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中長期の企業価値向上につながる、ROIC経営の実装へ
ROIC(Return On Invested Capital)は、企業価値向上に向けた経営の実効性を測る重要指標です。ROIC経営を形骸化させず、現場実装まで進めるための検討ステップ例を解説します。
なぜ資本コスト経営が求められるのか
昨今、金融機関や事業会社間の株式持合が減少し、上場会社の株主構造が大きく変化するなか、日本企業は事業リスクに応じた投資家からの期待リターンを意識した経営を行う必要性が増しています。
考察
- 企業に比べると、投資家は売上高だけの成長には相対的に関心が薄い
- 売上高、利益額の成長に関心があると同時に、収益性に見合った資本コントロールに関心の軸足がある
- 投資家は、事業別に超過収益力を知りたい傾向
投資家ニーズ
- 「資本収益性(リターン)」と「資本コスト(コスト)」に対する情報格差
- アンケート結果は、JPXの要請「資本コストや株価を意識した経営の実現」とも整合する内容
ROIC経営実装の必要性
投資家からは、特に資本収益性や資本コストに関して投資検討の一助となる判断材料へのニーズが高まっています。
こうした背景のもと、コーポレートガバナンス・コードの改訂や成長投資ガイダンスの公表により、企業には、資本コストを意識した経営資源配分、事業ポートフォリオの管理と見直し、成長投資の実行と説明がこれまで以上に求められます。
このような要請に応えるためには、事業の収益性と資本効率を可視化し、資本コストとの比較を通じて経営判断につなげるROIC指標の活用が欠かせません。ROICは、中長期の企業価値向上を支える重要指標であり、その実効性を高めるには、経営管理へ実装することが重要です。
CGC(コーポレートガバナンス・コード)改訂の背景及び目的
CGC改訂の目的
改訂の概要
- コードの「プリンシプル化」・「スリム化」
- 重要性の高い規程は「原則」へ格上げ
- 「コンプレイン・オア・エクスプレイン」の対象となる「原則」は、内容を抽象的かつ概念的なものに限定し、各原則の具体的な内容や趣旨を記載した「解釈指針」を新設
→形式的な文言・記載に囚われることなく、コードの趣旨に照らして企業価値向上に向けた本質的な取組みへの注力を促す
CGC改訂の目的
- 成長投資の促進に向けた取締役会の機能強化
- 取締役会の機能強化
改訂の概要
- 成長投資の促進に向けて取締役会の役割・責務を強化
- 成長投資や経営資源の配分について何をするかを株主に具体的に説明する
- 経営資源の配分が経営戦略や経営計画に照らして適切かを不断に検証する
- 独立社外取締役の役割、質・量の確保、独立性確保の重要性を強調
- 取締役を支援する事務局(コーポレートセクレタリー等)の機能強化を推進
CGC改訂の目的
改訂の概要
- 有価証券報告書の株主総会前開示の推奨(3週間以上前が最も望ましい)
- 総会日程の適切な設定の原則化
- 株主の議決権電子行使環境の整備の原則化
- 反対票分析の原則化
ROIC経営実装における主な課題
ROIC経営の導入を進める中で、以下のような課題に直面する企業は少なくありません。
1. 指標が現場で機能しない
- 目標ROICを設定しているが、現場の納得感が得られず形骸化している
- 全社ROICと現場KPIがつながっておらず、改善行動に落ちない
2. 実装を支える体制が整っていない
- 経営企画、経理、事業部門など各関係部署を巻き込みながら、実装を推進する体制が不足している
- 事業部門間の利害関係や過去からの経緯等に起因して、客観的・中立的な観点から管理会計上の適切な論点整理が進まない
- 複数の会計システムが存在し、会計データの粒度も異なるため、経営層から現場まで一元管理できるデータ基盤が整備されず、経営の意思決定に活かされていない
- 経営の戦略と財務データを一体的に捉え、継続的にモニタリングする機能・人材が不足している
3. 経営判断に活かしきれていない
- 投資・撤退の意思決定にROICを活用したいが、事業ポートフォリオ管理の仕組みが整っていない
ROICを単なる管理指標として導入するだけでは、真の意味でのROIC経営は実現できません。複数事業を有する企業では、事業ごとにリスク・リターンや事業環境が異なるため、現場の納得感と実効性のあるROICツリーにおける課題発見・各種KPIの改善を促すとともに、事業PFMで経営資源の最適配分を促す仕組みの構築がROIC経営実装では重要です。
ROIC経営実装を進めるための検討ステップ例
ROIC経営実装の検討ステップ例は下記のとおりです。
各ステップにおいて会計専門家の知見を活用することでスムーズな適用につながります。
各々を詳しく見ていきます。
ROIC経営の実装では、まず「なぜ今、取り組むのか」を明確にし、経営層から従業員に一貫したメッセージとして示すことが重要です。ROICは単なる財務指標ではなく、企業価値向上に向けて、事業の稼ぐ力と資本効率を可視化し、経営資源配分と現場の行動をつなぐ共通言語です。
導入の意義や目的が十分に共有されないまま制度設計を進めると、現場で形骸化するおそれがあり、ROIC経営を通じて何を実現したいのかを明確にし、全社で共有することが、実効性あるROIC経営実装の出発点となります。
ROIC経営を実効性あるものにするには、全社ROIC・WACCに加えて、事業別ROIC・WACCを適切に算定できることが重要です。特に、事業別ROIC算定にあたって、利益だけでなく投下資本を事業ごとに切り分けることがROIC経営の実装上の重要論点となります。
実務上は、棚卸資産、債権債務、設備等の共通資産などをどのように事業やSBU(戦略事業単位)に帰属させるかが難しく、単純な按分では現場の納得感や経営判断の妥当性を損なう可能性があります。そのため、原価計算や管理会計の知見を踏まえた配賦基準の設計に加え、単体、連結修正(資本連結、内部取引相殺消去等)、期ズレをどのように扱うかといった会計論点を整理した上で、算定ロジックを構築する必要があります。
事業別ROICは、経営管理上の説明可能性と、現場の行動につながる納得感の双方が求められる指標です。したがって、財務会計・管理会計・経営管理を横断した視点で、継続的に運用可能な定義と算定ルールを整備することが重要です。
ROIC経営を実効性あるものにするには、各事業の改善だけでなく事業ポートフォリオ全体の最適化が欠かせません。ROICと市場成長性を軸に事業ポートフォリオマトリクスを構築し、各象限に応じた戦略を定義し、投資基準・撤退基準・重点管理区分などの経営資源配分のルール整備を行うことで、メリハリのある経営資源配分を実現し、ポートフォリオ見直しの実効性を高めることが可能です。
ROIC経営を現場に浸透させるには、ROICを分解したROICツリーを通じて、全社指標を現場の行動に繋げることが重要です。売上、利益率、運転資本、固定資産効率等の財務指標のKPI設定だけでなく、非財務指標のKPI等も用いて現場で改善アクションをとれる単位まで分解し、行動指標各要素に責任を持つ組織を明確化することで、現場ごとの貢献が可視化され、改善活動につながります。
ROIC経営を継続的に運用するためには、指標を算定するだけでなく、日々の業務・会議体・意思決定プロセスの中にROICの視点を組み込むことが重要です。そのためには、時間軸に応じたモニタリング設計を行い、月次・四半期・年次それぞれで「何を確認するのか」「どの会議体で議論するのか」「誰が報告し、誰が意思決定するのか」を明確にする必要があります。
ROIC経営の目的意義・ 利用方針の明確化
実施タスクの概要
- 取組意義・目的の明確化(経営層メッセージ)
- ハイレベル / 現場レベルでの利用方針決定
【トーマツのサービス例】
- 経営層・関連部門向け勉強会
- 経営層・関連部門へのヒアリング
- 他社事例の整理に関する助言
初期的な現状分析
実施タスクの概要
- 全社・個社・事業別ROICの試算
- 事業別BS/PL作成方針の策定
- 事業別WACC算定、算定単位・管理粒度の検討
【トーマツのサービス例】
- 現状入手可能なデータの粒度、システム、業務プロセスの初期的把握
- データの分析・ROIC概算試算、課題の把握
- 事業別BS作成方針の助言
- WACC算定方針の助言
- 事業別ROICの算定粒度・単位・方法・計算式に関する助言
事業PF・重要指標の分析
実施タスクの概要
- 財務/事業評価軸による既存事業の評価
- ROIC構成指標の時系列・競合分析
- 重要指標・KPI候補の抽出
【トーマツのサービス例】
- 事業別指標分析・競合他社比較
- 財務分析による重要財務KPIの識別
- 各事業へのヒアリングによるバリュードライバー分析
ROIC目標・ 事業PF方針の決定
実施タスクの概要
- 中計・将来ビジョンと整合する全社ROIC目標の設定
- 事業別目標ROICの配分・調整
- 目指す事業ポートフォリオ方向性の決定
【トーマツのサービス例】
- 目標ROIC設定方針に関する助言
- 事業別ROIC配分・投資判断評価軸の整理に関する助言
- 事業ポートフォリオ管理に関する助言
現場納得感醸成・KPIツリー策定
実施タスクの概要
- 現場従業員へのROIC指標レクチャー
- 現場FBを踏まえたROIC / KPIツリー案の検討
- KPI別アクションプラン、責任・権限の明確化
【トーマツのサービス例】
- 現場向け勉強会・ワークショップ実施
- ROIC / KPIツリー策定に関する助言
- KPIと現場アクションの接続整理に関する助言
評価方針・業務プロセス構築
実施タスクの概要
- ハイレベル / 現場レベルの評価方針・会議体設計
- 運用プロセス、モニタリング・レポーティングの整備
- 必要情報の収集方法・業務変更点の整理
【トーマツのサービス例】
- 評価方針・会議体設計に関する助言
- 業務プロセス / 内部統制設計に関する助言
- 運用トライアル・定量化に関する助言
トーマツのROIC経営実装に係る助言
ROIC経営の実装は、関係部署が連携し、複数のタスクを同時並行で進める必要があります。
トーマツは、ROIC経営を単なる「指標導入」で終わらせず、現場で機能する経営管理の仕組みとして定着させることを重視しており、構想策定から制度設計、現場浸透、運用定着まで伴走し、段階的かつ一貫した助言が可能です。ROIC経営実装に係る助言についてご関心がある場合には、「お問い合わせ」よりご連絡ください。
ご協力ありがとうございました。