メインコンテンツに移動する

ビジネスとサステナビリティを“トレードオン”する統合型経営管理

合同会社デロイト トーマツとウォルターズ・クルワーTagetik Japan株式会社は、開示のための情報収集で終わらせない、サステナビリティを企業価値向上に繋げるための、財務・非財務統合型経営管理の掲題のウェビナーを2026年3月19日に開催した。本稿ではその概要をご紹介する。

TCFD や人的資本開示を経て日本においてはSSBJ によるサステナビリティ情報開示要請への対応が迫る中、企業として「規制対応」から「企業価値創造のドライバー」へとサステナビリティへの向き合い方の変革が求められている。このような潮流の変化を踏まえ、サステナビリティをどう企業経営の意思決定に反映し、企業価値を高めることができるかが、企業の競争力を左右する状況となりつつある。

一方で多岐にわたるサステナビリティテーマに対して全方位で対応するだけでは、企業価値・事業価値向上に結び付かないケースも多く、ビジネスと”トレードオン”となるサステナビリティテーマの特定、更にはトレードオンを促進する”統合型の経営管理制度”の構築の推進をサステナビリティ推進組織やCFO組織といったコーポレート部門が、事業部門と対話をしながら構築していくことが重要である。

近年のサステナビリティの潮流と変化

パリ協定から10年余り。もともとはビジネスからは独立した形でCSR活動/社会貢献活動などから始まったサステナビリティだが、これら取り組みにかかる物差しとして、様々な団体が開示基準やスコア評価の基準を作成し、一律で評価する枠組みが整備されてきた。これまでのサステナビリティは、それら規制/基準対応のための、守りの取り組みが中心であった(サステナビリティ2.0)。

一方で、昨今はトランプ政権による政治・市場の揺り戻しにより、欧州起点の規制強化(CSRD等)・「社会課題解決」の方向性から、「投資家目線」への基準がシフトする中で、企業価値創造のドライバーとしてのサステナビリティの取り組み、ビジネスとサステナビリティを「トレードオン」させる攻めの戦略がより重要になりつつある(サステナビリティ3.0)。

なぜ、事業・組織にサステナビリティが浸透しないのか?

事業・組織にサステナビリティが浸透しない理由の1つは、依然として規制/基準対応(前述のサステナビリティ2.0)の意識が根強いこと、もう1つはビジネスにとってコスト増となることである。

それらを解消するためには、ビジネスの目的とトレードオンとなる接合点を模索することが必要となる。接合点を見つけるには、企業価値を構成する3つの要素とそれぞれの時間軸の違いを意識し、キャッシュフローの上昇×ダウンサイドリスク抑制では「コスト削減によるトレードオン」、成長期待の醸成×ダウンサイドリスク抑制では「トップライン伸長/ポートフォリオ転換によるトレードオン」といった観点でアプローチすることが有効である。

トレードオンを実現する施策

例えば、ビジネスサイドのツリー(いわゆるROICツリー)を分解し、施策/活動レベルまで展開する。同時に、ダウンサイドリスク抑制の観点でもツリーを分解し(下表はGHG削減を例に記載)、施策/活動レベルまで展開することで、ダウンサイドリスク抑制とキャッシュフローの上昇/成長期待の醸成を同時に満たすものを選定する。

ここで重要なのは、サステナ推進部門が事業側としっかり対話を行いながら、接合点となる施策/活動をKPIに落とし込み、事業・部門・個社単位でPDCAサイクルを回していくことである。接合点となるKPIを高めることが、ビジネスとサステナビリティ双方にインパクトをもたらすことになる。

CCH® TagetikによるESGデータ管理基盤/経営管理プロセス高度化

前述のような、ダウンサイドリスク抑制とキャッシュフローの上昇/成長期待の醸成の接合点の特定等については、単なる概念整理にとどまらず、実際の業務へ落とし込むことが重要である。

多くの企業では、経営(財務)情報とサステナビリティ情報がそれぞれ異なる管理体系で運用されているため、全体を一体的に把握することが難しいという課題を抱えている。また、事業ごと・アクティビティ分野ごとに計画や分析が個別に行われていることから、全体の状況を可視化したり、横断的に比較したりすることも困難である。

これらの課題に対しては、高い開発柔軟性を備えたCCH® Tagetikを活用することで、経営とサステナビリティに関する指標や施策(アクティビティ)を共通基盤上で一元的に計画・分析することが可能である。

CCH® Tagetikの画面表示例

ビジネスへの浸透に向けた処方箋

事業・組織の行動変容(チェンジマネジメント)に繋げるには、変革の目的(ビジョン)を明確化した上で、関係者全員が変革を“自分ゴト化”し、“変化に適応”する状態を創り出すことが大切である。

そのためには、前述の接合点となるKPIの抽出にとどまらず、幹の通った戦略ストーリーの再構築や、事業・組織を巻き込んだ経営管理制度への落とし込み、統合的なデータ/システム管理による可視化、人事評価制度への組み込みなど、草の根的に泥臭く続けていく必要がある。

企業価値創造のドライバーとしてのサステナビリティを推進するために

最後に企業価値創造のドライバーとしてのサステナビリティの取り組みを推進するために、デロイト トーマツとして以下3点を提唱したい。

  • 企業価値向上のための納得感のあるストーリー/パスを描けているか
  • 開示のための情報収集で終わらせていないか
  • サステナ推進部門のみの取組みとしていないか

日本企業は、ビジネス部門の他、サステナ推進部門と経営企画・経理財務など別々の組織/職務分掌となっていることが多く、ビジネス・サステナビリティの統合的な取り組みに際して一定のハードルとなっていることが多い。

そのため、経営者やCFOが旗振り役となり、企業価値向上を目的に据えた、全社的な取り組みとして推進していくことが成功の要諦となる。

このページはお役に立ちましたか?

ご協力ありがとうございました。