近年関心が急速に集まっているサステナビリティに関する製品の開発が進む中で知的財産戦略の重要性も増している。本稿では、開発企業自身の収益にとどまらない、社会貢献という観点も考慮した知財戦略のポイントについて述べる。
近年、サステナビリティ製品への関心が急速に高まっている。環境問題は、今や先進国にとどまらず全ての国に関連する問題である。グローバルで持続可能な社会の実現が求められる中、サステナビリティ製品の開発に取り組むことは企業にとって、単なる社会的責任にとどまらず競争力の源泉にもなっている。また、企業がサステナビリティに対応することは、消費者や取引先からの信頼獲得や企業価値の向上、そして売上の拡大にも大きな影響を与えると考えられる。
こうしたサステナビリティ製品の開発が進む中で、知的財産戦略の重要性も増している。サステナビリティ製品の開発において、高い性能やコストダウンを実現するための技術は重要であるが、それら技術が模倣や流出のリスクにさらされないよう、特許などの知財によってどう保護していくべきか、開発した技術や知財をどう収益に結びつけていくか、その戦略の構築は他の技術領域と同様に不可欠である。またサステナビリティ領域では、企業自身の収益にとどまらず、社会貢献という観点も考慮したアプローチも必要となる。
本記事では、サステナビリティ製品の開発に取り組むことがなぜ企業として重要か、また、それを有効に支えるための知財戦略の実現に向けたポイントを解説する。
なお、本記事においてサステナビリティ製品とは、再生可能エネルギーの活用、省エネルギー性能の向上、リサイクル素材の利用など、環境の保全や持続に貢献するいわゆるエコフレンドリーな製品のことを指す。
サステナビリティの市場規模は2024年時点ではUSD 14.95 billionであり、2029年にはUSD 24.95 billionに達すると予測されている。予測期間中(2024~2029)の年平均成長率は10.78%と見積もられており、成長が顕著な領域である1。
こうした市場の拡大要因は、主に①企業の社会的責任の増加、②製品・技術に対する顧客ニーズの高まりの2点が要因であると考えられる。以下に各理由について詳細を述べる。
営利企業がサステナビリティについて継続的に取り組むためには、社会貢献もさることながら、収益性の確保も重要である。そのためには、市場のニーズをしっかりと捉え、顧客の適切なターゲティング、企業・技術・製品のブランディングを通じて、自社の技術や製品を収益につなげていくことが重要である。
近年では、サステナビリティと技術力の掛け合わせ、またサステナビリティを通じたブランディングにより、他社との差別化を図り、サステナビリティ製品を収益につなげている事例も多く見られる。以下に具体的な企業の事例を挙げる。
上述のように、企業は持続可能な社会実現に向けて、サステナビリティ製品の開発・製品化に積極的に取り組んでいる。こうした製品や技術は、社会的責任の遂行だけでなく、企業の競争力やブランド価値向上、収益にも寄与するため、これをいかに知財により適切に保護し、他社との差別化や事業の安定的な成長を支援していくかは、事業における重要事項である。
企業が新たな製品開発を行う際、その事業・開発戦略に基づいた知財戦略を構築することは必須である。単に環境に優しい製品を提供するだけではなく、企業がその製品を通じて適切な収益を獲得し良好な経営を継続していくことが真の意味でサステナビリティであると言え、その実現のためには、事業戦略に貢献するための有効な知財戦略の策定・実行が重要となる。
知財による事業貢献の方法は、主に①知財による事業の保護・独占、②他社へのライセンスを通じた収益確保・社会貢献、の2つが挙げられる。以下に詳細に述べる。
サステナビリティ領域では、他の技術領域と比較し、社会貢献へのインパクトを考える必要がある。そのため、特に②他社へのライセンスを通じた収益確保・社会貢献については、サステナビリティ領域ならではのアプローチを意識し戦略的に進めていく必要がある。そのアプローチの事例として、ダイキンとGotion-InoBat-Batteries EnergyX Slovakiaの取り組みを以下に解説する。
サステナビリティへの取り組みは、今や企業にとって避けて通れない義務となっており、今後各社が開発に注力すべき分野であると考えられる。その中において、サステナビリティ製品をいかに収益につなげていくかを戦略的に考え、実行していくことこそが、企業自身の持続可能性を高め、真のサステナビリティの実現につながる。サステナビリティはグローバルでの課題であることから、適切な知財戦略の立案と実行を通じて業界・国単位での技術水準向上に貢献することは、グローバルでの事業の成功や社会貢献にもつながる可能性を有している。
サステナビリティ領域の技術について、自社の持続的な利益の確保と社会貢献を両立するためには、適切な特許出願・権利化により自社技術の保護を図ることが重要となる。また自社単独での事業を通じたサステナビリティ技術の社会実装にはリソースの観点から限界があるため、他社へのライセンス・技術移転を通じてサステナビリティ関連の知財を普及させることで、よりインパクトの大きい社会貢献に繋げることも視野に入れる必要がある。他社へのライセンス・技術移転を行う際には、自社の利益の確保と社会貢献をトレードオフにするのではなく、これらを両立するための高度な知財戦略の立案能力が求められる。その際には、標準規格などのルールメイクとそれにあわせた知財戦略の構築、自社単独で社会実装すべき領域と他社に社会実装を託した方が効率的な領域(事業展開国、ノンコア事業領域など)を棲み分けるオープン・クローズ戦略の構築をすることが不可欠となる。
参考
合同会社デロイト トーマツ
知的財産アドバイザリー
パートナー 國光 健一
シニアマネジャー 大島 裕史
シニアコンサルタント 福田 彩
コンサルタント 相本 智美
コンサルタント 井上 翔太