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バイオものづくり技術革新と新産業構造の展望

バイオものづくり技術が活用される領域の一つである素材分野に着目し、最新の技術動向と事業化の課題について、スタートアップの事例を中心に解説する。また、バイオものづくり産業の成長に必要な観点と、スタートアップと大企業の連携可能性について考察する。

1.バイオものづくりの概況

「バイオものづくり」とは、微生物や動植物等の細胞を利用して物質を生産する取り組みである。日本では、2024年に発表された「バイオエコノミー戦略」において、環境負荷を低減する等の社会課題解決と経済成長との両立を可能する技術として、注力領域として位置付けられている。また、2025年11月に発表された日本成長戦略の戦略分野の一つとして「合成生物学・バイオ」が挙げられている。

ゲノム解析技術やタンパク質設計技術等のバイオテクノロジーの発展により、2000年以降、抗体医薬品をはじめとするバイオ医薬品が上市されてきた。医薬品業界が牽引する形で、学術研究の成果が社会実装されてきたが、近年、気候変動等の社会・環境課題への注目の高まりから、医薬品・ライフサイエンス以外のさまざまな分野でバイオテクノロジーの活用が期待されている。

バイオものづくりは、将来的に100兆円規模[1]という巨大な市場が形成されると予想されており、なかでも本稿が注目する「高機能バイオ素材・バイオプラスチック」分野の2030年世界市場規模は41.4兆円と試算されている。バイオものづくり市場の成長を牽引する要因は、技術進展、消費者ニーズの高まりに加え、社会・環境課題に対応しながら経済的な成長を目指す各国・地域の政策である[2]。具体例として、アメリカの「Bold Goals for U.S. Biotechnology and Manufacturing(2023)」[3]、EUの「EU Bioeconomy Strategy(2018)」[4]、日本の「バイオエコノミー戦略(2024)」[5]などが挙げられる。

バイオものづくりが、社会・環境課題の解決方法として注目される理由の一つは、環境負荷の低減である[6]。従来の石化燃料を用いた化学的製造方法と比べ、常温常圧下等の温和な条件で製造することによるエネルギー使用量の削減や、環境負荷の大きい有機溶剤の使用量削減を見込むことが出来る。また、経済安全保障上の要請も重要な理由の一つである[7]。熱帯雨林の伐採を伴うパーム油やカカオバターの生産等、原料供給の不確実性に対し、資源や食品を国内で安定的に確保する新たな生産方法という点でバイオものづくりは注目を集めている。

2.バイオものづくりの生産方式とビジネスモデル

「バイオものづくり」は細胞を利用したものづくりであり、2つの方式に大別される。

①微生物を直接利用する方式

  • 微生物を用いて原料を目的の生産物に変換する。細胞内で行われる連続的な酵素反応を利用し、化学反応では作り出すことが難しい物質の合成や低エネルギーでの製造実現に期待がある。一方、細胞内で同時並行的に進む複数の反応を精密にコントロールする点には技術的な課題がある。

②微生物由来の酵素を単離して利用する方式

  • 微生物に作らせた酵素を単離して、酵素反応を利用して原料を目的の生産物に変換する。単一の反応となり、最適化・効率化しやすい一方、細胞内で連続して行われる反応を全てフラスコ内で再現することは難しい。

また、共通の課題としてコストの問題がある。細胞培養を行う設備への投資や細胞培養・単離などに伴うランニングコストにより、生産物のコストが高くなりやすい。

コストの構造とビジネスモデルを理解するために、バイオものづくりにおける製品化までの工程を整理すると、主に(1)原料確保、(2)微生物・酵素の確保、(3)プロセス開発、(4)生産性の向上および(5)製品販売の5つの工程に分類される。

バイオものづくりは、生産フローに細胞培養を伴う点でバイオ医薬品に類似しており、バイオ医薬品と比較しながら、ビジネスモデルについて整理する。

バイオ医薬品では、(2)細胞培養と(3)プロセス開発工程への設備投資が大きいことに起因する経済合理性の観点から、製薬企業の垂直統合型から、水平分業型へシフトした。パイプライン創出や創薬プラットフォーム開発を行うスタートアップ、生産開発を行うバイオCDMO、非臨床・臨床試験を受託するCROとの水平分業が進展した[8]

バイオものづくりは、なお経済合理性のあるモデルが探索されている段階にあり、水平分業型ビジネスと垂直統合型ビジネスの両ビジネスモデルが並行して進展している。

水平分業型のビジネスに取り組む企業は、製品化までの工程のうち、特にキーとなる工程でのブレイクスルーを目指して事業を展開している。例えば、「(2)微生物・酵素の確保」においては、微生物を設計する技術、原材料を効率的に変換する酵素の設計技術への取り組みが見られる。「(4)生産性の向上」においては、微生物生産や酵素反応を商業スケールで量産化行うCDMO企業が挙げられる。

一方、垂直統合型ビジネスに取り組む企業は、原料調達から製造まで一気通貫で行っており、自社で全ての工程をコントロール可能であるが、開発すべき技術の広さ、設備投資の大きさというリスクも抱える。水平分業型と垂直統合型の双方を組み合わせたハイブリッド型のスタートアップも存在する。

ここからは、それぞれのビジネスモデルごとにスタートアップの取り組み事例を紹介する。

3.水平分業型スタートアップの事例

バイオものづくり産業において先進的な製品を創出するためには、特にプロセスの上流に位置する微生物や酵素に新たな性質を付与することが重要である。スタートアップはこの上流部分において、競争優位性の原資となるような技術開発を行っており、優れた微生物や酵素を連続的、かつ、再現性良く生み出すという観点で、プラットフォーム・設計技術に注目が集まっている。

新規微生物・酵素の設計は、既知の微生物・酵素を出発点として改変を加え、改良品を取得することが一般的である。起点となる微生物の情報を整備したプラットフォームや酵素設計技術は重要である。それぞれの領域で技術的に特徴があるスタートアップを紹介する。

bitBiome:微生物ゲノムプラットフォーム開発

bitBiome(日本、2018年設立、総調達額17億8,800万円)は、ゲノム解析技術「bit-MAP®」、世界最大級の微生物ゲノムデータベース「bit-GEM」、高速・高精度な酵素探索技術「bit-QED」によって構成される微生物プラットフォームを保有する[9]

微生物資源を有効活用するために、培養が難しい微生物のゲノム解析への取り組みが進んでいる。環境中の微生物のうち培養可能なものは1%に過ぎず、微生物を回収して培養した後にゲノム解析をする手法では、残り99%の微生物資源は利用が難しかった[10]

従来は、環境中の微生物群集をまとめて処理してDNAを抽出し、異なる微生物のゲノムデータが混在した状態で解析・同定する方法が主流であったが、複数の微生物由来の大量で複雑なゲノムデータを解析する必要があり、十分な帰属と考察が難しい。これに対して、bit-MAPでは微生物群集から個々の微生物をカプセルに封入して単離することにより、ゲノム解析を高精度化し、培養が困難な微生物のゲノムを個別に解析することを可能にした[11]

bitBiomeは、土壌、海洋など多様な環境の微生物ゲノムを解析し、20億個を超える遺伝子データを蓄積している。これらの遺伝子データと、独自の技術を活用することにより、製薬、化学、食品等のさまざまな業界において、低コスト・短期間での微生物株と酵素の開発が期待される。

ENZYMIT、 ZYMVOL:酵素設計プラットフォーム

ENZYMITとZYMVOLは次世代酵素設計プラットフォームを開発する。

酵素は、生体内の化学反応を触媒するタンパク質であり、アミノ酸が結合してできた生体高分子である。酵素反応は、アミノ酸同士が結合して形成される立体的なポケットで起こる。酵素と反応する物質(基質)がポケット(活性部位)に結合すると、一時的に酵素-基質複合体が形成され、基質が化学的に変化し、最終的に生成物となって酵素から離れる。酵素は反応後も変化せず、繰り返し同じ反応を促進する。酵素の立体構造は、構成するアミノ酸の種類と配列によって決定されるため、酵素反応に大きな影響がある活性部位やその周辺の立体構造についても、アミノ酸の種類と配列が大きな意味を持つ。このため、酵素の活性を向上させるアミノ酸の配列を、シミュレーションを用いて探索する取り組みが進む。

一方、酵素の物性や細胞での生産可能性は別の課題として残る。どれほど有望な酵素であっても、微生物での生産が難しい酵素や生産効率が悪い酵素は使用に適さないため、産業応用では重要な検討事項となる。

ENZYMIT(イスラエル、2020年設立、総調達額25億2,200万円)は、深層学習による酵素設計ツール「CoSaNN」と、生産性予測ツール「SolvIT」による酵素設計プラットフォームを開発し、酵素設計サイクルを従来よりも大幅に短縮した高効率化を追求する[12]。CoSaNNでは、既知の酵素のアミノ酸配列と機能のデータベースをもとに、深層学習を用いてアミノ酸配列から酵素の立体構造と機能を予測することで、改良酵素の候補配列を効率的に選定する[13]。得られた候補酵素の絞込みには、SolvITを利用し、酵素の生産性や安定性といった実用的な指標を重視した優先順位づけを行い、デスクトップでのシミュレーションから実用までのギャップを埋めている。同社は実際に、食品技術会社との提携実績を有し、培養肉の大規模生産に必要な血清タンパク質を開発している[14]

ZYMVOL(スペイン、2017年設立、総調達額12億2,600万円)は、物理化学・量子化学を利用して、de novoで高精度に酵素を設計するプラットフォーム「BIOMATCHMAKER」を開発している[15]。活性部位におけるアミノ酸の立体的な配置をモデリングし、基質との反応を予測して候補酵素の絞込みを行う[16]。ZYMVOLの最大の強みは、酵素の反応機構をシミュレーションして設計する点であり、酵素機能の予測精度や理論的な裏付けが高い。今までにない革新的な配列が見つけられる一方で、酵素の生産性や安定性といった工業的な最適化については、ENZYMITの手法と比べて相対的に弱い可能性があり、現時点では、応用や商業化の実績は限定的である。他手法と組み合わせて実用化までのギャップを埋めていく取り組みが期待される。 

ENZYMIT、ZYMVOLという2つのスタートアップを取り上げたが、ENZYMITは応用・産業化志向、ZYMVOLは基礎科学・理論精度向上志向と整理することが可能である。両社の技術的アプローチは補完的な関係にあると言え、それぞれの企業が独自の技術を深化させることによって、バイオものづくり全体の発展が加速することが期待される。

4.垂直統合型スタートアップの事例

垂直統合型の取り組みは、バイオものづくりで製造しやすく、かつ、コスト許容度の高い高付加価値製品な領域で見られる。

その中でも、生分解性プラスチックとして注目されるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)の開発への取り組みを取り上げる。PHAは、微生物や植物の代謝を活用したバイオベース素材として注目されており、生分解性やバリア性が特徴である。さらに、PHAは構成モノマーの種類を変えることで物性が大きく変化し、幅広い性質を持たせることが可能で、付加価値を追求しやすい[17]。ポリプロピレンやポリエチレンの代替として期待があり、汎用用途として食品包装・農業用フィルム・使い捨て容器、高価格品としては医療分野における生体吸収性素材、化粧品容器、高機能フィルム等への応用が見込まれる素材である。

微生物におけるPHAの生産は、生物の特性をコントロールすることで、「モノマーの種類」と「組成」が変わる。生物種によって、PHAを合成する酵素(PHA synthase)が異なり、これがPHAの性質に影響を与える。例えば、Cupiavidus necatorは短鎖長(scl-PHA)が得意で、硬いPHAを生成する。Psedomaonas属は中鎖長(mcl-PHA)が得意で、C6からC14の中鎖長モノマーを合成するため、ゴムのような柔軟性と弾性を持つPHAを生成する[18]。また、生物の代謝経路と炭素源(原料)によっても生成されるモノマーの種類が異なることが知られている。このようなPHAの特性に注目し、独自の技術開発で開発・製造に取り組むスタートアップとして4社を取り上げ、各社のイノベーションと社会的意義について紹介する。

ourobio:農業副産物を原料とし、機能性PHAと副産物の高付加価値化

ourobio(米国、2020年設立、総調達額2,900万円)は、遺伝子組み換えを利用したPHAの高機能化・生産効率向上を技術的な特長とし、副産物である高価格帯の顔料をプラスチック製品や塗料の原料として販売することで、収益性の高いビジネスを目指す[19, 20]。原料調達においても、ホエイなど未利用資源の活用により、コスト削減と廃棄物削減による資源循環を両立する。

plastus:地域課題を解決するフィードストック戦略

plastus(サウジアラビア、2021年設立、総調達額6,500万円)は、食品廃棄物を原料に、自然環境下で数か月以内に分解される一方、未使用状態では5年以上保存可能な耐久性を兼ね備えるPHAを生産することを特徴としている[21]。サウジアラビアでは食品廃棄物が国内廃棄物の約半分を占めるという社会課題があり、食品工場や流通過程から発生する廃棄物を原料化することで原材料コスト削減と環境負荷低減を両立し、植物由来PHAに対してコストメリットを訴求している[22]

RWDC Industries:認証の取得と迅速・低コストな新規ポリマー開発

RWDC Industries(シンガポール、2015年設立、総調達額402億円)は、植物由来の油脂・糖類や廃食用油などを原料に、PHAポリマー「solon™」を商業プラントで量産している[23]。solon™は生分解性と従来プラスチック並みの強度・耐久性を両立し、TUV Austriaの生分解性・堆肥化可能性認証を取得している。通常20年・10億ドル要するとされる新規ポリマー開発を10年・5億ドル以下で市場導入することを目指している[24]。さらに、装置開発・プロセス開発を行うアルファ・ラバル社と共同で、シングルユースPHA製品の製造プロセスを開発し、社会実装を進める[25]

benviro:2段階の発酵プロセスと廃棄物マネジメントによるスケール化

benviro(スペイン、2018年設立、総調達額48億3,000万円)の特徴は、食品廃棄物・下水汚泥・農業廃棄物等をバクテリアによって短鎖揮発性脂肪酸(VFA)に分解し、生成したVFAを別の微生物に供給してPHAを効率的に生産する2段階プロセスである[26]。特許取得済みの抽出工程により高品質・高効率な生産を実現し、多様な用途向けに素材を開発する[27]。標準化された廃棄物処理システムの提供により、欧州における環境負荷低減と循環型社会の実現に貢献している。

4社はいずれも「微生物・発酵技術×原料循環×プロセス革新」で垂直統合型を成立させ、循環型経済を志向しつつ、循環型のサプライチェーンを構築に向けて進化していくと考える。物性制御と連続化を含めたプロセス効率化によりコスト競争力を高め、地域の資源循環(廃棄物・副産物活用)で環境価値を一層高めている。今後は、用途別の分解・安全性に関する標準の策定、インフラとの連携、サプライチェーンのトレーサビリティ強化が、循環型ビジネスへの進化を加速すると見込む。

5. バイオものづくり以外の低環境負荷素材製造アプローチ

PHAはポリプロピレンやポリエチレンの代替として期待があるが、その他のプラスチックにおいても、低環境負荷素材の開発が求められており、AvantiumとBioworksは細胞や酵素を用いない技術でサステナブル素材の普及を牽引している。目的に応じた手法の使いわけが重要であり、環境負荷についても精査する必要がある。

Avantium:PET代替品の開発

Avantium(オランダ、2000年設立, 総調達額662億100万円)はグリーンケミカル分野のリーダーとして、YXY技術により小麦やトウモロコシ由来グルコースからフランジカルボン酸(FDCA)を製造し、高機能バイオを生み出している[28]。ポリエチレンフラノエート(PEF)は従来PETよりガスバリア性・耐熱性に優れ、100%植物由来の「Releaf®」として展開。世界初の商業プラント建設や、飲料大手Refresco、Albert Heijnとの協業によるPEF製ジュースボトルの商業化も実現した[29]。原料調達についても、酸濃度を段階的に変化させて加水分解を行い、有用物質を分離・生成する技術を有する。非食用植物残渣からの糖類生産や廃繊維からの綿・ポリエステル回収に取り組んでいる[30]

Bioworks:ポリ乳酸樹脂の開発

Bioworks(日本、2015年設立、調達総額5億1,500万円)はサトウキビ由来のポリ乳酸樹脂「PlaX™」を開発し、ファッション業界の大量廃棄問題解決に挑戦している[31]。独自開発の植物由来の改質剤により、生分解性・機械的強度・耐熱性の向上と、加水分解・微生物分解のしやすさを両立する[32]。量産体制が確立し、2024年度には50ブランド以上で採用されるなど、国内外での市場展開が進んでいる [33]

6.スタートアップが抱える課題と大企業連携による社会実装の加速

バイオものづくりにおいて、各スタートアップが取り組む最新の事例を紹介してきた。各スタートアップは独自の取り組みにより、各領域のビジネスにおいて自社独自の技術や自国の社会課題などの外部環境を活用し、ビジネス形成を試みている。一方で、社会実装に向けては、業界全体に共通する課題も存在する。革新的な技術を開発するスタートアップと大企業が連携することで、実用化を一層加速させることができると考えられる。

① コスト負担の大きさ

バイオものづくりの検討は、商業化検討のためのコスト負担が大きい。実験材料である細胞・タンパク質や実験装置が高額であり、初期的な量産検討スケールに対応する市販の20~50L程度の培養槽だけでも1,000~2,000万円程度の設備投資が必要となる。初期投資やランニング費用が共に大きく、スタートアップは多額の資金調達が必要となる。この課題を克服するために、多くのスタートアップはAIを活用したシミュレーション技術による実験の効率化とノウハウ蓄積を進めている。政策と連動した助成金で実験段階の検証は進む一方、量産化と安定した製造の実現は依然として大きな課題である。
大企業が、量産化・プロセス技術、蓄積されたノウハウ、製造オペレーション体制を提供することで、商業化が加速することが期待される。

② 原材料の安定確保

原材料にバイオマスを用いるスタートアップは、バイオマスの安定確保が課題となり、ビジネス拡大の障害となっている。スタートアップは既存のサプライチェーンへの参加や構築の機会が限定的である。
大企業の広範な商流ネットワークを活用することで、原材料獲得ルートの多様化や安定化が実現できる可能性がある。

③ 製品の流通・販売

バイオものづくり製品の価値は、コスト以外の性能・価値を訴求する必要があり、消費者の教育が求められるが、顧客の受容性がまだ十分に高まっていない。スタートアップはマーケティング・ブランディング力が相対的に弱く、製品の受容性や販路の獲得が難しい。
大企業が既存製品で築いてきた商流・流通網を活用した販路獲得と高いブランド力を活かしたマーケティング戦略によって販売の加速が期待できる。

7.バイオものづくり事業化加速のためのスタートアップと大企業協業の事例

実例として、微細藻類を利用して機能性食品などの製品化を進めるCheckerspot(米国、2016年設立、総調達額163億5,000万円)の例を取り上げる。同社は、発酵由来の微細藻類オイルを起点に、分子設計(脂肪酸組成最適化)と化学変換を通じてポリオールやポリウレタン等の高機能材料へ展開する要素技術を自社で内製化しつつ、実用化段階では製品カテゴリー(アウトドア用品、テキスタイル、パーソナルケア原料、食品用途など)ごとに協業先の大企業を選定し、複数用途で並行的に事業化を進めるポートフォリオ戦略を採用している [34、35、36、37]。自社ブランドで素材の性能実証・市場検証を行いながら、カテゴリーリーダー企業とは共同開発・供給契約・ライセンス等の形でスケール展開を図る構えである。

8.おわりに

バイオものづくりの事業化促進に向けては、技術や社会情勢を巧みに活用するスタートアップと、スタートアップが不足するアセットを効果的に補える大企業が協業する体制の構築が有効である。地域課題の解決や標準化・認証の利用を通じて産業化を進めることで、バイオものづくりの社会実装が加速することが期待される。今後、多くの大企業がスタートアップとの連携に関心を寄せ、実際に連携を進めることで、バイオものづくりの社会実装がさらに進展することを期待したい。

執筆

デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社
マネジャー 鈴木 慶子
シニアコンサルタント 後藤 俊
アナリスト 高田 遼

協力

デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社/Deloitte Consulting US San Jose
シニアマネジャー Mina Hammura

監修

デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社
パートナー 宮澤 嘉章
(2025.11.10)
※上記の社名・役職・内容等は、掲載日時点のものとなります。

【参考文献】

[1] 経済産業省「バイオエコノミー戦略の概要」https://www8.cao.go.jp/cstp/bio/bio_economy-gaiyo.pdf
[2] WORLD BIOECONOMY ASSOCIATION「THE WORLD CIOECONOMY FORUM」
https://bioeconomyassociation.org/the-world-bioeconomy-forum/
[3] U.S.DEPARTMENT of ENERGY「Bold Goals for U.S. Biotechnology and Biomanufacturing: Harnessing Research and Development to Further Societal Goals Report」
https://www.energy.gov/eere/bioenergy/articles/bold-goals-us-biotechnology-and-biomanufacturing-harnessing-research-and
[4] European Commission「Bioeconomy Strategy」
https://environment.ec.europa.eu/strategy/bioeconomy-strategy_en
[5] 内閣府「バイオエコノミー戦略」
https://www8.cao.go.jp/cstp/bio/index.html
[6] 経済産業省「ホワイトバイオ」
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/bio/Kennkyuukaihatsu/whitebio/whitebio.html
[7] 経済産業省「バイオ政策のアクションプラン」
https://www.meti.go.jp/press/2024/08/20240819002/20240819002-2r.pdf
[8] 経済産業省「バイオCMO/CDMOの強化について」
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shomu_ryutsu/bio/pdf/011_09_00.pdf
[9] bitBiome公式「Technology」
https://bitbiome.co.jp/technology/
[10] bitBiome株式会社. シングルセル解析を行う方法およびそのための装置, 日本国特許第6877804号, 2019.
[11] Hosokawa, M., Nishikawa, Y. Tools for microbial single-cell genomics for obtaining uncultured microbial genomes. Biophys Rev. 2024;16, 69–77. doi: https://doi.org/10.1007/s12551-023-01124-y
[12] L. Zimmerman,N. Alon,I. Levin,A. Koganitsky,N. Shpigel,C. Brestel, & G.D. Lapidoth, Context-dependent design of induced-fit enzymes using deep learning generates well-expressed, thermally stable and active enzymes. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2024. 121 (11) e2313809121.doi: https://doi.org/10.1073/pnas.2313809121
[13] ENZYMIT公式「Our Technology」
https://www.enzymit.com/technology
[14] PR Newswire「Enzymit Partners with Aleph Farms to Reduce Production Costs and Shorten Time-to-Market for Cultivated Meat」
https://www.prnewswire.com/il/news-releases/enzymit-partners-with-aleph-farms-to-reduce-production-costs-and-shorten-time-to-market-for-cultivated-meat-301825570.html
[15] zymvol公式「Research & Development」
https://zymvol.com/zymvol.com/public-projects/
[16] Monza, E., Gil, V., Lucas, M.F. (2022). Computational Enzyme Design at Zymvol. In: Magnani, F., Marabelli, C., Paradisi, F. (eds) Enzyme Engineering. Methods in Molecular Biology, vol 2397. Humana, New York, NY. doi:10.1007/978-1-0716-1826-4_13
[17] Acharjee SA, Bharali P, Gogoi B, Sorhie V, Walling B, Alemtoshi. PHA-Based Bioplastic: a Potential Alternative to Address Microplastic Pollution. Water Air Soil Pollut. 2023;234(1):21. doi:10.1007/s11270-022-06029-2
[18] Hahn T, Alzate MO, Leonhardt S, Tamang P, Zibek S. Current trends in medium-chain-length polyhydroxyalkanoates: Microbial production, purification, and characterization. Eng Life Sci. 2024;24(6):2300211. doi:10.1002/elsc.202300211
[19] ourobio公式「Home」
https://www.ourobio.com/
[20] Transfoam DBA Ourobio LLC. Methods for the coproduction of polyhydroxyalkanoates and indigoid derivatives from whey protein and lactose, WO2023168442A1, 2023
WO2023168442A1 - Methods for the coproduction of polyhydroxyalkanoates and indigoid derivatives from whey protein and lactose - Google Patents
[21] plastus公式「ABOUT US」
https://www.plastus.com/about
[22] 2030 solutions「Saudi startups Polymeron and Plastus are driving alternative agro-solutions to produce biodegradable bioplastics」
https://2030.solutions/saudi-startups-polymeron-plastus-driving-agro-solutions-produce-biodegradable-bioplastics/
[23] RWDC Industries 公式「RWDC Industries」
https://www.rwdc-industries.com/
[24] RWDC Industries 公式「Rapid Innovation」
https://www.rwdc-industries.com/about#RapidInnovation
[25]アルファ・ラバル公式「アルファ・ラバルとRWDC Industries社、循環型経済ソリューションの推進に向けた共同開発契約を発表」
https://www.alfalaval.jp/media/news/2023/alfa-laval-and-rwdc-industries-announce-joint-development-agreement-to-advance-circular-economy-solutions/
[26] benviro公式「The future of plastics in our hands」
https://benviro.es/
[27] benviro公式「PHA A leading Sustainable Plastic」
https://benviro.es/pha-sustainable-plastic/
[28] Avantium公式「Releaf® and FDCA」
https://avantium.com/products-technologies/pef-and-fdca/
[29] Avantium ニュースリリース「Albert Heijn to use Avantium’s 100% plant-based PEF for packaging of own-brand products」
https://newsroom.avantium.com/albert-heijn-to-use-avantiums-100-plant-based-pef-for-packaging-of-own-brand-products/
[30] Leenders, N., Moerbeek, R.M., Puijk, M.J. et al. Polycotton waste textile recycling by sequential hydrolysis and glycolysis. Nat Commun. 2025;16:738. doi:10.1038/s41467-025-55935-6
[31] Bioworks公式「Bioworks」
https://bioworks.co.jp/
[32] 株式会社TBM. 生分解性樹脂成形品、及びその製造方法並びにこれに用いられるペレット体, 日本国特許第6675690号, 2018.
[33] Bioworks公式「Progress Report 2025」
https://bioworks.co.jp/uploads/Progress-Report_JPN.pdf
[34] DIC公式「微細藻類のスキンケア材料開発を目指し、米・バイオベンチャー企業 チェッカースポット社の「WING™プラットフォーム」を活用する2回目の共同開発契約を締結」
https://www.dic-global.com/ja/news/2022/ir/20220411173528.html
[35] BusinessWire「HO Sports Unveils Sabre Water Ski, Displacing Traditional Petroleum-Based Materials With Checkerspot’s Biobased Foam Core」
https://www.businesswire.com/news/home/20230918168004/en/HO-Sports-Unveils-Sabre-Water-Ski-Displacing-Traditional-Petroleum-Based-Materials-With-Checkerspots-Biobased-Foam-Core
[36] GORE公式「Gore Innovation Center and Checkerspot Collaborate on High Performance Textiles」
https://www.gore.co.jp/node/29061
[37] Business Wire「AAK Partners with Checkerspot to Develop New Sustainable Algae Oil」
https://www.businesswire.com/news/home/20240321808643/en/AAK-Partners-with-Checkerspot-to-Develop-New-Sustainable-Algae-Oil

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