クライアントと「未来を一緒に掴む」ために、いかに信頼いただき事業変革・バリューアップを行うか、その要諦を解説する。
(図1:当チームの支援企業様より提供された画像)
上記画像は1年超に渡りご支援している小売企業様が作成された画像(図1)で、クライアント・当社メンバーが熱く議論を交わす光景が描かれている。「未来を一緒に掴む」、すなわち事業・組織変革による業績改善及び持続的成長を成し遂げるために、いかにクライアントから信頼いただき事業変革・バリューアップを行うか、その要諦を解説する。
対象会社は、ユニークな商品展開や独自の商品陳列、店長の遊び心やユーモアあふれる空間創出を可能とする組織風土を強みに、消費者が「偶然の出会い」や「感性の拠りどころ」を求めて来店いただける、他にはない小売企業として飛躍的な成長を遂げてきた。成長を支えたのは、店長自身の嗜好の表現を後押しする裁量権、感性・想像力を遺憾なく発揮できる多彩な人財(店長)、そしてユニークな商品展開・商品陳列を可能とする財務基盤、の3点である。
しかしながら、コロナ禍では財務安全性の確保を優先し一時的に本部一括仕入に比重を寄せた結果、店舗オペレーション能力が低下し、売上低下・在庫増加・評価損増加等の悪循環へと陥った。収益回復が急務であり、かつてない規模の店舗撤退・在庫売却という重大な経営意思決定を下していただく必要があった。
店長やお客様、デベロッパーの皆様と作り上げてきた店舗を閉鎖することは関係者の人生にも影響し、経営層にとって極めて重い決断である。刻一刻と業績が悪化する中で早期の意思決定が求められる一方、容易には決断することができないジレンマにあり、当社のプロジェクトメンバーも環境・心境を理解したうえで経営層が最終的に意思決定できる環境を整備する必要があった。
最終的な意思決定においては以下の情報整理を行い、経営層の皆様に重い決断をしていただいた。
上記の内容に関しては特段奇をてらうことなく、意思決定に資する情報を正確に素早く整理した。本件で重要だったのは、非常に重い意思決定であることをプロジェクト初期にチーム内で認識を統一し、各メンバーが全身全霊でサポートに徹した点である。結果として、その覚悟が経営層に伝わり、初期段階から本音の議論が可能となった。
置かれた環境や心境を丁寧に理解し、常駐で密着支援する。あるいは業務の合間を最大限活用して検討を進めるなど、クライアントに寄り添った対応を行うことで、メッセージの伝わり方・受け止め方は大きく変わる。こうした伴走に努めるメンバーが多いことは、当社ターンアラウンド & リストラクチャリングチームの強みの1つである。
経営層・プロジェクトメンバーで議論を積み重ねた結果、「大規模な店舗撤退・在庫販売」「付随する管理コストの削減」「MD(マーチャンダイジング)改革」を軸とした事業計画を策定した。経営直下で事業計画のアクションプランを推し進めていただき、クライアント・プロジェクトメンバーで激動といっても過言ではない1年間を過ごした結果、初年度から事業計画を大きく上回る結果となった。また、本取組を起点にMD改革や構造改革を加速させており、現在では一層の業績改善が進みつつある。
(図2:本プロジェクトの主な取組事項)
前章では、具体的な事例に基づいて伴走型支援による成果創出までの詳細を解説した。転換期を迎えた企業が事業変革・バリューアップを進めるにあたり、各ステークホルダー間の利害の違いや変化へのリスク・懸念等が障壁となり変革が難航することは少なくない。変革を推し進めるためには、PMOメンバーが関係各所と密に連携を取りながら熱量高く取り組めるか否かがプロジェクトの成否に大きく影響する。当社チームの伴走支援の特長(図3)のうち、熱量高く取り組むために特に意識すべきことを言語化すると主に3点ある。
(図3:当社の支援スタイルの特長)
事業変革・バリューアップ局面に直面した企業の経営層・現場社員の皆様から信頼を得られなければ物事は進まない。時には事務所の閉館時間ぎりぎりまで会議室で分析にあたり、時には店舗を訪問して朝から晩まで消費者の購買動向を調査する。強い覚悟で本局面の打破を目指し、業績目標や経営課題の解決に向けて自らがクライアントの社員と同等かそれ以上に伴走支援に対するオーナーシップとコミットメントを持って取り組む。真摯に、泥臭く地道に改革を推し進めていくためクライアントから信頼いただくことができ、経営層・現場社員の皆様に大きな決断をしていただき全社一丸となって変革に取り組んでいただくことが可能となる。
事業計画の策定にあたっては、プロジェクト初期に事業・財務・オペレーション分析を通じて数週間程度で企業の根源的強み・窮境要因の特定が必要となるが、企業規模・ステークホルダーの人数に比例して解決すべき課題も多岐にわたることが多い。経営層・現場社員の皆様で置かれた環境が異なり課題の取組優先度の意識も変わるため、関係者一丸となり1つの方向性に進むことが困難である。しかしながら、全体のゴールは「窮地に陥っている局面からのV字回復」であり、経営層・現場社員の皆様の取組・意識を本ゴールに合わせる必要がある。そのためには、社内用語・現場用語を使ってクライアントと一体感持って議論を交わしたり、時にはクライアントを鼓舞したり、計画実行の必要性を繰り返し伝えるようなコミュニケーションを取り、関係者の皆様の想い・悩みを理解したうえで1つの方向性へと共に向かっていくことが重要である。
事業変革・バリューアップ局面では、事業や資金繰り、組織・人事等の多方面の課題が同時多発的に発生することが多い。事業や財務の専門的知見を土台としつつも、その枠内に閉じた対応では機動力を欠き、重大な問題に発展するリスクが高まる。事業再生は総合格闘技と呼ばれる所以だが、事業や財務に加えて、法務や税務等の知見に触れておき、自身一人の専門的知見で対応できずとも周囲を巻き込みラストマンシップの精神で屈せずに取り組むことが重要である。
一般的に、事業変革・バリューアップ局面を問わず「泥臭く」「熱量高く」等の意識を求められることは多いが、本人の素養やマインドセットに依拠し、暗黙知となっていることは少なくない。前述の項目は本プロジェクトメンバーが意識して取り組んだことを言語化したものであり、当社チームが共通で持っている価値観である。事業変革・バリューアップ局面に直面した際には、トランスフォーメーション支援の機会をいただけると幸いです。
合同会社 デロイト トーマツ
ターンアラウンド & リストラクチャリングサービス
パートナー 稲川 直樹
マネジャー 三浦 友耶
※上記の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。