デロイト トーマツ Customer Offeringは2026年6月5日、BVLGARI HOTEL TOKYOにて「CMO/CDO Round Table」を開催。本ラウンドテーブルには、多様な業界の経営・事業責任者に加え、アドビ、Google Cloud Japanの関係者が参加し、マーケティング領域におけるAI活用をテーマに、顧客体験の高度化、次世代データ基盤、AI時代に対応する組織・人材のあり方についての意見が交わされた。
開催概要
参加者
電機メーカー、総合金融サービス企業、保険持株会社、百貨店グループ、生命保険会社、グローバル製薬企業、自動車メーカー、医薬品メーカーなど、多様な業界を代表する企業から責任者層が参加。あわせて、アドビ、Googleの関係者、およびデロイト トーマツのファシリテーターも加わり、それぞれの視点から議論を深めた。
多様な業界の経営・事業責任者が集ったラウンドテーブルでは、マーケティング領域におけるAI活用が、もはや施策の効率化だけでは語れないことが改めて浮き彫りになった。議論の中心にあったのは、顧客体験の高度化そのものよりも、それを支えるデータ基盤、投資対効果、組織設計、人材育成、そしてAIと人の役割分担である。
生成AIやAIエージェントの進化により、企業は顧客理解、コンテンツ生成、需要予測、営業支援などをこれまでにない速度で高度化できるようになった。一方で、現場では「何ができるか」よりも、「何から着手すべきか」「どこまで投資すべきか」「どこは人が担うべきか」といった、より経営に近い問いが前面に出てきている。今回のラウンドテーブルは、そうしたAI活用の“次の論点”を、業界横断で確認する場となった。
議論のなかで繰り返し挙がったのが、データの不足や分断である。需要に応じて営業・サービスリソースを最適配置したい、顧客ごとに最適なジャーニーを描きたい、複数部門に散在する顧客情報をつなぎたい――こうした構想はいずれも、前提となるデータが整っていなければ実現しない。特に課題として共有されたのは、データが存在していても、意思決定に使える粒度・鮮度・意味づけになっていないという点だった。営業現場が持つ情報が印象ベースに留まる、顧客情報が部門ごとに別管理されている、重要な情報が数カ月遅れでしか入ってこない。こうした状態では、AIを導入しても期待した成果にはつながりにくい。
この論点に対し、デロイト トーマツ パートナー 熊見は、単にデータを集めるのではなく、AIを使って情報を補正し、意味づけし、活用可能な形に変えていくことが重要だと指摘した。データ整備は“事前準備”ではなく、AI活用と並走させながら進めるテーマになりつつある。
もう一つ大きなテーマとなったのが、AIコストとROIである。すでに多くの企業がAI活用を始めている一方、利用量の拡大に伴ってコストは確実に増えている。とりわけAIエージェントのように複数モデルや処理を組み合わせる活用が進むほど、費用管理は複雑になる。
そのため、重要なのは「AIをどこに使うか」ではなく、どこに使えば事業成果に最も近づくかという優先順位づけである。顧客体験の改善、営業生産性の向上、新規需要の獲得、あるいはコスト削減。企業ごとにゴールは異なるが、投資判断の起点を明確にしなければ、AI活用は“便利だが高い”取り組みに終わりかねない。
当社のファシリテータも議論のなかで次のように述べている。
「データをどこまで取り、どこまでAIに担わせ、人間とどう役割分担するかは永遠のテーマです。だからこそ、まずマネタイズゴールを決める。そのうえで、AIで何ができるか、どのデータを蓄積するかを考える順番が重要」
AI導入を目的化せず、収益や顧客価値にどう結びつけるかという視点で設計すること。そこに、各社共通の経営課題があった。
マーケティングの観点では、従来のセグメント起点の打ち手から、より個別化された顧客対応への移行が明確なテーマとなった。だが今回の議論では、単にコンテンツを出し分けるだけでは不十分であり、顧客ごとに体験の流れそのものを変えていく発想が必要だという認識が共有された。特に、購入ニーズが顕在化しにくい商材や、新規事業の立ち上げ局面では、この論点がより重要になる。顧客に何を届けるかだけでなく、どの順番で、どの接点で、どの文脈で伝えるか。AIはその設計を支援できるが、最後に必要なのは、顧客に届く“本物のストーリー”である。この点について、AIでできるのはパターン生成や最適化であり、事業の背景や現場の実感に根差した本質的なストーリーは人がつくるものだと示唆が挙がった。量とパターンを増やすことはAIで容易になった一方、何を語るべきかという問いの重みは、むしろ増している。
議論の終盤では、AI時代に求められる人材と組織のあり方にも話題が及んだ。現場任せでツールを広げるだけでは限界があり、経営層自身がAIを理解し、説明責任を果たせる状態をつくる必要があるという意見は多くの参加者に共通していた。
同時に、AIが高度化するほど、人に求められる役割も変わる。探索する力、共感する力、倫理的に判断する力。こうした能力は、業務効率化の文脈では見落とされがちだが、組織がAIを使いこなすうえで不可欠である。AI人材とは、単にツール操作に長けた人ではなく、AIを前提に意思決定し、現場と経営をつなげられる人材を意味することが、今回の議論から見えてきた。
今回のラウンドテーブルで明らかになったのは、マーケティング×AIのテーマが、もはやマーケティング部門だけの議題ではないということである。顧客体験の高度化は入口にすぎず、その先にはデータ統合、投資管理、組織設計、人材育成、ガバナンスまでを含む全社変革がある。
熊見は総括として、次のように考える。
「AIが業務効率化の一部を担うだけでなく、事業成長や顧客価値向上を根本から変えるテーマであることを、改めて確認する機会になりました。一方で、AIは魔法の杖ではありません。投資対効果を見極め、人材育成や横断推進体制、ガバナンスといった本質的な課題に向き合うことが不可欠です」
AI活用の成否を分けるのは、最新技術への感度だけではない。どの課題に集中し、どの価値を伸ばし、どこで人が責任を持つのか。今回の議論は、その問いに真正面から向き合う企業こそが、次の競争優位を築くことを示していた。
今回のラウンドテーブルを通じて改めて浮き彫りになったのは、AIを活用したマーケティング変革が、構想や技術導入だけでは完結しないという点である。顧客体験の高度化、データ基盤整備、ROIを踏まえた優先順位づけ、そして組織・人材変革までを一体で進めていくには、戦略から実装、定着化までを見据えた推進体制が不可欠となる。
デロイト トーマツは、アドビやGoogleをはじめとするアライアンス企業との協業を通じて、こうした企業変革を包括的に支援している。たとえば、アドビとの連携においては、コンテンツ運用、パーソナライズ、顧客接点の最適化といったマーケティング実務の高度化を支援し、Googleとの連携においては、AI・クラウドを活用したデータ活用基盤の整備や、意思決定の高度化、業務変革の推進を支援することが可能である。
重要なのは、個別のソリューション導入に留まらず、企業ごとの事業課題や顧客戦略に即して、どの領域から着手し、どのように成果創出につなげるかを設計することである。デロイト トーマツは、アライアンス企業各社の先進的なテクノロジーと、自社の業界知見・構想策定力・実行支援力を掛け合わせることで、マーケティング領域における変革の実装を力強く後押ししていく。
AI時代のマーケティングに求められるのは、単なる効率化ではなく、顧客価値の再定義と、それを実現する組織能力の構築である。デロイト トーマツは今後も、アライアンス企業との共創を通じて、企業の持続的な成長と顧客体験変革の実現を支援していく。