能登半島地震では、紙を中心とした避難所業務、避難所外・広域避難者の把握、支援機関への情報連携など、被災者情報の収集・管理・活用に関する課題が顕在化しました。本記事では、能登半島地震の教訓から、被災者の状況を継続的に把握し、必要な支援につなげるための被災者データベースの未来について考えます。
2024年1月に発生した能登半島地震では、被災者支援の現場で、情報の収集・管理・共有に関する3つの課題が改めて明らかになりました[1]。
1つは、避難所受付や避難者名簿などが紙・手作業に依存していたため、情報の更新や共有に時間を要し、大きな業務負荷が発生しました。次に、在宅避難者や避難所外避難者、他自治体への広域避難者の所在を把握する仕組みがなく、状況把握が難しい状況がありました。被災者の状況がつかめないことから支援ニーズの把握が遅れたり、十分に把握できなかったりするケースもありました。
災害の激甚化・広域化が進む中、南海トラフ地震など将来の大規模災害に備えるうえでも、能登半島地震において顕在化した、被災者情報収集・管理・活用における課題について、早急に対策を講じる必要があります。
能登半島地震の教訓を踏まえ、国において被災者情報管理の高度化に向けた制度面・実務面の見直しが進み始めています。
災害対策基本法の改正では、被災者支援の充実に向けて、被災者情報の収集、広域避難時の情報連携、広域避難者への情報提供などが位置づけられ、被災者の状況を迅速に把握し、避難元及び避難先市町村間の情報連携や県外も含めた広域避難者への情報提供を可能とする仕組みの構築が必要となってきています[2]。また、避難所業務の効率化や被災者支援に資するデジタルツールの実証、サービスカタログの公開、標準仕様書の整備など、自治体が被災者情報管理においてデジタルツールの活用を進めやすくするための取り組みも始まっています。能登半島地震での教訓を踏まえた被災者データベースの高度化は、今まさに国を挙げて取り組むべき重要テーマになりつつあります。
災害対応では、時間の経過に応じて、求められる支援と必要な情報が変化します。
発災直後から初動期にかけては、安否確認を迅速に行い、不明者の把握と救助を行うことが最優先となります。応急期には、避難生活の長期化による健康悪化や災害関連死を防ぐため、被災者の所在、生活環境、支援ニーズを継続的に把握することが重要です。復旧期には、住まい・罹災証明・給付金など生活再建に必要な情報を整理し、個々の状況に応じた支援制度へつなげる必要があります。さらに復興期には、帰郷意向や地域での生活再建ニーズを把握し、中長期的な支援につなげることが求められます。
災害フェーズをまたいで支援を途切れさせないためには、被災者の「今」を把握し続けること、そして状況に応じた情報や支援を届ける接点を維持することが鍵となります。そのためには、発災直後から復興期まで、被災者情報を継続的に収集・更新・共有できる仕組みが不可欠です。
発災時から一貫した被災者支援を実現するには、被災者の状況を多様な接点から収集し、支援ニーズに応じて活用できる仕組みが必要です。
市町村、都道府県、国、救助機関、民間支援機関などが必要な情報を適切に連携できれば、安否確認、避難状況、支援要請、生活状況などを継続的に把握し、被災者一人ひとりの状況に応じたきめ細やかなプッシュ型支援につなげることができます。
今後の被災者データベースでは、発災直後から一貫して、避難所外避難者や広域避難者を含む被災者一人ひとりの状況を継続的に把握し、国・自治体・民間支援機関が連携して必要な支援を確実に届けるための仕組みづくりが求められます。
デロイト トーマツでは、防災政策、自治体業務、デジタル技術に関する知見を活かし、構想策定からシステム導入・運用まで一貫して支援しています。被災者一人ひとりに必要な支援を確実に届ける仕組みづくりに向けて、今後も官民の取り組みを支援していきます。