60万円、非課税保有限度額は600万円とされ、子の年齢が12歳以降、子の同意を得た場合のみ、親権者等による払出しが可能とされます。
  • 国内市場を対象とした一定の株式指数及び一定の広がりのある地域を対象とした先進国・新興国の株式指数単体で組成された投資信託商品が、つみたて投資枠の対象となる指数に追加されます。また、幅広い世代の資産運用ニーズに応える観点から、債券が運用資産の50%を超える投資信託が対象に加えられます。

10. ふるさと納税の特例控除額の見直し

個人住民税におけるふるさと納税の特例控除額について、次の見直しが行われます。

現行

改正案

控除限度額

個人住民税所得割額の20%

個人住民税所得割額の20%と次の金額のいずれか低い金額

  • 道府県民税 77万2千円(指定都市:38万6千円)
  • 市町村民税 115万8千円(指定都市:154万4千円)

(注)この改正は、2028(R10)年度分以後の個人住民税に適用されます。住民税は前年の所得に基づき計算されるため、2027(R9)年以後のふるさと納税から改正案の控除限度額を意識する必要があります。

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